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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第四章 就職

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76 クララ大臣

 腰を抜かすくらい驚いたが、そういえば最初に働きを見て、大臣待遇にすると言われたことを思い出した。受けたからにはやらねば・・・


 まずやったのは引継ぎだ。

 立つ鳥跡を濁さず。お世話になった第三軍団に迷惑を掛けたくないからね。

 でも、今の第三軍団は私やドシアナがいなくても十分やっていける。なので、やったことはちょっとだけ、人事を弄った。


「わ、私が副官ですか!?ハーフリングの私が!?」


「オルガ団長の承認も、ネスカ戦略顧問の承認もいただいてますからね。それにオルガ団長を側で支え続ける人が必要でしょ?オルガ団長を上手く扱えるのは、チャックさんをおいて他にいません」


「分かりました。謹んで拝命いたします」


 そんなチャックさんだが、自信と責任感に溢れていた。

 それは、魔王軍の定例会で起こった。例のごとく、ハイドンがオルガ団長に難癖を付ける。いつもなら、オルガ団長が殴り倒すか、無視するのだけど、今回は違った。チャックさんがハイドンを怒鳴る。


「ハイドン団長、貴方はなぜ、いつもオルガ団長にちょっかいを掛けるんですか?非常に迷惑しています。副官として言います。今後は二度とオルガ団長にこのようなことをするのは、止めてください」


 これには多くの会議参加者が驚いていた。

 言われたハイドンやオルガ団長もびっくりしていた。いつもなら、食ってかかるハイドンだが、この時はチャックさんの気迫に押されたのか、素直に謝罪した。


「申し訳なかった・・・以後、気を付ける」


 これを見たスターシア団長は、呟いた。


「初のハーフリングの魔王が誕生するかもね」


 意味がよく分からなかったので聞き流すことにした。



 ★★★


 第三軍団での引き継ぎを終え、今日は謎の肩書きである総務、改革推進担当、復興支援担当大臣としての初出勤だ。大臣なので、専用の執務室が与えられるのだが、案内されて驚いた。ネスカの執務室の隣だった。何度も確認したが、入り口の扉に「総務、改革推進担当、復興支援担当大臣室」という表札があるので、ここで間違いないのだろう。

 執務室に入るとすぐにネスカがやって来た。


「おはよう、クララ。ちょっと顔を見に来たんだ。初出勤だし」


「おはようございます、ネスカ王子。業務以外では話し掛けないようにと契約書に・・・あっ!!」


 私は慌てて、契約書を確認する。

 大臣になったときに、前の契約を一旦破棄して、新たに契約を取り交わしたのだが、契約書には「ネスカ王子は業務以外でクララに話し掛けない」や「勤務場所はできる限り離す」などのネスカに関する条項がすべて削除されていた。


 これはやられた・・・


 急に大臣就任が決まり、パニックになっていたので、契約書をよく読んでいなかった。だからネスカに関する条項が削除されていることに気付かなかったのだ。ネスカの悪知恵か、魔王様の策略かは分からないが、契約書をよく読まなかった私の落ち度だ。

 この契約だと、私が契約を盾にネスカを追い出すことはできない。セクハラとかされたら別だけど、雑談くらいなら、強く言えないな。


「仕事のことだけど、今のところは具体的な仕事がないんだ。新設された大臣ポストだからね。僕はこれから君の部下となる者たちの出迎えに行くから、君は挨拶を兼ねて、宰相室を訪ねるといい」


 そうだね。挨拶は基本だからね。


 私はドキドキしながら、宰相室を訪ねた。

 OL時代の話だが、同期で優秀な子がいたのだが、急に営業から経理に異動になった。会社としては、将来の幹部候補生と考えて、色々な経験をさせようと思っていたのだろうけど、本人にしたらいい迷惑だった。毎日、ネチネチと「経理を舐めるな」、「営業成績がいいからって、天狗になっている」などの嫌味を言われ、次の異動まで、胃薬を飲みながら出勤していたそうだ。

 そんな話を思い出し、私は緊張していたのだ。


 私も「魔王軍と大臣は違う」、「大臣を舐めるな」とか言われるのだろうと、覚悟して宰相室をノックしたのだが、全く逆の対応をされる。

 宰相はゴブリン族の方で、ゴブールというお爺ちゃんだった。部屋に入るなり、いきなり握手してきた。


「ゴブリン族を救ってくれて、ありがとう!!襲撃のあった第三居住区には、孫が住んでおってな。それに、最近のゴブリン族の活躍を見ると、本当に誇らしい!!何か困ったことがあったら、儂に言いなさい。力になるぞ!!」


