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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第四章 就職

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78 クララ大臣 3

 大臣就任から2ヶ月、非常に忙しい日々を送っている。

 各居住区への防衛戦略以外、これといった仕事はしていない。これといった仕事をしてないだけで、これと言わない仕事はいっぱいやらされている。部下の文官も多く配属され、体制が整うと同時に様々な部署から仕事が回ってくる。ゴブール宰相が言うには、官僚機構の雑用を一手に引き受ける部署のようだ。

 最近無駄に「業務改革推進担当大臣」の肩書きも手に入れてしまった。


 そんな中、魔王様に呼び出しを受けた。


「クララベル総務、改革推進担当、復興支援担当、業務改革推進担当大臣。新たに、都市開発推進担当の任を命じます。新天地でも頑張ってください。しばらく、会えなくなるのは寂しくなりますが、半年以内には、視察に行きますからね」


 私は、ある地域の都市開発部門の特別チームに選ばれた。責任者はネスカ、何かの陰謀を感じてしまう。



 ★★★


 この特別チームは、トップであるネスカを本部長とし、私が副本部長となり、技術部長がドシアナと続く。第三軍で一緒だった、ゴブリンやコボルト、ハーフリングも大勢組み込まれていて、一つ目巨人族のラプス君夫婦も編制されているのだった。ここまでは問題ないのだが、なんと警備対策部長がハイドンなのだ。


 というのもこのハイドンは、スライム対策部隊隊長として実績を上げてしまった。スライムが出たという届け出があれば、国中どこへでも駆け付け、届け出がなくてもパトロールをしながら、スライムの駆除に勤しんでいる。その過程で、数々の伝説を作っている。

 一つ紹介すると、ハイドンの部隊がスライム大量発生の情報を聞きつけて、現場に向かっているところ、偶々、グラスウルフの群れに襲われている行商を発見した。グラスウルフには変異種もいたのだが、何なく討伐した。お礼を言う行商に対して、「スライムの駆除で忙しいから、どうしてもお礼がしたいというのなら、この死骸や魔石を何とかして、片付けておけ」と言って立ち去ったという。


 大量の魔石や素材があることに大喜びした行商だが、あまりにも数が多く、流石に全部をもらうのは気が引けると思い、魔王軍に届け出て、ハイドンの部隊の活躍が明るみに出ることになった。調査をした結果、この類の話は多く確認された。

 更にスライムの調査報告書もこまめに上げてくれるので、研究機関は大助かりだ。そのお陰で、世紀の大発見もあったしね。


 ハイドンの部隊の活躍により、スライムデザスターによって発生したスライムは、ほとんど駆除され尽くした。普通のスライムであれば、子供でも駆除できるからね。

 そうなって来ると、実力主義の魔王軍は、ハイドンの部隊を評価しなければならなくなった。なので、この都市開発チームに編成されることになったのだ。


 今思えば、部隊長を対象にしたパワハラ防止教養をやっておいてよかったと思う。

 第三軍団のゴブリンたちや一つ目巨人族が今後被害に遭わないようにOL時代の朧気な記憶をもとにやったんだけど、最初なんて、「気分が悪いときに、難癖を付けて、部下を殴って何が悪いんだ!!」と言っていたくらいだったからね。丁寧に指導したら、やっと分かってくれた。特にハイドンは、何かを悟ったように言っていた。


「・・・なるほど、時代は変わったのだな・・・俺たちも変わらねば・・・」


 それ以後、ハイドンは部下の指導方法や組織管理について、アドバイスを求めに来るようになった。何度か接するうちに、そこまで悪い人ではないと思った。今まで、結果が出なかったのは、壮絶にやり方が間違っていただけなんだと分かってしまった。


 まあ、そんなこんなで、私たちもいよいよ出発となるのだった。


 ★★★


 ~ハイドン視点~


 クララという人間の少女が魔王軍に来てから、魔王軍は大幅に変わってしまった。俺たちが散々馬鹿にしてきたゴブリンや一つ目巨人族が大活躍し、逆に俺たちは、活躍の機会を失った。当初の予定では、第三軍団というポンコツどもの相手に疲れたオルガが、俺を頼ってきて、優しく指導しているうちに・・・ムフフフ・・・・もう止そう、そんな未来は来ないのだからな。


 時が経ち、とうとう俺の部隊が俺を入れて11人になってしまった。更に任務はスライムの駆除のみで、危機感を感じていた。しかし、俺はなぜか第一軍団長に昇格していた。これには絶対に何かの意図がある。魔王様が俺に何かを期待しているのだ。多分、オルガも。

 そんなとき、俺はある光景を思い出した。スライムデザスターでダークエルフの里に訪れた時、大歓声で俺の部隊が出迎えられた。あの高慢ちきで、いけ好かないダークエルフにだ。こんなことは初めてだった。後で聞いた話だが、俺が倒したスライムは固有種と呼ばれるもので、非常に危険な存在だったそうだ。それで、ダークエルフどもも、魔王軍最強である俺の部隊に期待してくれたのだろう。


