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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第三章 旅立ち

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51 武闘大会

 夏季休暇が明け、いよいよ学園生活最後となる3年生の後期がスタートする。今期のメインイベントは武闘大会だろう。3年生の希望者による大会で、多くの来賓を招いて開かれる。国王陛下も観戦に来られるのだ。いつものメンバーは私以外は全員参加なのだけど、私は出場を辞退した。

 戦闘力ゼロで戦闘職希望でもない私が出場する意味はないしね。ロキ特製の武器防具を完全装備すれば、一回戦くらいは勝てるかもしれないけど・・・・


 のんびりと観戦するだけだと思っていた私だったが、甘かった。廊下で学生部長とすれ違ったときに声を掛けられた。


「実は少し相談があってね。殿下の件なのだが・・・・」


 学生部長の髪が少し薄くなったように思える。というのも、私たちから横取りしたボランティア活動で大変苦労しているからだ。聖書と解説書に頼り切っていた頃のダミアン王子ならよかったのだが、今は新しい解釈書を手に、「イエスノーチャート」の設問のようにあれこれ質問するようになってしまったのだ。当然、学生部長たちは疲弊する。ダミアン王子のボランティア活動は2週間に1度なのだが、その対応に追われて、連日徹夜状態だという。

 いい気味だと思わなくもない。


「私では何とも・・・エスカトーレ様にお願いすればよろしいのでは?」


「それはそうなんだが・・・こちらも手一杯でね。それに武闘大会もあるし、このままではスタッフは倒れてしまう。そこで相談なんだが、武闘大会の実行委員長をしてくれないだろうか?引き受けてくれたら、武闘大会でベスト8に進出したのと同等のポイントを加算する。頼むよ。私たちを助けると思ってね・・・」


 この学生部長はかなりの手練れだ。こんな生徒が大勢いる廊下で、平身低頭でお願いされたら無下にはできない。


「ちょっとここでは何ですから、その・・・検討して・・・」


「受けてくれるのか!!ありがとう!!君はエスカトーレ様と仲がいいし、要人のお知り合いも多い。すぐに申請するよ。本当にありがとう」


 強引に学生部長に手を引かれ、会議に出席させられる。


「私は受けるとは、一言も・・・・」


「とりあえず、会議だ。役割を決めよう」


 雰囲気的にもう断れなかった。学生代表の実行委員長に就任が決定してしまった。更に悪いことは続く。


「今回のコンセプトは学生の自主性ということにしよう。エスカトーレ様の活躍もあるしね。ということでクララ委員長、頼んだよ」


 ほとんどの仕事を丸投げされることになってしまった。



 ★★★


 何とか大会開催までこぎ着けた。ここまで苦難の連続だった。いつものメンバーは全員大会に出場し、鍛錬に励んでいるので手伝ってもらうことはできない。私も流石に「手伝ってもらう人が必要です」とお願いしたのだが、あてがわれたのは問題児の伯爵家三人娘だった。本人たちは実行委員になれば、武闘大会でベスト16に進出したのと同じポイントをもらえると知って、無理やり実行委員になったようだ。なので、全くやる気がなく、使えない。

 部下に苦労する上司の気持ちが分かった気がした。


 その三人娘には、本番の来賓への接待や事前の挨拶回りをお願いした。当初は文句を言っていたが、私たちが作った新解釈書を手渡し、「栗鼠人族の良さもついでに広めてみてはどうでしょうか」と宥めスカしたら、何とかそれだけはしてくれるようになった。ただ、出場する学生のことは全く分からない状態なので、選手一人一人のプロフィールを作り、三人娘に持たせることで対応した。

 この三人娘は外面はいいので、来賓から高評価を受けていたのだが、それが少し腹立たしかった。


 しかし、学生部長には及ばない。本当に腹立たしい。すべて自分の手柄であるかのように来賓や国王陛下に吹聴する。心から天罰が下ればいいのにと思ってしまった。


 ★★★


 肝心の大会だが、いつものメンバーは順調にベスト8まで進出した。ここからはメンバー同士のつぶし合いになってしまう。まずは準々決勝第一試合でレニーナ様とゴンザレスが激突、レニーナ様が華麗な弓技を披露して会場を沸かせ、ゴンザレスがしっかりと楯で防ぐ展開となった。最終的にはレニーナ様が矢を撃ち尽くし、更に魔力を矢に変えて対応していたが、魔力も尽きてしまった。そこでレニーナ様が負けを認め、ゴンザレスの勝利で決着がついた。

 エスカトーレ様とネスカは危なげなく勝ち進み、ミリアはというとダミアン王子との対戦だった。やはり実力差があるようで、しばらくしてダミアン王子がミリアの剣を弾き飛ばし、喉元に剣を突き付けて勝負が決した。皆が「ダミアン王子に負けたのなら仕方がない」と慰めていた。


