表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第四章 就職

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/135

73 森の危機 3

 マルレーンさんに案内されて会議室に入ると、議論は紛糾していた。有効な対処法がないので、ただ、時間が過ぎていくだけのようだった。私に気付いた魔王様が声を掛けてくる。


「クララさん、何か分かりましたか?」


「一応資料は作りました。あくまでも、参考資料として考えてください」


 私は資料の説明を始める。

 原因については、深く言及しなかった。今それを言っても始まらないしね。だから、淡々と族長の手記や資料を分析した結果を述べていく。まず、戦闘力の高いダークエルフ族が、ここまで苦戦しているのは、特徴の全く違うスライムが混ざり合って、大量にやって来るからだ。例えばだけど、メタリックスライムは魔法が全く効かない、その上かなり固い。アシッドスライムは逆に物理攻撃はほとんど効かないけど魔法には弱い。ポイズンスライムは近寄ると毒で攻撃してくるので危険だ。

 スライムが1種類だけだとなんとでも対処できる。メタリックスライムは、ハンマーなどの打撃武器が有効だし、アシッドスライムは魔法攻撃で、ポイズンスライムは遠距離攻撃に徹すれば、そこまで恐れることはない。


 当時、実際に行った戦術は、まず全体に魔法や遠距離攻撃を繰り返し、アシッドスライムやポイズンスライムなどの個体を減らすことに徹する。ある程度減った段階で、物理攻撃が得意な部隊を投入。当然、近接攻撃部隊は殲滅できていないポイズンスライムの毒や物理攻撃が効かないアシッドスライムの攻撃で、負傷者が続出する。ある程度負傷者が出て、戦線が維持できなくなったら、戦略的撤退をする。この行程を繰り返す。

 魔法部隊も弓兵隊も無駄撃ちが多く、こちらも疲弊する。戦略的撤退を繰り返した結果、居住区の7割が被害に遭うという大惨事になったのだ。


 ここで、イライラしているダークエルフの族長が口を挟んでくる。


「それは分かっている。だから苦労しているんだ。その対処法を教えてくれ」


「分かりました。混ざっているのなら分ければいいのです。その方法ですが、厄介な変異種は3種類で、メタリックスライム、ポイズンスライム、アシッドスライムです。メタリックスライムは鉱石や魔石、ポイズンスライムはロクサ草、アシッドスライムはパイン茸が好みだそうです。なので、それを餌にスライムを分別します」


 私は、当時の族長が示した対処法を説明した。


「にわかに信じられん」


「これはあくまでもスライムデザスターを経験した、当時の族長の推論の域を出ません。しかし、資料を分析した私が思うに、彼は誰よりもダークエルフ族の子孫のことを考えていました。大掛かりな実験はしていませんが、少数での実験では成功しています」


 ここでネスカが意見を言う。


「やってみる価値は十分あると思いますよ。このままではジリ貧だ。それで上手く、スライムが種類ごとに分かれてくれれば、何とでも対処ができます」


 しかし、族長がまた反対意見を言う。


「魔石に、ロクサ草に、パイン茸だって?そんな高級品ばかり・・・それもちょっとじゃないだろ?そんなことをしたら、ウチの里は破産する。それに失敗したらどうするんだ?大損じゃないか!!」


 これには普段冷静で、のほほんとした雰囲気のあるスターシア団長がキレてしまった。


「あれもダメ、これもダメって!!だったらどうしろっていうのよ!!特大魔法で森を焼く?ダークエルフの血が色濃く出ている私やダークエルフ部隊だって、森を焼くのが辛くないわけないじゃないの!!私だって、過去の戦闘記録を読んで、苦渋の決断をして、この案を提示したんだから!!」


「いや・・・しかし・・・その・・・」


 最終的な決定権は魔王様にあるので、強制的に命令をすればそれで済む。しかし、そうなるとダークエルフ族との間に溝ができる。こんな時はあれだ。OL時代に読んだマニュアル本にあった「押し付けるではなく、質問により気付かせる」作戦だ。


「族長にお尋ねします。ダークエルフ族の命、森、資産、どれが一番大切ですか?」


「それは・・・もちろん・・・えっと・・・」


 コイツはダメかもしれない。

 そんなとき、マルレーンさんが声を上げる。


「族長に代わってお答えします。まずはダークエルフ族の命です。そして次は大切なシュバルツ森です。家が無くなっても、お金が無くなっても私たちは森が無事であれば、生きていけます。多少、不自由になっても、1000年以上、そうやってきたのですから・・・」


