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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第二章 学生編

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37 ケンドウェル伯爵領 4

 いよいよウィード公爵夫妻とギールス商会長の視察の日がやって来た。視察の日程は3泊4日で、延長したいという申し出があれば、対応できるようにしている。

 最初にケンドウェル伯爵が代表して挨拶を行い、最初に私たちのときと同じように温泉に案内した。公衆浴場ではなく、急遽作った貴族向けの入浴施設だ。これは大変評判がよく、「この温泉だけでも来た甲斐があった」と言ってくれた。


 続いておもてなしの料理だが、初日は伝統的な料理で構成した。私たちがエルフの里や獣人の里で食べた料理を少しアレンジしただけだ。ウィード公爵夫妻もギールス商会長も私たちと同じ反応をしていた。


「グレートベアの肉がこんなに柔らかく・・・・」

「エナジーナッツが・・・・」

「サマスってすごく美味しいわ。果実酒にもよく合いますね」


 気を良くしたお母様が言う。


「今日は伝統的な料理ですが、明日からは創作料理もメニューに入れてますよ。どうぞお楽しみに」


 大満足の初日だったが、2日目の日中は狩りに出掛けることになった。当初、ケンドウェル伯爵は反対していた。


「狩りがもてなしになるのか?我々は生活するために仕方なくしているのだが・・・」


 エスカトーレ様が言う。


「伝統的な貴族の趣味の一つですよ。ケーブ学園でも授業がありまして・・・」


「そうか・・・私はケーブ学園に入学しておらんからな・・・そう思うと無理をしてレニーナを入学させて良かったと思っている」


 ケンドウェル伯爵は次男で、当主となる予定はなかったそうだ。というのもケーブ学園に入学した兄が、駆け落ち同然で、国外に出てしまい、仕方なく後を継いだということだった。だから、貴族としての常識があまりないし、交友関係も狭い。そこをアクツール商会に付け込まれたのだろう。

 レニーナ様をケーブ学園に入学させたのはいい判断だったと思う。


 狩りも成功だった。獣人の冒険者パーティーがこっそり、獲物を追い込んでいたのは内緒だけどね。

少し疲れの見えたウィード公爵夫人にレニーナ様がすかさず、エナジーナッツとマジカルナッツを差し出す。


「どうぞ、少し齧るだけでも体力が回復しますよ」


「まあ、お気遣いありがとう。本当に至れり尽くせりね。こんなに楽しい視察は久しぶりだわ」


「これなら国王陛下も満足されるだろうな。警備上の問題さえクリアできれば、進言しよう」


 今の状態で国王陛下に来られたらパンクしてしまう。エスカトーレ様がお茶を濁して、対応してくれた。


 それから、その日は趣向を変えて薬草湯に入ってもらい、ディナーのメインディッシュはサマスと魚卵のパスタだった。これも果実酒に合うと大絶賛されていた。


 そして3日目は、釣りでのおもてなしだ。

 クマルさんに聞くと「適当に餌を付けて放り込めば、釣れる」とのことだった。こちらも釣りで、もてなすと伝えたところ、驚かれた。


「なんでわざわざ面倒くさいことをするんだ?手掴みで獲ればいいのに・・・」


 文化の違いだろう・・・・


 この釣りも評価は高かった。釣った魚をその場で焼いて食べるだけだが、自分で釣った魚が一番美味しいのは、この世界でも同じだった。


 そしてこの日のディナーのメインディッシュは、グレートベアの肉をふんだんに使った特製カレーだった。まあ、味を解説するまでもなく美味しいに決まっている。ベル商会自慢のカレーにトロけるお肉がいっぱい入っているのだからね。

 もちろん最高の評価だった。


 そしてこの日は、サプライズで余興も行われた。

 まずは栗鼠人族の伝統のダンスだ。成人でも人間の子供くらいの身長しかない栗鼠人族は愛くるしく、それが宙返りをしたり、揃ってラインダンスをするのだから、十分お金が取れるレベルだった。そして更に盛り上がったのは、熊人族とゴンザレスによる「ナダス大会」だった。相撲と同じような土俵で行われ、蹴りとパンチはなし、参ったするか、場外に出すかすれば勝負が決まるという分かりやすいルールなので、初めて見る者も大興奮だった。


 ウィード公爵夫妻もギールス商会長も大満足のように見えた。



 ★★★


 予定では、本日帰還される予定だったのだが、もう一日滞在を延ばすことになった。気に入ってもらえている証拠で、滞在を延ばすのはよくあることだという。

 特に予定は入れてないので要望を聞いたところ、ウィード公爵は「この領のプラスになることを提案したいので、好きに領内を回らせてもらう」と言ってきた。

 一応、レニーナ様とエスカトーレ様が随行することになった。


 一方、ギールス商会長は新設される統合ギルドについて、ミリアから説明が聞きたいと言い出した。こちらは想定内なので、私、ミリア、お父様、レベッカさんで対応した。


「なるほどな・・・ミリアよ、よく頑張ったな。お前がここまでできるとは思わなかった。商業ギルドのマスターとして最大限の協力をしよう。それでだが、こちらの支部のギルマスの適任者はいるのだろうか?レベッカ殿?」


「ウチは誰でもいいぞ。商業ギルドから出してくれればいい」


「シャイロ殿、案はありますかな?」


「そうですね・・・推薦したい人物が一人いるのですが・・・」


 お父様が推薦したのは、長年ベル商会を支えてくれた番頭のオジールだ。最近、持病の腰痛が悪化し、急成長するベル商会において、後進育成のために引退したいと申し出ていたのだ。オジールの希望にも応えてあげたいけど、このまま引退させるには惜しいとお父様は言っていた。


「経験もありますし、能力も申し分ありません。温泉に浸かって、美味しいものでも食べながらのんびりやれと言っておきます」


「それで構いませんよ。サポートスタッフはウチから出させてもらいますしね」


 その日の夕食は少し趣向が変わっていた。サマスの燻製やフルーツのジャム、ナッツ中心のメニューだった。


「今日はあえて、新鮮な食材ではなく、保存食でメニューを組んでみました。保存食といっても馬鹿にできないことが分かりますよ」


 これも好評だった。


 ウィード公爵から全体の講評をいただく。


「素晴らしいもてなしだった。この領で一つ残念なのは、火酒を造っていないことだ。なので、我が領のドワーフの職人を派遣しよう。蒸留所の建設予定地も決めてある。費用もこちらで負担するので、どうだろうか?」


 ケンドウェル伯爵は頭を下げる。


「感謝してもしきれません。是非とも派遣をお願いします」


 上手くいったようだ。


 次の日、ウィード公爵夫妻とギールス商会長は帰って行った。


 その5日後には、私たちも王都に向けて出発した。領民総出で、見送ってもらった。

 ケンドウェル伯爵がレニーナ様に言葉を掛けている。


「レニーナ、いい友人を持ったな。もし、彼らが窮地に陥ったら、何をおいても助けてやりなさい。受けた恩は絶対に返す。ケンドウェル伯爵家の家訓だ」


「はい、お父様!!」


 忙しく、地獄のような毎日だったけど、意外に楽しかった。充実した夏休みが送れたと思おう・・・

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