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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第五章 それぞれの再会

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90 条約締結

 一夜明けて、早速ルータス王国と魔王国ブライトンの交渉が始まる。参加者は、ルータス王国側は、ダミアン王子、レベッカさん、エスカトーレ様、レニーナ様、それと文官が2名。魔王国ブライトン側は魔王様、ネスカ、ハイドン、私。駐屯地の冒険者代表としてライアンさん夫妻。それに商人代表としてお父様が参加している。

 最初に話始めたのはダミアン王子だった。最初から用意してきたであろう言葉を述べる。威厳があり、堂々としていた。


「この度は、我が姉であるルミナスを助けていただき、厚くお礼を申し上げる。国王である父よりも、最大限の礼をするようにとのことだ。それで、そちら側の要望である、亜人や獣人の保護を目指した共同声明についてだが、全面的に協力する。こちらに連れて来た文官とともに細かい文面は調整してほしい」


 多分、その調整は私の役目になるんだろうな・・・


 続いて、魔王様がお言葉を述べる。


「嬉しい限りです。この際ですから、不可侵条約を結ぶのはどうでしょうか?」


「問題はない。我が国と魔王国ブライトンが争ったことは一度もないからな。そう思わされていただけでな」


 少し、自虐が入っている。


 しかしこれで、あっさりと交渉はまとまってしまった。


「それでは、細かい調整は担当者に任せるとして、こちらから提案があります。実はロイター王国のことなのですが、詳しくは担当のネスカから話させます」


「はい、魔王陛下。実はロイター王国の北端にビーグル子爵領があるのですが、当主は代々獣人で、現当主は獅子族の者です。ロイター王国も神聖ラドリア帝国の影響を受け、獣人の排斥に力を入れており、他の領には課されない重税を課されている状況なのです。それで、そのビーグル子爵領ですが、堪り兼ねて、近々独立すると申しています。我が国とすれば、この独立運動を最大限支援しようと思っています。つきましては、同じく支援をいただくか、最低でも中立の立場を保ってもらいたいのです」


 流石にこれは、ダミアン王子に判断は、無理だろう。案の上、パニックになり、エスカトーレ様に助言を求めている。

 ここでレベッカさんが話に入る。


「流石にその件はこちらで即答はできん。下手をすれば我が国民を戦火に巻き込むことになるからな。共同声明は受けるし、これでルミナス王女の件で貸し借りはなしだと思っている。なので、他に出せる条件があれば提示してもらいたい」


 これはレベッカさんが強欲なのではなく、国を背負う立場であれば当然の要求だろう。ここまでは、私も話を聞いていたので、驚かなかったが、魔王様が出した条件を聞いて、腰を抜かしそうになった。


「分かりました。今開発中のこの町をベルシティと名付け、ベル大臣とその家族に統治権を委譲します。飛び地ですが、実質そちらの領土となり、国民も国王陛下も納得するのではないでしょうか?もちろん断ってもらっても構いませんが、統治権の委譲はさせてもらいます。我が息子のしでかしたことへのお詫びの気持ちとしてね」


 流石のレベッカさんも返答に窮しているようだ。

 ここで、返答したのはエスカトーレ様だった。


「分かりました。それで話は持ち帰ります。それで、この町の統治権をベル一家に委譲したという書面を用意してください。それを持って、国王陛下に伺いを立てます」


「いいですよ。せっかくですから、お祭りもしようと思っていまして、是非ご参加ください」


 エスカトーレ様も絶句している。そういえば、忘れていたが、この辺りが魔族特有の考え方なのだ。必要以上に土地や財産を欲しがらないし、もめごとになりそうなら、土地を放棄することもある。ハイドンなんかは、かなり極端だけど、系統は一緒だ。スライムにしか興味がないからね。


 私は、魔王様に言う。


「これ以上、私の仕事が増えると大変で・・・できれば・・・」


「クララ大臣にじゃなくて、ベル一家にね。お父様は有能な商人だし、ロキ君も一流の「武具職人」ですから、何とかなるでしょ?そもそも、ここを開発したのだって、人族が攻めてきたら対処できるようにでしょ?だったら、人族に多くここに住んでもらって、一緒に守ってもらったほうが安上がりだしね」


 合理的なのか、そうでないのか判断ができない。

 落ち着きを取り戻したレベッカさんが言う。


「とりあえず、一度持ち帰らせてほしい」



 ★★★


 会議終了後に私はレベッカさんたちに呼ばれた。もちろん、ベルシティの件だ。


「クララ嬢は知っていたのか?」


「独立運動を支援することは知っていましたが、ベルシティとして、私たちに統治を任せるなんて、私にも寝耳に水でしたよ。そもそも魔族はですね・・・」


 私は魔族の特徴や考え方などを説明した。


「なるほどな・・・ゴンザレスがいっぱいいると思えばいいんだな?何とかしてみよう。それで、久しぶりの再会だから、みんなで食事にしないか?」


 いつもの女子会メンバーにレベッカさんを加えて、食事をすることになった。そのときにルータス王国の情勢を教えてくれた。ルータス王国は今危機的な状況らしい。膿を出し切る過程でどうしても必要なことではあるが、深刻な人材不足のようだ。宰相自ら悪事に手を染めており、多くの官僚や騎士が処罰を受けたという。

 なので、空いたポストに功績のあった貴族が就任することになった。まず宰相だが、爵位は子爵から伯爵に陞爵したギールス商会会長が就任することになった。実務能力を買われてのことだった。また、レニーナ様のご実家、ケンドウェル伯爵も北辺境伯となり、独自の国軍を持てるようになったそうだ。


「ミリアのところもレニーナ様のご実家も凄いですね!!」


「お祖父様は、『仕方ないとはいえ、大変なときに宰相になってしまった』と言ってたし、苦労が増えるだけよ」


「ケンドウェル領は変わりませんよ。エルフと獣人を保護し、共存していくだけですからね」


 そして、空いたポストのほとんどが、エスカトーレ様の派閥の者が後に座ったそうだ。そして、またしても棚ぼた式に伯爵家の三人娘の親たちも要職に就くことになったそうだ。そして彼女たちの実家であるギュンター伯爵は、侯爵へと陞爵したそうだ。

 レニーナ様が言う。


「実力はともかく、冷遇することはできませんからね。三人娘は、お小遣いが増えて大喜びですけどね」


 レベッカさんが言う。


「そういった状況だ。ルータス王国は今、他国と戦争をしている余裕なんてないのだ。神聖ラドリア帝国のことは許せない。しかし、多くの貴族たちは神聖ラドリア帝国との戦端は開きたくないのが本音だろうな。なるべく魔王国ブライトンの希望に添えるようにはするが、確約はできん」


 私も大臣として回答する。


「できる範囲でかまわないと思います。魔王国ブライトンも、戦争するのが目的ではなく、獣人や亜人の保護が目的ですからね」


 ミリアが言う。


「なんかクララって、大臣ぽくなったわよね」


 無理やり連れて来られた私だけど、それでも魔王国ブライトンには愛着が出てきたな・・・

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