95 エピローグ
一頻り落ち着いたところで、交渉が始まった。まずは今後についてだ。
ベンドラ様が言う。
「多分、ブリギッタとブリギッテも同じ気持ちだと思うが、我らが定期的にここに来ていたのは、ブライトンとヤスダの生まれ変わりを探すためだ。ヤスダが言うには、子孫に生まれ変わりが出やすいという。荒唐無稽な話だが、信じたくなる話でもある。それでここに来るのに手ぶらでは恰好が付かんから、魔物を持ってきていたのだ。何年も前に持ってきた邪竜は少し無理をしすぎたな・・・」
邪竜って、ギルドの大倉庫の奥底にあった龍核が思い出される。これも貴方たちでしたか・・・
「薄々迷惑かもしれんと思っていたが、関係が切れるのが嫌で持ってきていたんだ。これからは、そちらの要望を聞いて持ってくるとしよう。とりあえずは飛竜だったな?」
魔王様が言う。
「お願いします」
今度はブリギッタとブリギッテ姉妹が話始める。
「私たちも気付いてたんだけど、私たちは止める方法がないんだよ」
「そうなんだ。ダンジョンを管理しているハイドワーフにお願いしてるからね」
これも驚きの話だった。
ダンジョンを管理しているのがハイドワーフというのも初耳だ。
「実はね。ダンジョンで増えすぎた魔物を捨てているんだけど、それを頼んでこの辺に捨ててもらっているんだ」
「転移魔法で要らなくなった魔物を捨てているんだけど、この辺に捨てなくなると、別の場所に捨てたり、ダンジョンから魔物が溢れ出たりするから、止めることはできないだろうね」
私は気になることを質問する。
「お伺いしますが、魔物を捨てる頻度とか、周期とかがあれば、教えていただきたいのですが」
「うーん・・・難しいなあ・・・」
「決まったパターンはないと思うけど、癖とかはあるんじゃないかな?」
だったら、分析する価値はある。私の能力が生かせる分野だし。
そして、もう一つ質問することにした。
「先日、スライムデザスターが発生したのですが・・・」
私はダークエルフの里で発生したスライムデザスターについて質問した。発生原因、それと対処法についてだ。
「多分、ダンジョンの防衛機能だね。実は私たちもダンジョンを持っているんだよ。もう300年以上はほったらかしだけどね。そのダンジョンは二つあって、エルフとダークエルフを住まわせていたんだ。階層をいっぱい作るのも面倒くさいから、森林型のダンジョンにしたんだけどね。ぱっと見ダンジョンと分からないし、どっからどこまでがダンジョンかも分からないから、元々住んでいたエルフたち以外は誰も来なくなったな」
「ダンジョンから人が減ると、ダンジョンに人を呼び込もうとして、採取できる素材を増やしたりするんだけど、それでも人が来ないようなら、スタンピートを起こしたりするんだよ。もう今は、管理をハイドワーフに任せているし、そのハイドワーフも面倒臭いから、自動でやっていると思うんだ」
思わぬことからスライムデザスターの原理が分かってしまった。それならば対処法がある。ケンドウェル領のエルフたちの伝統的な生活がスライムデザスターを防ぐというのは、あながち間違いではなかったのだ。
★★★
それから、ドラゴン御一家とハイエルフの姉妹は3日滞在した。今までにないくらい和やかな雰囲気だとチャーチル様は言っていた。私が作ったケンドウェル領のエルフに伝わる伝統料理を振る舞ったところ、大好評だった。この料理はハイエルフの姉妹が教えたそうだ。近いうちにお忍びで見に行ってみたいとも言っていた。
そして、別れの時・・・
「世話になった。本当にありがとう」
ベンドラ様がお礼を言ってくれた。
「私たちからもお礼を言わせて。それとお願いがあるんだけど、もしヤスダやブライトンの生まれ変わりを見付けたらすぐに教えてほしい。会いたいからね」
「荒唐無稽な話だから、違ってても怒らないからね」
ハイエルフの姉妹の話に続き、パメラ様が言う。
「ヤスダは言っていました。根拠はありませんが、生まれ変わるときにヤスダたちと同じジョブになる可能性が高いと。「聖女」のジョブ持ちや「博愛主義者」のジョブ持ちがいれば教えてください」
魔王様も了承する。このとき、今後の連絡用に、かなり遠くまで届く通信の魔道具を譲ってくれた。ロキとドシアナは分解したそうだったけど、止められていた。
帰り際、私は言った。
「せっかくなんで、記念撮影をしませんか?これからは新しいアルバムを作ってください」
ドラゴン御一家とハイエルフの姉妹には、魔王国ブライトンの国として、ロキたちが作ったポラロイドカメラとアルバムが贈られているのだ。
「そうだな・・・そういえば昔もこんな感じだったな」
「そうだよ。誰が撮るかでもめたね。だいたいはビッテだったけど」
「今回もビッテかな」
「また、私?」
結局、式典担当の文官が撮ることになった。それとビッテとハイエルフの姉妹は実はもう仲直りをずっと前にしていたらしい。魔王城に来るときは、ヤスダの生まれ変わりがいたら、怒られると思って、その時だけは、反省している感じを装っていたらしい。
記念撮影を終えるとドラゴン御一家とハイエルフの姉妹はそれぞれ帰っていった。
二組を見送った後に私はネスカに言った。
「あの方たちを見て思ったんだけど、ずっと仲直りができなくて、そしてもう会えなくなるのは辛いと思うのよね。だから、貴方とも仲直りしようと思うのよ。もう一度、友達からやり直しましょう」
「ちょっと複雑な気分だけど・・・これからもよろしくね、クララ」
何とか危機は去った。しかし、ヤスダが絶対神ヤスダである可能性は非常に高い。今後はヤスダやブライトン王の資料を分析しないとね。まだまだ、私の仕事は山積みだ。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!
今作で第五章は終了です。次回から大きく世界が動き出します。




