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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第四章 就職

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58 神聖ラドリア帝国とロイター王国

 とうとう神聖ラドリア帝国にやって来た。ここで大規模なセレモニーを行った後に、ロイター王国を経由して、魔族領に入るのだ。キャサリン様の被害を受けた自称聖女のアイリーンだが、完全に復活していた。色々な思惑が複雑に絡まりあって、すべてあの晩餐会での出来事はなかったことになったのだ。つまり、キャサリン様と私たちは出会ってもいないのだ。そういうことになっている。


 なのでアイリーンの胸も復活し、以前にも増してダミアン王子にすり寄っていく。流石にそれは無理があるだろう・・・


 神聖ラドリア帝国では、完全に私たちはプロパガンダに利用された。行く先々で魔族討伐の象徴として扱われ、式典や晩餐会でもその役割が求められた。アイリーンはどうか知らないが、私もエスカトーレ様もゴンザレスも魔族になんか会ったことがないし、こっちに攻めて来ないなら、そっちでお好きにどうぞというのが、本音だ。それを神のお告げで誤魔化してはいるが、「攻められる前に攻める」「やられる前にやる」と言っているのと同じだ。一体、何を考えているのかと不思議に思う。


 神聖ラドリア帝国では、アイリーンの独壇場だった。ダミアン王子を含めた私たちは、アイリーンの添え物のような扱いだ。まあ、楽といえば楽なのだが・・・

 今も多くの市民を前にアイリーンが演説をしている。


「私たちは必ずや卑怯で狡猾な魔族を打ち倒し、世界を平和に・・・」


 多分、ここにいる市民たちも魔族に会ったことがある人はいても少数だろうに、魔族への憎悪を植え付けようとしている。


「正直、私も怖いです。でも私は「聖女」!!正真正銘の「聖女」!!「聖女」としての使命を果たしますので、どうか皆さんのお気持ちを少しだけ、分けてください!!」


 自分を本物だと連呼する辺りは怪しすぎる。

 それに資金集めもしている。もちろん資金集めが悪いわけではないのだが、やり方が姑息であくどい。不安を煽り、集団催眠のような状態にしてお金を出させるなんてね・・・

 アイリーンのスキルか何か知らないが、演説が上手いのも解せない。


 そんな感じで、よく分からないまま、神聖ラドリア帝国での活動は終了した。そして、最後の訪問先であるロイター王国に向かった。



 ★★★


 ロイター王国では、大きな式典などはなく、国王に謁見するのみだった。

 ネスカに聞くと、こちらも大人の事情だという。魔族領と国土東側の大半を接しているので、魔族とのハーフもそれなりに居住しているらしい。なので、その者たちの反感を買わないように、大ぴらに魔族討伐を叫べない事情があるようだ。噂では、魔族に取り込まれている貴族や何かもいるみたいだ。


 そんな状態なので、この国での滞在は2日のみ、そして、なるべく目立たないように出発してほしいとのことだった。アイリーンは露骨に文句を言う。


「ロイター王国は風見鶏で、卑怯な蝙蝠野郎ですわ。神聖ラドリア帝国やルータス王国、魔族を天秤にかけて・・・魔族なんて皆殺しにすればいいのですわ!!」


 信用のならないアイリーンの発言だが、「魔族の皆殺し」以外は同意する。私も苦労させられたしね。ネスカが一応ツッコミを入れる。


「そのロイター王国の出身者がここにいるんですけどね」


「そうでしたわね。眼中に無さ過ぎて、忘れていましたわ」


 そんな話をしていると、体の大きな獣人の集団に話し掛けられた。見た感じライオンのような獣人たちだ。


「おおネスカ!!久しぶりだな!!元気だったか?」


「父上!!それに兄上たちも!!」


 あれ?父上って・・・

 似ても似つかないんだけど・・・・


 ネスカが説明を始める。


「みんなに紹介するよ。こちらは僕の父でビーグル子爵家の当主だ」


「ライア・ビーグルだ。見ての通り獅子族だ。そしてこっちが長男のライオ、そんでこっちが二男のライガ。ネスカと俺たちが似ていないのは、ネスカが養子だからだ。養子にした経緯は色々あってな・・・まあ、察してくれ」


 なるほど・・・養子といっても家族関係は良好なようだ。だから、ネスカはケンドウェル伯爵領で、獣人たちを迫害する奴らに敵意を剥き出しにしていたんだね。


「久しぶりだから、飯でもどうだ?王都では俺たちは嫌われ者だから、野営地に飯は用意してあるんだ。酒もたっぷりあるぞ」


 ネスカは私たちの方を見る。

 エスカトーレ様とゴンザレスは賛成だった。


「他ならぬネスカさんのご家族ですから、是非に」

「そうだ。それにせっかくだから、ナダスをしよう。熊人族も強かったから、獅子族の強さにも興味がある」


 ダミアン王子は、エスカトーレ様に促されて、参加することが決まった。そんなとき、ネスカの兄たちが侍女に絡んでいた。


「お前たち、いい匂いがするな。どうだ?俺たちと一緒に来ないか?」

「飯も酒もあるぞ。顔も見せてくれ、美人だろ?」


 ナンパだった。

 顔も見せない相手をナンパするなんて・・・文化の違いだろうか?


 しかし、アイリーンは拒絶する。


「私は気分が悪いので、これで失礼します。宿にいますので、お好きにどうぞ。貴方たちも行きますよ」


 侍女二人は、残念そうにアイリーンについていく。



 それからキャンプ地に案内され、宴が始まった。かなりの盛り上がりだ。料理は豪快な物が多く、素材の肉をそのまま焼いたり、鍋に放り込んだりするだけだった。私が味付けを手伝うと絶賛される。当然缶詰も大人気だ。ビーグル子爵にも気に入られる。


「クララは、いいお嫁さんになるぞ!!なあ、ネスカ!!」


「父上、クララも困ってますから・・・」


 ゴンザレスはというと、早速ライオさんとライガさんたちと仲良くなっていた。


「ゴンザレス殿は強いな。俺たちも次は負けんぞ」


「俺なんてまだまだだよ。兄上や熊人族最強のグリズルさんには及ばない」


「そうか、上には上がいるもんだな。来年は大会に出てみるかな・・・」


「是非そうしてくれ!!」


 ダミアン王子は、エスカトーレ様のサポートもあり、無難にこなしていた。


 盛り上がりを見せた宴会だが、終わりの時を迎える。ビーグル子爵がネスカに何かを手渡した。


「困ったときは、これを空に打ち上げてくれ。すぐにでも俺たちが駆け付ける。俺たちがこの人数で、ここにいるのも、ネスカを心配してのことだ。遠慮せずに使ってくれ」


「ありがとうございます。使うことがないことを祈ってますけどね・・・」


「そうだな。ではみんな気を付けてな!!」



 そして次の日、私たちは魔族領へと足を踏み入れるのだった。

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