 準決勝に入る前に一時休憩となった。休憩中に私に話しかけてくる人たちがいた。


「ここでも苦労しているようだな?」


 話し掛けてきたのはレベッカさんとジャンヌ隊長だった。


「この選手プロフィールはクララ嬢が作ったのだろ?参謀本部の奴らが絶賛していたぞ」

「これがあれば、採用にも活用できる。今思えば、最初から参謀本部での研修をさせるべきだった。本当にあの時はすまなかった・・・」


「そんな・・・お気になさらず」


 苦労したけど、私の仕事を評価してくれる人がいて、少し気分が晴れた。

 そんなとき、レベッカさんが質問をしてきた。


「クララ嬢は次の準決勝をどう見る?優勝は誰だと思う?」


「そうですね・・・エスカトーレ様とゴンザレスは正直どちらが勝つかは分かりません。まさに楯と矛の壮絶な戦いになると思います。一方、ダミアン王子とネスカですが、たぶん、ネスカがわざと負けると思います。素人の私が見てもネスカはダミアン王子よりも強いと思うのですが、政治的な理由で勝たないほうがいいと思っているでしょうね」


 これには、ジャンヌ隊長が異議を唱える。


「流石にダミアン王子より強いことはないだろう。私はダミアン王子が余裕で勝つと見るぞ」


 そして休憩が終わり、準決勝が始まった。

 準決勝第一試合は私が予想した通りの展開になった。エスカトーレ様が強烈な魔法を放ち、ゴンザレスが楯で受け止める形だ。壮絶な戦いに会場は静まり返っている。しばらくそんな展開が続いたが、双方ともボロボロだ。エスカトーレ様は魔力切れで片膝をつき、ゴンザレスは楯も鎧も原型を留めていない。それでもゴンザレスは闘志を捨てず、向かって行く。それに対して、エスカトーレ様は諦めて負けを認めた。


「気合いと根性の勝利だな・・・素直に愚弟を褒めたい」


 レベッカさんも感動しているようだった。


 続いてのネスカとダミアン王子との試合だが、観客が盛り上がる好試合となった。最終的にはダミアン王子がネスカの剣を弾き飛ばして勝利したのだが、レベッカさんとジャンヌ隊長が驚きの表情を浮かべていた。


「ネスカという男は底が知れん。殿下が躱せるギリギリのスピードで攻めたて、頃合いを見てスピードを緩めて、疲れてスピードが落ちたことを印象付ける。そして、これまた殿下が躱せるギリギリのスピードで、逆転の一撃を放ったように見せて剣を弾かれるか・・・・剣技だけなら、私やジャンヌに匹敵するかもしれんな」


「クララ殿の見立て通りになるとはな・・・私にはクララ殿の眼力も恐ろしいぞ。一体何人がネスカの実力に気付いているやら・・・・」


 やっぱりネスカは危ない奴なのかもしれない。



 そして決勝なのだが、ダミアン王子が驚きの行動に出る。ボロボロのゴンザレスを見て、棄権を宣言したのだ。


「ボロボロの友人を叩きのめすことは、僕にはできない。僕の負けでいい」


 これには拍手が起こった。国王陛下も称賛しているし、優勝したゴンザレスも「一生殿下についていきます」と言って泣き崩れている。


 後で聞いた話だが、このダミアン王子の行動は、実はエスカトーレ様の策略だったそうだ。エスカトーレ様の中では、決勝でダミアン王子と対戦した時に「大切なエスカを叩きのめすことは、僕にはできない。僕の負けでいい」と言わせ、そこで抱き着き、既成事実を作ろうと思っていたそうだ。大人しそうに見えて、何とも恐ろしい。


 しかし結果は、エスカトーレ様はゴンザレスに敗れ決勝進出はならなかった。ショックで落ち込んでいたエスカトーレ様は、ダミアン王子に「決勝で棄権しなくていい」と伝えるのを忘れていたため、今回のことが起きたようだ。結果的にはよかったのだけど。



 すべての日程が終わり、私は後片付けに取り掛かっていた。そのとき、学生部長直属のスタッフたちに取り囲まれた。


「本当に君のお陰だよ。学生部長は口だけで何もしないから助かったよ」

「まったくだよ。君が来なかったらみんな過労で病院送りだったよ」

「今後クララさんが困ったことがあったら、私たちが絶対に助けてあげるからね」


 本当に嬉しかった。努力が報われた気がした。

 私の頑張りは無駄ではなかったのだ。私をいいように利用する人はいる。でもこんな人たちのために私はこれから頑張っていこうと思った。


 学生部長には腹が立つけど、こんな機会をくれたことだけは感謝しよう。

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ここまでずーっと搾取され物語
ノーと言えない主人公。 ストレス溜まる読者。
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