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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第四章 就職

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66 参謀長クララ 5

 それから3日間は、復興支援に取り組んだ。

 オルガ隊長が指定した魚の缶詰は評判がよく、第三軍団の評価も上がる。余談だが、缶詰は魔王国ブライトンでも自作している。留学中のネスカから情報を得て作り始め、工場もある。当初、味は本家の物に遠く及ばなかったが、それでも缶詰と呼べる物にはなっていた。なので、参謀長に就任する前の捕虜の身分のときに、レシピのアドバイスを行い、味は大幅に改善されることになったのだ。


 この復興作業で一番活躍したのは、一つ目巨人族の一家だった。瓦礫の撤去や仮設住宅の建設など多岐に渡る。成人で5メートル程の身長になる一つ目巨人族は、みんな怪力の持ち主だ。

 家族ごとで行動する文化があり、これは、その体の大きさからあまり多くの者がまとまって住むと多くの問題が起きるからだと言われている。現在、第三軍団に従軍しているのは、夫婦と息子二人の4人家族で第一軍団から転属になったのだ。


 転属になった理由は、その性格からだ。力も強く、打たれ強いので、第一軍団に配属されたのだが、臆病で心優しい性格が戦闘には向かなかった。それに・・・


「アイツらを絶対に怒らせるなよ。大変なことになるぞ。大暴れしたときは、アタイとスターシアでなんとか押さえ付けたんだからな。アイツらの一つ目が真っ赤に充血したらすぐに逃げろ。命の保証はできない」


 オルガ隊長が恐れるくらいの破壊力があったらしい。臆病で心優しく、戦闘で使い物にならないことをオーガ族と獅子族の新兵に息子がからかわれたことが原因だったそうだ。これ以後、「戦闘では使えないが、キレたら何をするか分からない奴ら」というレッテルが張られ、第三軍団への転属になったそうだ。


 でも、復興支援では大活躍だけどね。フロッグ族の子供たちもじゃれついている。


 結局、人の使い方なんて、適材適所だ。

 この復興支援活動だけでも、十分に分かる。ゴブリン族は手先が器用だし、コボルト族は鼻が利く。ハーフリングは素早いしね。



 ★★★


 ということで、開催しました!!第三軍団全員参加の大運動会!!


 当初は、団員たちの能力を単に測定するつもりだったのだが、オルガ団長対策で競争を取り入れることにした。チャックさんを通じて提案したところ、大賛成してくれた。リハーサルをしたが、オルガ団長がほぼすべての部門で1位になるであろう成績だったので、団員のことを考えて大会委員長をしてもらうことになった。

 当初は、いじけていたオルガ団長だったが、チャックさんが上手く丸め込んだらしい。


「第一軍団と第二軍団の部隊長クラスを集めて、賭けをすることにしました。苦肉の策ですが、大目に見てください」


 チャックさんは、オルガ団長のことを心得ている。扱いが上手いな。


 そして本番当日、来賓席に座っているのは、魔王様とネスカだった。魔王様には招待状を出したけど、ネスカには出してない。「戦略顧問として当然だ」と理由を付けて、無理やり来賓席に座っているのだ。


 最初は徒競走から始まる。

 歴戦の猛者である部隊長たちから、怒号が響く。


「オラ!!ゴブリン!!負けたらぶち殺すぞ!!お前に賭けてんだからな!!」

「殴ってでも勝てよ!!」

「気合いだ!!気合い!!負けは許さんぞ!!」


 異様な緊張感の中で、競技はスタートする。

 因みに魔王様が賭け事に対して、どういった考えか分からなかったので、現金ではなく、特製の高級缶詰でやってもらうことになった。無くなったら、売店で買うので、結局は現金と同じなんだけどね。


 徒競走は白熱した展開になった。小型種は軒並みスピードがあり、決勝はハーフリングとコボルト族の団員がデッドヒートを繰り広げ、ハーフリングの隊員が1位を勝ち取った。怒号と悲鳴、歓声が入り混じる。大勝ちしたオルガ団長は大喜びで、負けた部隊長たちは売店に走って、缶詰を買いに行く。


 どんどん競技が進行していく。

 スリングショット競技ではゴブリン族が、障害物走ではまたしてもハーフリングが1位を獲得した。また、この運動会は種族特有の能力をお披露目する意味もあるので、宝探しのような競技も行った。これは嗅覚に優れたコボルト族が当然優勝したし、水中活動部門ではフロッグ族が大活躍だった。

