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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第三章 旅立ち

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45 職場研修 2

 夏季休暇に入った。

 冒険者ギルドやベル商会での研修は、学園に通いながらの研修だったけど、夏季休暇の研修は泊まり込みでの研修になる。最初の研修先は騎士団で、研修担当者は第3騎士隊長だった。ショートの青髪の20代の女性で、美人さんなのだが、目つきがヤバい。

 何か見たことがあると思っていたら、ナダス大会の女性の部で栗鼠人族のリタさんと決勝を戦った人だと思い出した。負けたことをかなり悔しがっていたから、そのことに触れると地雷になりそうだ。


「私は第3騎士隊長のジャンヌ・ドレイクだ。貴殿らの研修担当となったのだが、早速研修する部隊を振り分ける。エスカトーレ・ウィード!!貴殿は魔導士隊の研修を希望しているな?」


「はい!!」


「貴殿の個人能力を高めるような訓練はこちらではできん。騎士との連携を中心に訓練をしてくれ。続いて、レニーナ・ケンドウェル!!弓兵隊の希望か・・・まあ能力的には問題はないだろう・・・」


 ジャンヌ隊長はどんどんと研修生を振り分けていく。


「ネスカ・ビーグル!!ミリア・ギールス!!貴殿らは斥候部隊での研修を希望しているな?少し珍しいので、理由を聞かせてくれ」


 ネスカとミリアが理由を説明する。


「自分は「レンジャー」のジョブ持ちで、自分の能力を生かせると思ったからです。それに斥候部隊の能力によって、部隊全体の生存率が大きく変わってきますので、斥候部隊での研修を希望しました」


「私はそこまで戦闘力は高くありません。ですので、騎士団に入っても、冒険者になっても自分に求められる役割はこういった役割だと思い、斥候部隊を希望しました」


 ジャンヌ隊長は満足げに頷く。


「華々しい活躍をする騎兵隊も斥候部隊や補給部隊のサポートがあってこそ活躍できる。貴殿らは十分にそれを理解していると思う。存分に研修に励んでくれ」


 研修には私たちのグループ以外の学生も多く参加していたのだが、最後の最後まで私とゴンザレスは残されてしまった。


「クララ・ベル!!ゴンザレス・ドナルド!!貴様らは舐めているのか!?希望する部隊がなぜ参謀本部なのだ!!ある程度部隊活動の経験がないと作戦の立案などできんとは思わんのか!!理由を言ってみろ!!」


 元々騎士団での研修なんてする予定はなかった。学園のカリキュラムが変わらなければ、絶対に希望なんてしない。仕方がないので、オブラードに包んで本当のことを答える。


「私は体力もありませんし、魔法も使えません。冒険者ギルドのギルマスであるレベッカ様に相談したところ、参謀本部を希望するように助言をいただきました」


 レベッカさんの名前を出したのは、有名な武人でもあるので、説得力があると思ってのことだ。如何に騎士隊長でも、面と向かってレベッカさんを否定するようなことはできないだろうという打算もあった。


「自分も同じく姉上に、「クララと一緒なら心配いらない」と助言をいただきました!!」


 ゴンザレスの答えを聞いたジャンヌ隊長は怒りに震えていた。


「貴様ら!!私とレベッカが因縁の相手だと知っての発言か!?それにゴンザレス!!我が弟が世話になったな!!舐めた奴らだと思ったが、それなりにしっかりとした動機があれば、考えてやったのだが・・・予定変更だ。貴様らはこの私が直々に性根を鍛えなおしてやる!!」


 このジャンヌ隊長は、近衛騎士団長の娘さんで、ゴンザレスが模擬戦で倒した剣術教師の姉だったのだ。それにジャンヌ隊長とレベッカさんは同年代で、何かにつけて比較され、犬猿の仲だという。


 どうやら私たちは、地雷を踏んでしまったようだ・・・・


 ★★★


 その日から、私とゴンザレスは別行動だった。延々とランニングをさせられている。私は3周目でダウンした。ジャンヌ隊長に罵倒される。


「このゴミが!!早く立って走れ!!」


 仕方なく、エナジーナッツをこっそり齧り、どうにかやり過ごした。

 ゴンザレスはというと、余裕そうだった。一緒に走っていたジャンヌ隊長を追い抜いて激怒され、重りを付けて走らされていた。加減ができないところが、ゴンザレスっぽいとは思うけどね・・・


 二日目は、精神的に追い込む作戦に出たようだ。

 午前中に穴を掘ることを命じられた。たぶん午後にその穴を埋めるというよくある刑罰だろう。達成感がなく、辛いだけの作業というのは心が折れるという。それを知っている私は引き下がらなかった。


「お伺いしますが、深さは何メートルでしょうか?横幅は?目的を教えてください。目的によって掘削方法が変わってくるでしょうし・・・」


「つべこべ言わずに掘れと言ったら掘れ!!」


「職場研修の目的は、研修先、学生双方の利益を最大化すると規定にあります。私も規定に従い、より有意義な研修にしたいのです」


「と、兎に角掘れ!!目的は機密事項だ!!私は少し仕事をしてくるので、サボるなよ!!

 全く・・・口の達者さだけは参謀向きだな・・・」


 ジャンヌ教官は逃げるように去っていった。


 結局、私とゴンザレスは、こっそり「ドロドロ君2号」を使って、言い訳できる深さに掘ろうということになった。ある程度掘ったら、のんびりしようと思っていたのだが、ゴンザレスは手を止めなかった。


「これはいい鍛錬になるぞ!!クララは休んでいてくれ!!凄く楽しくなってきた」


 私は適当なところで止めて、優雅にお茶を楽しんでいたのだが、昼前になりジャンヌ隊長が戻って来たところで、掘っていた穴からお湯が噴き出た。なんとゴンザレスは温泉を掘り当ててしまった。ジャンヌ隊長もびっくりで、引き攣った顔で言う。


「こ、これが訓練の目的だ・・・井戸を掘ってもらおうと思ったが・・・温泉だったとは・・・ハハハハ」


 絶対に今考えたよね?

 後日談だが、ゴンザレスが掘り当てた温泉は評判がよく、私たちは騎士たちに感謝されることになった。


 ★★★


 3日目は倉庫整理を命じられた。


「役立たずのお前たちには、倉庫の整理を命ずる。途中で投げ出すなよ!!倉庫整理が終わるまで、他の研修はさせないからな!!」


 倉庫は酷い有様だった。埃っぽいし、どこに何があるか全く分からない状態だ。渡された帳簿との突合せから、始めなければならない。普通の騎士団員なら途方に暮れるところだろうが、これ以上の倉庫を整理した経験があり、OL時代に「倉庫の番人」という二つ名まであった私にとっては、通常業務に毛の生えた程度でしかない。それに荷物運びは無尽蔵のスタミナと馬鹿力を持つゴンザレスがいるからね。


 流石に1日では終わらなかったが、次の日には完璧に整理し、掃除も完了、新たな帳簿まで作成してやった。ジャンヌ隊長に確認してもらったところ、驚愕していた。


「こ、これは・・・隊長に就任して以来、手付かずだった倉庫が・・・信じられん」


「任務達成ということでよろしいですね?それと物品を横流ししている隊員がいるかもしれませんよ。横流しを隠ぺいするために、あえて担当者が倉庫整理をしなかったのかもしれません。分かりやすいように印を付けていますので、後でご確認ください」


「そ、そうか・・・任務は達成と認めよう。不本意ではあるが、合同野営訓練には同行することは許可してやろう」


 ここまでくると、次はどんな手を使ってくるか、逆に面白くなってきた。

 私も逞しくなったと思う。

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