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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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8 決着

 ロイター王国から帰還したレベッカさんから、私と父上が呼び出しを受けた。すぐに準備を整えて冒険者ギルドに向かった。

 ギルドの受付で用件を伝えると、すぐにギルマスの部屋に案内された。部屋に入ると応接テーブルいっぱいにケーキやクッキーなどのスイーツが並べられていた。


「クララ嬢には世話になったからな。これは報酬とは別に個人的なお礼と思ってくれ」


「ありがとうございます。あっ!!これって南部で流行っている新作スイーツでは?」


「流石はクララ嬢だ。クララ嬢に食べさせたいというのもあったが、実は私も食べたかったんだ。だから、遠慮せずに食べてくれ」


 私は並べられたスイーツに興奮した。


 しばらくは、スイーツに舌鼓を打ちながらレベッカさんの遠征の話を聞く。一応報告書は読んで、大まかな流れは理解していたが、実際に話を聞くのとでは臨場感が違う。相手の指揮官や責任者である文官をやり込めた話は、胸がすく思いだった。


「私の話はそんなところだ。結局、2ヶ月間タダ飯を食べに行っただけだったがね。酒はたっぷりあるし、気が向けば、偵察と称して魔物狩りに出かけてな。相手からしたら、無駄飯喰らいを大勢養わなければならない状況で困っていたよ。結局、魔族と和睦が成立したということで引き上げたんだが、本当のところは、よく分からん」


「私としては、皆さんが無事に帰還されたことが、何より嬉しいです」


「クララ嬢は優しいな。それで、私もこちらでの状況を知りたい。報告書は読んだが、直接聞きたかったのでな。大手商会が1軒、ロイター王国関連の商会の支店が軒並み潰れていたのには驚いたからな」


 レベッカさんが遠征に出ている間、私たちも戦っていたのだ。

 もちろん武器を持っての戦いではない。商人としての戦いだ。まず、相手が買い占めようとしている商品はすぐに分かるし、その時期も大体予想できる。ここで私たちはある戦略を立てた。


 小麦などの食料品で値段を吊り上げて勝負することはせず、一般市民の生活にあまり関係のない鉱石や武具の関係で勝負することにした。当然、ベル商会の資金だけでは戦えないので騎士団長であるドナルド伯爵の紹介でルータス王国最大手のギールス商会も協力してくれることになった。ここでも、私は資料を提示してプレゼンした。

 初老のギールス商会の会長が言った。


「ウチの若い者にもお嬢さんの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいよ。お嬢さんからは商人としての気骨を感じる。芯が通っているというかね・・・・よし!!全面的に協力しよう。そして、これを機に悪徳商人たちを一掃してやろう」


 後は私の出番はほとんどなかった。定期的に相場をチェックし、資料作成するくらいで、オジールとロイター王国から帰国したお父様、それにギールス商会の関係者に任せっきりだった。小麦などの食料品の価格を安定させ、武具や鉱石の取引では高騰する直前に大量に買い込み、ロイター王国の商会や捕縛した文官たちと懇意にしている商会がなりふり構わずに買占めを開始したときは静観し、機を見て、ほぼ最高値で売り抜けたのだ。

 お父様もギールス商会の手腕には舌を巻いていた。


「ギールス商会に睨まれたら、ウチなんか、あっという間に倒産かもな・・・」


 その後も快進撃は続く。戦争終結の報が入ると、一気に武具や鉱石は値崩れを起こした。そこでも、焦らず、こちらも最安値で買い上げていた。そして、安く仕入れた武具も新米冒険者用に割引価格で販売することになった。

 結局、大損したロイター王国関連の商会や不正を働いていた文官たちの息の掛かった商会は王都から撤退した。何も知らない一般人からすれば、「何か大きな取引で失敗した」くらいにしか思われなかったようだ。


「クララ嬢のことをギールス商会長は褒めていたぞ。是非、嫁に欲しいとな」


「レベッカ様、まだクララには早いような・・・」


「貴族であれば、これくらいの年齢での婚約は普通のことだ。そういう私もクララ嬢くらいの年齢のときは既に婚約していたぞ。まあ、すべて婚約解消になってしまったが・・・」


「お戯れを・・・私どもは貴族ではございませんし・・・・」


「そうとも言いきれんぞ。おっと・・・到着したようだな・・・」


 レベッカさんがそう言ったところ、部屋に騎士団長であるフレッド様と従者が数人、入って来た。


「貴殿らに直接礼を言おうと思ってな。この度の我らの働きが認められ、ドナルド家は伯爵から侯爵に陞爵することになった」


 それってかなり凄いことじゃないの!!

 貴族の爵位は王族の親類である公爵、それに続いて上から、侯爵、伯爵、子爵、男爵となり、その下に一代限りの騎士爵や女子爵といったものがある。

 そう考えるとほぼ最高位と言ってもいいくらいだ。


 お父様がお礼を述べる。


「おめでとうございます。それに直々にお褒めの言葉を掛けてくださいまして、ありがとうございます」


「うむ、それでな。今回の顛末を国王陛下に報告し、貴殿らの活躍も併せて報告したのだが・・・」


 ここでフレッド様はお父様に向き直った。


「国王陛下の代理として、ドナルド侯爵である我が命ずる。シャイロ・ベル、貴殿を騎士爵に任ずる」


 えっと・・・・それって、お父様が貴族になるってこと?


 思考が追い付かない。流石のお父様もびっくりして、声を出せないでいた。


「突然のことで驚いたと思うが、その意味をよく考えろ。詳しい手続きなどは、こちらの従者から説明させる。まあ、めでたいと思え、我はこれで失礼する」


 一通りの説明を聞いたが、私もお父様もほとんど手続きの説明は頭に入らなかった。帰り際にレベッカさんが言った。


「ぶっちゃけて言うとだな、お前たちは知り過ぎたということだ。もう一般市民ではいられない。国のために奉仕する貴族として、責任を果せということだ。私もここまでのことになるとは、予想していなかった。申し訳なく思うが勘弁してくれ」


「お気になさらずに・・・というか、私が貴族・・・とりあえずムーサに報告だな」


 お父様と二人帰宅して、お母様に報告したところ、大喜びしてくれた。

 話の内容は理解していないが、お母様が大喜びしているので、多分いいことがあったと思ったロキもはしゃぎ始めた。


「まあ、なるようになるさ。今日は偶々、余ったホーンブルの肉があるんだ。奮発してステーキにでもしてあげるよ!!」


 その日は楽しい夕食だった。

 ただ、内容が機密情報なので、詳しく話せなかったのは、心苦しかったけど。

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