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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第三章 旅立ち

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43 プロローグ

 早いもので、もう最終学年だ。

 思えば激動の2年だった。親友と呼べる仲間たちに出会えたし、忙しい日々を過ごしたけど、後になって思えば充実していたと思う。

 3年生は授業はあまりなく、職場研修というインターンみたいな制度があり、様々な職場体験をするようで、それがメインの活動になるみたいだ。卒業すれば、皆別々の道に進むことになるのだが、それを思うとなんだか、しんみりする。


 そして今日は新学期初日なのだが、異様な緊張感に包まれていた。ある者は期待に胸を膨らませ、ある者はただの興味本位で・・・

 実情を知る私やミリアにとっては、気が気ではなかった。

 なぜなら奴が帰って来るからだ。


 そう、金髪青目のイケメン王子、恐怖のマニュアル人間、「勇者」のジョブ持ちのダミアン王子が・・・


 ダミアン王子は、始業時間の5分前に教室に現れた。これは一昨年と同じ時間だ。1年ぶりの再会で、爽やかさはそのままに、少し逞しくなった印象を受ける。

 私たちが挨拶をすると、爽やかに答えてくれた。


「みんなおはよう!!久しぶりだね。また、よろしく頼むよ」


 これだけ見れば、完璧な王子様なんだけどね。

 ミリアが小声で言ってくる。


「久しぶりに登校するときの「マニュアルを作れ」って言ってくるかと思って、ビクビクしてたわ」


「流石にそれは・・・でも、一昨年のパターンに「みんな久しぶり!!」を入れ込むだけで、対応できると思うわ。まあ、あまり関わらないようにしようよ」


「そうね・・・ボランティア活動も学園主体だし、冒険者活動もそれぞれ個人個人でやっているから、接点がないかもしれないわね」


「そう願うわ。留学先の感想を聞かれたときの対応マニュアルなんて、留学先のことを全く知らない私たちが作れるわけがないしね・・・」


 ダミアン王子とは、なるべく関わらないようにということで、ミリアと合意した。

 新学期開始から1週間は平穏に過ぎた。私もミリアも他のメンバーも油断しきっていた。しかし、悲劇は突然訪れる。

 週明けの放課後に私たち派閥のメンバーは、学生部長に呼び出しを受けた。


 学生部長は、小太りで頭の薄くなった40代くらいの男で、胡散臭い印象を受ける。


「今週末のボランティア活動なんだが、君たちに任せようと思うんだ。ダミアン王子も慣れている君たちがサポートしてくれるほうがいいと思うんだよ。元々君たちが発案したことだし、殿下と旧交を温めるのもいいしね。青春の1ページという感じだろ?」


 たぶんコイツは、私たちに仕事を丸投げしようとしているんだろう。ダミアン王子関係の資料は膨大で、今まで作ったマニュアル全部を学園側に預けてあるから、その大変さが分かったのだろう。学生部長の後ろにいるスタッフは、疲弊しているように見えるしね。


 エスカトーレ様が答える。


「活動を引き継ぐとき、そういったことも込みで、受けてくださると約束されましたよね?今更それは・・・」


 流石のエスカトーレ様も素直に受ける気はないらしい。


 いいぞ!!エスカトーレ様!!言ってやれ!!


 しかし、学生部長は上手うわてだった。


「それはそうなのだが、恥を掻くのはダミアン王子なのだよ。殿下のことを思うとね・・・留学から帰られて、不安だろうし・・・何とかしてあげたいと私は思うんだよ」


 そう言われては、心優しく、ダミアン王子ラブのエスカトーレ様は受けざるを得ない。レニーナ様が気を利かせて言う。


「エスカトーレ様、お受けしましょう。みんなでやれば大丈夫です」


 まあ、この状態で断れないだろう。それにしても、この学生部長は曲者だな。これからも注意しておこう。


 そしてその日からマニュアル作りはスタートした。実際に取り掛かってみると、皆能力が向上しているし、過去のマニュアルもあるので、思ったほど時間は掛からなかった。


「過去のマニュアルの大部分は流用できますね。後は留学先でのエピソードなんですが、誰かダミアン王子に直接聞いて貰えると助かるのですが・・・」


 すると、エスカトーレ様が頬を赤らめて言った。


「わ、私がお聞きします。お、お茶でも飲みながら・・・・」


 次の日、早速エスカトーレ様とダミアン王子は学園のカフェでお茶をしていた。エスカトーレ様は楽しそうにダミアン王子の話を聞いていた。マニュアル人間でなければ、理想の王子様なんだけどね。



 ★★★


 急遽マニュアルを仕上げた私たちだが、ボランティア活動では予想外のことが起こった。

 トラブルもなく、順調に進んだのだが、子供との食事会で、子供から予想外の質問をされてしまった。流石にこれは予想できなかった。

 10歳くらいの少年が言った。


「僕の家は肉屋で、『親は肉屋を継げ』って言うんだ。僕は冒険者になりたいのに。どうしたらいいんですか?」


 こんなの答えようがない。正解も不正解もないし、私だって答えが見付からない。私やミリア、エスカトーレ様がオロオロしていると、殿下は自信満々に答えた。


「肉屋になるにしても、冒険者になるにしても、勉強は必要だし、体力も必要だ。計算できなければ、肉屋でも、冒険者でも馬鹿にされるだろ?時が来れば、神様が必ず君に道を示してくれるはずだ。だから、今できることを全力で頑張るんだ」


「分かりました。頑張ります」


 これって夢でも見ているのだろうか?

 王子になりすました影武者か?もしかして、洗脳されているのか?


 しかし、王子の快進撃はまだまだ続く。

 エスカトーレ様の助言なしでも、堂々としていた。まさに「勇者」といったところだ。


 活動の最後には、礼拝所に子供たちを集め、合唱の時に讃美歌の伴奏までしていた。これにはいつもお世話になっている神父様も感激している。


「ここまで、私たちに向き合ってくれた王族は初めてだよ。本当に素晴らしい」


 帰り道、ダミアン王子の話題で持ち切りだった。洗脳された説や実は影武者説のような陰謀論も出てくる始末だった。


 ただ、エスカトーレ様は涙ぐんでいた。


「殿下・・・本当に立派になられて・・・」


 嬉しいような、寂しいような、複雑な心境だろう。ひな鳥を見送る親鳥の心境かな・・・


 この時私は、ダミアン王子が留学して本当によかったと思っていた。この時は・・・



 因みにダミアン王子の現状を知った学生部長は、またまたボランティア活動を学園が取り仕切ることにしてしまった。別にいいんだけど、本当に節操がないなあ・・・

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