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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第四章 就職

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72 森の危機 2

 私たちは緊急出動でダークエルフの里に向かっているのだが、今現在、私と一緒の竜車に乗っているのは、魔王様、オルガ団長、チャックさん、そしてネスカだ。ネスカが詳しい説明を移動中にすると言い出したのは、私と乗りたかっただけかもしれないと思ってしまう。

 でも、今はそんなことを考えている場合ではないので、ネスカに状況説明を求めた。


「スライムデザスターは、魔王国ブライトンで起こる災害級の魔物被害で、過去にも多くの被害を出している。まあ、言ってみれば、スライムによるスタンビートと思ってくれたらいい」


 スライムは非常に弱い魔物だ。子供でも駆除できるし、最弱の一角兎ホーンラビットよりも弱い。

 少し冒険者の話をするとFランク冒険者の主な仕事は一角兎ホーンラビットの討伐とドブ掃除だ。そもそも、なぜ冒険者がドブ掃除なんてさせられるかというと、スライムがドブに詰まるからだ。スライムは弱すぎて、しかも魔石もほとんど取れない。なので、ドブ掃除をスライムの討伐とは呼ばない。ギルマスのレベッカさんが言うには「魔物討伐は冒険者の仕事だ」という無理くりな理論で、誰もやりたがらないドブ掃除を冒険者に押し付けられた歴史があるようだ。

 だから、私はネスカの言っていることがあまり理解できなかった。


「多分、クララのイメージしているスライムと全く違うと思うよ。スライムデザスターは大量の多種多様なスライムもいるから、当然、変異種もいる。そして間違いなくそれ以上の個体も存在する。ここでいくら話しても、分からないだろうから、現場で確認してくれ。ただし、絶対に油断はしないように」


 実際私は、スライムくらいなら戦闘に参加してもいいと思っていた。しかし、それは大きな間違いだった。


 ★★★


 3時間ほどで現場に着いた。

 普通は半日は掛かる場所らしく、第一軍団の部隊長は新型竜車の性能に驚いていた。

 町に入るとダークエルフ族が総出で、大量のスライムと戦闘していた。土魔法で臨時の城壁を作り、まだ、町への被害は出ていないようだった。

 すぐに族長の元に案内されたのだが、スターシア団長と族長が言い争っていた。


「族長!!何度言ったら分かるの?この状況で森に被害を出すなって、何を考えているの?」

「先祖代々、守り続けて来た森を傷付けるわけにはいかん」

「だったら、どうしろというの?」

「それは精鋭部隊を組織して、発生源となっている固有種を討ち取れば・・・」

「この状況で?どこにいるか分からない固有種を探して、討伐しろと?」

「・・・・」

「それは、選ばれた隊員に死んで来いって、言っているのも同じよ!!」


 言い争っていた二人だが、私たちに気付いて、言い争いを止める。族長は魔王様に歩み出て、頭を下げる。


「この度は遠路遥々お越しくださり、誠に・・・」


「挨拶はいいです!!スターシア、状況報告を」


「はい。まずスライムは大量にいます。数えることなんてできません。ポイズンスライムからメタリックスライムまで幅広く。あまり強くはありませんが、新種もいますし、変異種も確認されています。よって、スライムデザスターで間違いないと考えます」


「分かりました。それで何をもめていたのですか?」


「現在、本体到着まで、地元のダークエルフ部隊と第二軍団で遅滞戦闘をしています。しかし、今後の方針を巡って、対立しておりました」


 話を聞くと、どちらの言い分も理解できる。

 スターシアさんの意見は、大きな魔法なり、兵器を使って、とにかく数を減らし、徐々に戦線を押し上げながら殲滅していき、発生源となっている固有種を討ち取るというもので、族長の意見は固有種を討ち取ることには同意しているが、森に大きな被害が出るので、なるべく早い段階で討伐部隊を差し向けることを主張していた。