 他にも普段、日の目を見ないチャックさんを筆頭にした本部員のための競技も開催、種目は速記、暗算、速読などで、全種目でチャックさんが1位を獲得した。この競技は正直盛り上がらないと思っていたが、意外にも大盛況だった。観覧席の部隊長や競技に参加しない者まで、一緒に暗算をしたりして、クイズ番組を見て盛り上がるような感じだった。優勝したチャックさんは、「アイツは天才だ!!」と称賛されることになる。


 一方賭けの方は、オルガ団長が連戦連勝だった。オーガ族の部隊長と獅子族の部隊長が「イカサマしてるだろう」と文句を付け、オルガ団長に「証拠を出せ!!」と怒鳴り返される場面もあるくらいで、オルガ団長が賭けるのを見て、追従する者が続出した。

 これにはオルガ団長は、「アタイは最後に賭ける」と言って、対抗していた。


 そんな運動会も最後の競技が始まる。

 その競技は投擲競技だ。大きな鉄球を投げて、その距離を競うだけなのだが、私はアドリブを入れてみた。拡声の魔道具でアナウンスする。


「この競技が最後の競技になります。オープン参加にしますので、我こそはと思う方は奮ってご参加ください!!自分に賭けて勝てば、優勝賞品も缶詰ももらえますよ!!」


 若干、煽りも入っていたが、ほぼすべての部隊長が自分に缶詰を賭けて、参加することになる。

 オルガ団長は、小声で呟いた。


「アイツら馬鹿だ。缶詰はアタイの総取りだな・・・」


 結果は圧倒的大差で、1位から4位を一つ目巨人族の一家が独占することになった。部隊長は打ちひしがれ、オルガ団長は高笑いだった。


 閉会式が始まり、商品と賞状の授与が終わり、オルガ団長が講評で壇上に上がるときに事件が起きる。オルガ団長の懐から何かがこぼれ落ちた。それは紙束だった。拾ったオーガ族の部隊長がオルガ団長に詰め寄る。


「オルガ!!てめえ!!やっぱりイカサマしてやがったな!!おかしいと思ったんだ。あんなに馬鹿勝ちするわけがない!!」


 その紙束は私が大会前に団員たちの能力をリサーチしたメモ用紙だった。各種族がそれなりに活躍できるような競技を構成するため、訓練風景を見ながらまとめたものだ。どうりで、勝てるわけだ。こういった勝負勘は凄いとは思うけど・・・


 会場は騒然となる。オルガ団長は悪びれず言った。


「どこがイカサマだ!!アタイは団員の能力を一生懸命に把握していただけだよ」


「うるせえ!!缶詰返せ!!この野郎」

「そうだ!!そうだ!!」

「魔王様も何とか言ってくださいよ。この馬鹿に!!」


 裁定は魔王様に委ねられることになった。

 魔王様は壇上に上がって一喝した。


「てめえら!!負けたからってガタガタ言ってんじゃねえ!!少しはオルガを見習え!!隊員の能力も把握せずに好き勝手やりやがって!!一つ目巨人族が役立たずだって!?ふざけるな!!私に言わせりゃあ、お前らの方が能無しだよ!!しっかり反省しろ」


 魔王様は怖い人だった。オルガ団長が恐れるくらいだから、当然か・・・


 場の雰囲気が凍り付いたところで、ネスカが登場する。


「色々あったけど、いい大会だった。第一軍団と第二軍団でも大会を開けばいんじゃないか?せっかくの楽しい大会が台無しになったらつまらない。予定通り、慰労会をしよう。早速準備だ」


「そうしましょう!!」

「飲みましょう!!」

「酒だ!!酒を持ってこい!!」


 場は収まり、また盛り上がり始めた。

 こういったところは空気が読めるのにね・・・


 それから宴会が始まっても私の仕事は続く。今日取ったデータを解析し、資料を作る。そして、それから第三軍団に最適な戦術を構築しなければならないからね。ネスカが「手伝おうか?」と言ってきたけど「ネスカ王子のお仕事は、部隊長と歓談して親睦を深めることだと思います。早く行ってください」と言って追い返した。


 そんな感じで資料を作っていたら、宴会から抜けてやって来たチャックさんに言われた。


「ずっと日の目を見なかった、我々にも活躍の機会を与えてくれて、本当に感謝してます。クララ参謀長と一緒なら、我々も変わって行けると思います」


 正直、頑張りが報われた気がした。

 私は照れ隠しでチャックさんに言った。


「チャックさんも主役の一人なんですから、早く宴会に戻ってください。しっかり楽しんで!!」


 チャックさんを見送りながら、思った。


 私たちはきっと、やれる!!

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