 挨拶しただけで、この待遇だった。


「財務大臣を紹介するから、お茶でも飲んで待っていてくれ」


 お茶までいただいている。

 しばらくして、宰相室にかなり色っぽいお姉さんが入って来た。胸も大きく、自称聖女のアイリーンくらいある。


「財務大臣のエサラ・ラグリットです。種族はサキュバスよ・・・」


 そう言うとエサラ財務大臣は、私に抱き着いてきた。


「クララさん本当にありがとう。あの転写機と計算機のお陰で物凄く、助かっているの。官僚の寿命が100年伸びたと言われているのよ!!なんでも言って、力になるからね」


 100年は伸びすぎだろ!?

 まあ、長命種ならではの例えかな?


 ここに来る前に組織図を確認したのだが、文官のトップはもちろんゴブール宰相、ナンバー2がエサラ財務大臣になる。後の大臣は横並びといった形だった。なので、私は労せずに文官トップ2の後ろ盾を得てしまったのだ。


「それでクララ大臣、今のところ、これといった仕事がないので、やりたいことがあれば自由に提案してくれ。検討しよう」


「私も応援するわ。でも予算のことも考えてくれたら、嬉しいな」


 その後、少し雑談をした後に私は宰相室を退出した。


 ★★★


 執務室に戻るとまたネスカがやって来た。


 契約書に接触禁止条項がないからって、こっちに来すぎだろ!!ちゃんと仕事をしろよ。


 と思っていたが、仕事の話だった。


「とりあえず、秘書兼護衛を紹介するよ。君たち、入って来て!!」


 入って来たのは、自称聖女の元侍女で猫人族の双子の姉妹ルルとロロだった。すぐに私に抱き着いて来る。


「久しぶりですニャ!!」

「会いたかったですニャ!!」


 ネスカが言う。


「彼女たちは戦闘力もあるし、自称とはいえ聖女の侍女をしていただけあって、教養もある。君の側近にはぴったりだと思ったんだ」


「ありがとうございます、ネスカ王子。今回のことだけ()、感謝します」


 その後、二人とは色々な話をした。学生時代や勇者パーティーで冒険していた頃の話、私と王都で別れてからの話などなど、仕事そっちのけで話していた。今のところ、仕事はないんだけどね。


 彼女たちの上司として、彼女たちの契約書も一応確認した。悪い契約ではなく、逆にかなりの好待遇だった。任務は概ね二つ、私の仕事の補助と護衛だ。ある程度の実力行使も独断で認められているようだった。契約書を読んで、私は悪だくみを思いついた。

 この辺はネスカに似てきたのかもしれない。


 次の日、早速私の悪だくみが発動する。

 ネスカが執務室にやって来たのだが、ルルとロロがネスカを部屋に入れない。


「ネスカ王子、用件がなければお帰りくださいニャ」

「クララ大臣は忙しいニャ」


 ルルとロロには、私とネスカとの関係を正直に話し、ネスカを近付けないように言うと「そんなクズは近付けないニャ」と言って、協力してくれることになったのだ。

 私はネスカに言い放つ。


「彼女たちは相手によっては、実力行使も認められています。彼女たちの契約書にも「クララ大臣を害するおそれがある者は、積極的に排除しなければならない」とあります。この「害する」は「気分を害する」も含まれていると解釈されます。

 ネスカ王子、お引き取りください」


 その日、ネスカは昼にもやって来たが、ルルとロロに追い返されていた。

 しかし次の日、ルルとロロの態度は一変する。昨日同様、ネスカがやって来たのだが・・・


「クララ大臣、話くらいは聞いてあげてもいいと思うニャ」

「ネスカ王子は、そんなに悪い人ではないニャ」


 なぜだ!?昨日は協力してくれると言ったのに・・・


 その日の昼休みにその理由が判明した。

 廊下でネスカとルルとロロが話しているのを聞いてしまったからだ。


「ネスカ王子、ビーグル子爵領に行くときには、是非お願いしますニャ」

「缶詰も忘れないように頼みますニャ」


「分かっているよ。ライオ兄さんもライガ兄さんも彼女はいないし、獅子族にこだわってないからね。それと缶詰も自宅に送るように手配しておいたからね」


 ネスカの方が私よりも、上手だった。ネスカはルルとロロを男と缶詰で懐柔していたのだ。


 ネスカの奴め!!


 もう私にネスカに対抗できる武器はなく、仕方なく雑談に応じることにしたのだった。

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クララちゃん、もう家族の事は忘れちゃったの?
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