 まあ、どっちも間違ってないし、議論が平行線をたどるのも分からなくもない。


 そんなとき、ネスカが意見を言う。


「とりあえず、戦況を把握するため、軍議を開きましょう。少し見た限りでは、すぐに戦線が崩壊することはないでしょう。ここにいる部隊で上手くローテーションをすれば、数日は持ちこたえることはできます。但し、これがいつまで続くかは分かりませんが」


 この提案は受け入れられることになる。その後ネスカは私にこう言った。


「クララには別の仕事を頼みたい。資料の分析だ」



 ★★★


 やってきました資料室。

 私は一人で、ダークエルフ族の資料室に籠っている。ネスカから頼まれたのは、過去のスライム関連の資料を分析し、私にしかできない提案をしてくれとのことだった。その資料というのは膨大にあるだろう。まあ、ダークエルフ族も長命種だからね。流石に憂鬱になるなあ。


 そう思っていたが、意外に少なかった。過去に何度か発生したみたいだが、ここまで大掛かりなスライムデザスターに発展したのは、過去に一度きりだった。というのも、大体は早い段階で大掛かりな討伐隊が組まれて、事なきを得ているみたいだった。記録にある限りで一番被害が多かったのは、500年前で、居住区の7割が被害に遭ったようだ。その時は今後、どのような対策をすれば被害を最小限に抑えられるかを詳しく調査している。結論は不明としながらも、当時の族長の手記が載っていた。


 手記より

 スライムデザスターが起こる何年も前からシュバルツ森林で獲れる素材が増えた。これは喜ばしいことだった。しかし、これが災いの始まりだったのではないか?1年前から急にスライムが増え始めた。それも我らが変異種と呼ぶ個体ばかりだ。当初は里の者も歓喜した。メタリックスライムは鉱石や魔石が採取できるし、ポイズンスライムは薬の素材が採取できる。アシッドスライムは特に素材にはならないが、発生地を調べれば、パイン茸の群生地に行き着く。変異種といってもたかがスライム、ダークエルフの敵ではない。


 油断していた。森に変化があれば、「すぐに魔王様に報告し、対処しろ」と前族長から引継ぎを受けていたのに、こんな状態になるまで何もしなかった。私は族長として失格だ。この記録を読む未来の族長たちに伝える。対処法は我らの伝統の中にある。それを忠実に守ればこんな悲劇は起きない。


 伝統って?


 そんなことを思っていたら、ダークエルフの女性が気を遣ってお茶を持ってきてくれた。話を聞くと、族長の娘さんでマルレーンさんという方だった。私は彼女に質問した。


「少し、お尋ねするのですが、ダークエルフの伝統ってどんなのが、ありますか?」

「漠然とした質問ですから、難しいですね。森を大切にしろとかですかね・・・」

「スライム関連では何かありますか?」

「そうですね・・・例年よりも変異種が増えたら、しっかり狩りなさいとは言われてますね。でも実際はスライム専門に狩る物好きな人はいませんし、変異種が増えたら増えたで、採取素材の価格が下がるので、余計に討伐する人は、少なくなります。最近では森に入る狩人自体が減ってますね。商人や軍人になったりする人も多いですしね」


 他種族との交流が増えれば、自然と農業や林業などの一次産業から商業などの三次産業に移行していく。ダークエルフもその流れにあるのだろう。それを思うと、今でも伝統的な生活を営んでいるケンドウェル伯爵領のエルフたちは稀有な存在だ。

 そんな話は置いておいて、今後のことだな。なぜ起こったかは後に研究するとして、起こってしまった後のことを分析しないとね。


 再び手記を読む。


 ここまでやっても発生してしまったら仕方がない。発生してしまった時の対処法も研究しているが、こればかりは仮説の域を出ない。だから、我々が失敗した原因を中心に記載することにする。まずは・・・


 私はそこから、スキルの「長期保存」で記憶しておいた魔物図鑑のスライムの生態を「転写」していく。まずは、苦戦した要因を潰していかないとね。


 2時間後、私は分析を完了し、会議資料を作り終えた。

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