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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第六章 代理戦争

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97 独立宣言

 ビーグル子爵領がついにロイター王国からの独立を宣言した。これに先立ち、ルータス王国は、ロイター王国の不正を告発し、魔王国ブライトンとの不可侵条約を締結したことを発表した。更に「獣人と亜人に対する不当な扱いをすぐに取り止め、必要があれば保護する」旨の共同声明も発表した。

 この声明に対して、小国家群の各国は軒並み賛成の態度を示した。


 これに困ったのは、ロイター王国だ。

 長年、魔族の侵攻に対する楯という役割を演じ、多額の支援金をせしめていたのだが、その悪事が露呈してしまった。なぜ、長期間バレなかったかというと支援金を貰う相手国の担当者を抱き込んでいたからだ。支援金の数パーセントをキックバックすることはもちろんだが、担当者の弱みを握ったり、また、逆に担当者の出世を後押しし、その担当者が権力を持てるように支援したりもしていた。

 この方法は、国民を無視すれば、ロイター王国と担当者の間では、WIN-WINの関係が成り立つ。なので、多少、おかしな点があっても、見過ごされてきた歴史があるのだ。


 しかし、各国でロイター王国の担当となっていた者は軒並み拘束され、厳しい処分を受けた。国民感情を考えれば当然だろう。ルータス王国なんかは宰相を公開処刑にしてたからね。前代未聞の大失態だが、膿を出し切るにはこれくらいしないといけない。この動きはトレンドになって各国に波及、多くの国でこのような処刑が執り行われた。そして、ロイター王国との断交をする国も増えた。


 ロイター王国は大した産業もなく、この支援金に頼りきっていた。支援金を元に投資や運用をすれば違っていたのだろうけど、悪銭身に付かずというやつだろうか、国民に還元せずに一部の貴族たちの私腹を肥やすだけだったようだ。

 支援金が入らなくなり、しかも断交までされると、国が立ち行かなくなる。そこで思い付いたのは重税を課すことだ。特に獣人や亜人を領民に多く抱えるビーグル子爵領には、他領の3倍の重税を課した。これには、ビーグル子爵も腹に据えかねたようで、独立を宣言したのだ。


 ネスカが言う。


「ロイター王国は、もう終わりだな。形だけでも担当者を処分して、魔王国ブライトンと各国との交易の要衝として、発展させる政策を取れば、助かる道もあっただろうに・・・」


 そのとおりだ。ルータス王国から魔王国ブライトンに行くにも、小国家群から魔王国ブライトンに行くにも今のところ、ロイター王国を通るしかない。だったら、それを利用することを考えればよかったのだ。


「まあ、そんなことを言っても始まらない。ロイター王国を通らないルートを開発しよう」



 ★★★


 ネスカが打ち出した政策は、街道整備と鉄道の開通だ。

 ルータス王国からはビーグル子爵領を通るルート、小国家群へは山越えで、マドメル魔法国につながる街道と鉄道を建設することになった。ビーグル子爵領を通行するルートは、元々の街道もあるので、それを整備したり、沿線に鉄道を設置するだけでよかった。

 一方、小国家群へのルートは山越えで、調査から入らなければならなかったので、相当な時間を要した。しかし、逆に冒険者などへの雇用が生まれ、ベルシティや小国家群では、空前の好景気になってしまった。


 そんな状態が1年以上続いている。

 ベルシティは人口も爆発的に増え、多種族共存のモデル都市としても有名になり、多くの留学生がやって来ることになった。このため、小国家群の学園都市、マドメル魔法国に続いて、第三の学園都市とも呼ばれている。整備は完了していないが、マドメル魔法国との街道が、曲がりなりにも開通したことで、小国家群との交易が益々盛んになったことが、その要因だと思う。


 ベルシティを治める領主一家の者として、魔王国ブライトンの大臣としても、この状態は喜ばしいことだが、家族の中で一人、浮かない顔をしている人がいる。それはお父様だ。


「町づくりは楽しいよ。町全体を商会と考えたら、これほどやりがいがあることはないと思う。鉄道事業なんて、多くの商人がやりたくても、やれないような事業だからね。でも、貴族や王族との折衝は気を遣うし、それにどんどん増えているしね。誰か、代わりにやってくれる奇特な人はいないかなあ・・・」


「そうね・・・お父様の負担が大きいよね。魔王国ブライトンは私とネスカが窓口だから、気を遣わなくていいけど、小国家群はそうはいかないよね。数も多いし、あの国にはこれをしたけど、この国にはしなかったとか言われたら困るしね・・・

 そうだ!!ちょうど、レベッカさんやエスカトーレ様が来ているから、相談してみるよ」



 ★★★


 次の日、ネスカとともに早速レベッカさんとエスカトーレ様の元に相談に行った。

 エスカトーレ様が言う。


「そうなんですね。それでしたら、私たちもシャイロさんの悩みの種の一つですね。というのも、ダミアン王子と私は結婚が決まり、こちらに大使として常駐することが決まったのです。ルータス王国からすれば、ベルシティに対して影響力を持つことが求められていますしね」


 サラッと凄いことを聞いた気がする。


「こ、結婚ですか!?そ、それはおめでとうございます!!」


「ありがとうございます。これもクララさんや皆さんのお陰です。でも今は、その話ではなく、シャイロさんの話でしたよね?」


「そうですね。でも本当にびっくりしました。自分のことのように嬉しいです」


 少し、エスカトーレ様の惚気話を聞いた後にネスカが提案する。


「どうせなら、ベルシティ周辺を一つの国にして、ダミアン王子に統治してもらうのはどうでしょうか?」


 驚きの提案だった。


「魔王国ブライトンとしては、本国へ侵攻されないように砦としての機能があれば十分ですし、小国家群も同じ感じだと思います。ルータス王国もダミアン王子を派遣して来たくらいですから、我々との友好関係を示したいのでしょう。それで、三方の利益を考えると、ダミアン王子に統治してもらい、外交を担ってもらう。そして、独立後は小国家群に加盟する。魔王国ブライトンとも同盟を結んでもらえれば、お互いが利益を得られるのではと考えます。それにベルシティの周辺にも宿場町などが建設されていますから、シャイロさんだけでは無理ですしね」


 突拍子もない意見に見えて、これはこれで的を射ているところもある。というのも、ベルシティ周辺に魔族が集落を形成し始めた。最初はラプス君夫婦だった。あの大きさでは町に住み続けられないし、赤ちゃんもできたので、ベルシティ周辺に住まいを設けたのが始まりだ。そして、周辺で発見された湖の湖畔にはフロッグ族とリザードマンが住み着いた。

 それに小国家群から来た商人たちが勝手に天幕を張って住み着き、それが宿場町になってしまった。ベルシティの管理は任されているのものの、周辺の集落などはどうすればいいか問題だった。この解決案として、ダミアン王子に治めさせようということなのだ。まあ、厄介ごとを押し付けた感じはあるけどね。


 レベッカさんが言う。


「即答はできんが、一考の余地はある。本国に連絡を取ってみよう。それと本国から文官を派遣してもらうのも手かもしれんぞ。流石のクララ嬢でも、手一杯だろうし」


「そうですね。そうしてくれると助かります」



 この提案は受け入れらることになる。ルータス王国も小国家群も潜在的に魔族に対する恐れがある。なので、この提案は有難かったそうだ。

 そして、ダミアン王子が大公、お父様がベルシティの領主として、ルータス公国が誕生したのだった。

 まあ、あまり私のやることは変わりはないんだけどね。

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