 なるほど・・・つまり、俺に危険なスライムを見付けだし、討伐せよということだな。そして、魔王様もオルガも俺に武功を上げて、オルガに相応しい男になってほしいのだな。


 そうと分かった以上はやるしかない。俺は部下を鼓舞し、スライムの駆除に邁進した。

 幸い、ホバークラフトという変な乗り物も2台、配備してくれた。かなり速いし、乗り心地もいい。まるで、特別待遇だ。

 届け出がある度に現場に急行し、スライムを駆除する。徐々に通報が減っていったので、今度は自分からスライムを求めて、国中をホバークラフトで走り回った。


 するとスライムがどんどん姿を消していく。嬉しいことではあるのだが、困ったこともあった。俺を含め、俺の部隊は薄給だ。この点については魔王様に文句を言いたかった。国の根幹を支える大事な仕事をしている俺に・・・いや、違う!!将来身内になる俺に魔王様はあえて、贔屓をしないという姿勢を皆に示しているのだ!!

 部下を鼓舞し、今日もスライムを求めて走り回る。



 それからしばらくして、いよいよスライムはいなくなってしまった。

 給料は固定給なのだが、スライムの発生報告や特異事項を報告すると別で手当てが出る。この手当てが、それなりに大きい。スライムがいないと報告書による収入も減ってしまう。

 悩んでいるところに、ギャンブルで大負けして、困っている部隊員が提案してきた。


「団長、スライムに何か実験をして、それを報告すればいいんじゃないでしょうか?ちょっと、ギャンブルで負けちまって、今月ピンチなんですよね。ちょっと卑怯だと思いますが・・・スライムを一遍に駆除するのではなくて、とりあえず捕まえて、飼ってみてはどうでしょうか?」


 武人として、あまり褒められたことではないが、背に腹は代えられない。部下の提案を受け入れることにした。それからスライムを見付けては、駆除せずに捕獲することにし、半日スライムを探して見付からないときには捕獲したスライムで実験をすることにした。

 実験の結果、色々なことが分かった。一例を挙げると、アシッドスライムは、打撃攻撃が全く効かないと言われているが、実は全く効かないではなく、かなり効きにくいことが分かった。20分もハンマーで殴りつければ、潰れて死んでしまう。


 アシッドスライムの件は研究者から高評価で、報告書の報酬がいつもの3倍もあった。これに気を良くして俺たちは実験を繰り返した。しかし、日を追うごとに実験のネタは減っていく。いよいよやることが無くなると、最初にスライムを飼うと提案してきた部下が、「食べてみましょう」と言い出した。

 結局、皆で食べてみたが、1種類だけ食用に適したスライムを見付けた。しかし、それ以外は食えた物ではなかった。ポイズンスライムを食べたときは、部隊が全滅の危機に瀕した。これも研究者には評判が良かったが、ポイズンスライムを食べたことを伝えると、相当に驚かれた。


 そんな目で見るな!!俺だって食べたくて食べたわけではないのだ。


 そんな感じで、実験を繰り返したのだが、あるとき、部下がホバークラフトの燃料である魔石を持ってくるのを忘れたと報告に来た。思わず殴り付けてやろうと思ったが、それをやるとパワハラというやつになるらしい。なので、クララ大臣に教えてもらったとおり、対応する。


「落ち着いて、やれることをやれ。責任は俺が取る」


 この指示が良かったのか、ただ運が良かっただけなのか分からないが、解決策を部下が見付けてくれた。黄色いスライムを叩き潰すと、粉状になる、それを魔石の代わりにホバークラフトの燃料タンクに入れたら、動き出した。


 それから数日後、またギャンブルで負けた部下が提案してきた。


「ハイドン団長・・・今月もヤバいんですよ・・・だからちょっとだけ、みんなで儲けませんか?」


 悪魔の囁きだった。

 ホバークラフトの燃料として、支給されている魔石を業者に売り、燃料は黄色いスライムで代用をする。燃料の魔石分だけ、俺たちは儲かるというわけだ。判断に迷った。

 俺は悪魔の囁きに乗ってしまった。


 しかし、悪いことはできないものだ。駐屯地で部下が、燃料タンクにスライムの粉を入れている所を工兵隊長に見付かってしまった。


「何をやってるんスか!?壊れたらどうするんスか?」


 俺は事情を説明する。当然、処分は覚悟したのだが、逆に称賛されることになった。工兵隊長が言うには、世紀の大発見らしい。

 意味が分からない。その辺にいる黄色いスライムを粉状にすることが、世紀の大発見だって?


 意味は分からずとも、俺たちは最高の評価を受け、昇格という形で、新たな勤務地に赴くことになったのだ。


 因みに給料は、部隊長当時の水準に戻っていた。

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