 この発言で族長は気付かされたようだった。


「こんな簡単なことも分からないなんて、私も焼きが回ったな・・・この件が片付けば引退するとしようか・・・まあ、今はそれどころではないな。里にある魔石や素材は好きなだけ使ってください」


 その後、細かい調整を行い、いよいよ作戦に移ることになった。



 ★★★


 ネスカが指揮を取る。


「ゴブリン隊、ハーフリング隊、コボルト隊!!投下しろ!!」


 土魔法で作った即席の城壁から、魔石、パイン茸、ロクサ草を3箇所に分けて投下する。しばらくすると、上手く種類ごとに分かれた。通常のスライムは分かれていないけど、弱いから無視してもいい。


「よし!!攻撃開始だ!!無理をするなよ!!長丁場になるからな」


 まず、先陣を切ったのは、メタリックスライム殲滅部隊だ。オルガ団長や部隊長を筆頭に突撃していく。この部隊は近接戦闘にめっぽう強く、ハンマーでメタリックスライムを叩き潰していく。余裕が見え、獅子族と虎人族の部隊長やオルガ団長が軽口を叩き合っている。


「何匹倒せるか勝負だ!!」

「負けんぞ!!」

「アタイも乗った!!何を賭ける?」


 アシッドスライムには、スターシア団長が指揮する魔導士部隊が担当し、ポイズンスライムにはマルレーンさんを筆頭にした弓兵部隊と殲滅狙撃隊が対処に当たった。どちらも余裕そうだった。

 第三軍団はというと、殲滅狙撃隊以外は後方支援部隊として運用した。だって、個人能力が違い過ぎるからね。


 ネスカが言う。


「記録では、5日以上戦闘が続いている。悪いがクララ、戦況を見て、シフトを組んでくれ」

「分かったわ。物資を確認したら、エナジーナッツ、マジカルナッツ、コーカナッツもあるから、疲れたら補給部隊に言ってね」

「懐かしいな。ケンドウェル伯爵領のことを思い出すよ」

「そうね、あの時は・・・って、あの時とはいつのことでしょうか?ネスカ王子」

「もういいから・・・」


 戦闘は2日続いた。

 殲滅狙撃隊の投げる物やロプス君の矢が無くなり、急遽何軒かの建物を壊して、投擲資材を作ったり、オルガ団長が討伐数を稼ごうとして、ローテーションを守らずに勝手に出撃し、獅子族と虎人族の部隊長も釣られて出撃して、急遽ローテーションを組み替えたりというハプニングはあったが、何とか持ちこたえた。


 そんな時、監視に付けていた斥候部隊員から報告が入る。


「スライムが森へ逃げていきます!!」


 当時の資料によると、逃げたスライムが向かっている先に固有種がいると記載されている。しばらくすると、3箇所で繰り広げられていた戦闘も収まり、スライムはいなくなった。ネスカが指示する。


「後方支援部隊で素材を回収!!待機中のダークエルフ隊は後方支援隊の護衛だ!!追撃は一旦体制を整えてからだ」


 そこら中から歓声が上がる。後は固有種を討伐するのみだ。


 そんなとき、ハイドン率いるオーガ部隊が到着した。自分たちが歓声で迎えられたと勘違いしたハイドンは、魔王様に言い放つ。


「魔王様!!このハイドンが来たからにはもう安心です。スライムなんかは一捻りです!!」


 ネスカが戦況を伝える。


「ならばこれより我らが行こう!!すぐに殲滅してやるわ!!」


 ハイドンの部隊は、森に突撃して行った。そして、1時間もしない内に巨大な魔石を手にして帰還した。ハイドンは言う。


「何が固有種だ!!一撃で粉砕してやったぞ!!オルガ!!俺に惚れるなよ」


 当然、ハイドンはオルガ団長に殴り倒された。


 資料によると、この固有種は見掛け倒しだったそうだ。魔王軍の精鋭を集め、突入する隊員には遺書まで書かせて突入させたのだが、2~3発矢を放ったら消滅したらしい。そして、特大の魔石が採取できたそうだ。当時の団長は、繁殖に特化したスライムだったのではと推察している。


 そんなハイドンに魔王様も「魔石を置いて、すぐに帰り、次の出動に備えなさい」と言って、かなりの塩対応をしていた。

 ハイドンの部隊は、住民や他の魔王軍の冷たい視線の中、帰還して行った。


 後は、再発防止策だな・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