86 女子会
とりとめのない会話が続きますが、色々散りばめられてます。
夕食は各自で取ることになった。レベッカさんとガルフさんは、元冒険者たちとロキはドシアナと食事をするようだった。ロキが言うには「武具職人」としての本能が刺激されたとのことだった。まあ、喧嘩しないようにとは注意したけどね。
そして、私、ミリア、レニーナ様、エスカトーレ様のいつものメンバーにルルとロロを加えて、女子会をすることになった。早速私が、質問攻めに遭う。
「結局、ネスカなの?ゴンザレス様なの?」
「どっちもどっちね・・・どちらも結構ズレているし・・・」
「モテる女は言うことが違うわね。でも、それは同意するわ。せめて、ゴンザレス様がすぐに「クララは渡さない」って言えば、恰好がついたのにね」
「もう、私のことはいいから、他の人のことも知りたいわ!!まずはエスカトーレ様から」
私は強引に話題を変えた。
エスカトーレ様はあの事件の後、すぐにマドメル魔法国に留学した。そして、スターシア団長に指摘された弱点を改善するとともに、普段から「匂わせ聖女」を演じていたそうだ。私を助けるために・・・本当に有難い。
そして、ダミアン王子が傭兵国家ロゼムに留学し、傭兵のような言動をしていることにも驚いた。
「私も殿下があんな風になっているとは、思いもしませんでしたが、『しばらく見ないうちに、エスカもマブくなったなあ』と言われたときは、本当に嬉しかった・・・」
ダミアン王子には会ってみたい気もするが、会いたくない気もする。でも、私のためにそこまでしてくれたことは、本当に感謝している。
ここでレニーナ様がイカルス教官のことを話し始めようとしたので、ミリアが私のわき腹を肘で突っついてきた。長くなるから、話題を変えろということだ。
久しぶりに会っても、こんなところは当時のままだ。
「ところでレニーナ様、実は魔王国ブライトンにもダークエルフの里があって、ケンドウェル伯爵領のエルフと・・・」
私はダークエルフの里での出来事を話始めた。スライムデザスターが発生したことやその対処法が、ケンドウェル伯爵領のエルフがしているような伝統的な生活だという仮説など、その辺の話をした。
「イカルスに聞いたことがありますわ。その昔ケンドウェル領になる前、別の貴族が治めていたのですが、当時の領主は強欲で、エルフが住んでいる森を根こそぎ掘り返して、鉱石を採掘しようとしました。エルフと獣人、それにエルフたちを支援する人族がその領主軍と対抗したそうです。しかし、多勢に無勢で情勢は悪く、エルフたちは森の奥地に追いやられたそうです。そこからは、開発を止めさせようとゲリラ的に嫌がらせをするのみでした。そのとき、大変なことが起こったのです」
レニーナ様が一旦、話を切る。
「なんと、森中から魔物が溢れかえって、開発拠点はおろか、人間の町まで押し寄せました。グレートベアの変異種やスライムもいっぱいいたそうです。領主軍は壊滅、エルフたちは無事に森を取り戻すことができたそうです。そして、エルフたちと一緒に戦った私の御先祖様がその地を治めるようになったのです。それがケンドウェル家の始まりの物語で、その教訓から、今日までエルフや獣人たちの保護、それに森の開発に反対する立場を貫いています」
「ダークエルフの里にも森を傷付けるなという教えがありますし、共通しているところも多いですね。それにエナジーナッツなども採取できますし」
「イカルスと一緒に是非行ってみたいですわ」
何とか話題を変えることに成功したようだ。ミリアも親指を立てて、よくやったと褒めてくれている。
「イカルスで思い出しましたわ。この前イカルスと・・・」
私は首を横に振る。流石に無理だとミリアに訴える。
ミリアは頷くとレニーナ様の話を遮った。
「レニーナ様、それよりも派閥の話をしてあげてください。エスカトーレ様もクララも聞きたいようですしね」
私とエスカトーレ様は全力で頷いた。
「そうですね・・・」
私たちの派閥は拡大していた。貴族の半数が私たちの派閥に何かしらの関わりがあるそうだ。地道な活動だけでなく、問題児の伯爵家三人娘の活躍も大きかったそうだ。
「伯爵家以上の家柄の方が、ほとんどいなくなってしまったので、泣く泣く、彼女たちに執行役員をお願いすることになったのですが、それはもう本当に酷いものでした。資金なんて、あるだけ使うんですからね・・・」
レニーナ様の苦労が伺える。この三人娘はギュンター伯爵領というルータス王国でも有数の裕福な領の出身で、当主一家の傍系に当たる家系の出だという。名前はヤスミン、ユミル、ヨハンナで三人は従妹同士、しかも同じ日に生まれたそうだ。
彼女たちの実家も裕福なので、小さい頃から何不自由なく育ったそうだ。
「急に誕生会をスラムでやると言い出して、これでもかというくらいケーキやお菓子を集め、大盤振る舞いしました。そして、次の週には大バーベキュー大会をすると言い出して、またスラムで・・・残りの資金が1割になるまで続きました」
ここでミリアが話に入って来る。
「本当に無茶苦茶だったのよ。でも不思議なことに私のお祖父様が「これは使える」と閃いてね。スラムや下町で、特定の料理でコンテストをすることを思い付いたのよ。肉料理、ケーキ、魚料理、いろいろなイベントをやったわ。スラムの住人の雇用先も増えた・・・」
「ミリアさんの言う通りですね。結局、このイベントは大成功、派閥の資金が10倍にまでなりました。そして今度は、地元のギュンター伯爵領にみんなで旅行に行こうと言い出して・・・」
大名行列のような人数で、行く先々で散財したという。派閥の資金も底をつきかけたところで、また奇跡が起こったそうだ。
「なんとダンジョンを発見してしまったのです。しかも優良なダンジョンだったようですし、ヨハンナさんの実家の土地だったので、大儲けです。派閥の資金は100倍になりました。そして、その影響もあり、派閥に入れば、おこぼれにあずかれると思って、参加する人も増え、貴族の半数が所属するようになってしまったのです」
「派閥員が増えたから、私が「会費くらいは取ろうよ」と言ったんだけど、『貧乏人に施しを受けるのは嫌ですわ』とか言って、断るし・・・資金が無くなったら増えるの繰り返し・・・まとめ役のレニーナ様は苦労しっぱなしよ」
いつの間にか、レニーナ様とミリアはすごく仲良くなっている。
エスカトーレ様がお礼を言う。
「レニーナさん、ミリアさん、本当にありがとうございました。大変な思いさせてしまい、申し訳なく思っています。この御恩は絶対にお返ししますからね」
レニーナ様もミリアも恐縮している。
ここでルルとロロも会話に入って来る。
「私たちの話も聞いてほしいニャ」
「すごく楽しそうニャ!!」
ルルとロロは缶詰の話から、ナンパされた話まで取り留めなく話した。
「もうすぐ、ビーグル子爵領に連れてってくれるニャ」
「すごく楽しみだニャ」
付き合いはそれなりに長いけど、エスカトーレ様たちと話せなかったから、その反動だろうね。
「じゃあ、お待ちかねのイカルスとの話をしますね・・・」
結局、話すのか・・・
でも、それも懐かしく思ってしまう。
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