表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第二章 学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/135

36 ケンドウェル伯爵領 3

 今年も地獄の夏休みがスタートしてしまった。

 財政状況をチェックし、融資関係の資料を作る。ミリアが言うには間違いなくギールス会長なら融資すると言うので、資料を作らされた。


 私以外も忙しく過ごしている。

 お母様は「料理人」としての本能が刺激されたみたいで、新メニュー開発に勤しみ。ロキ、ネスカ、レニーナ様はイカルス教官とともに栗鼠人族の集落で防衛戦術を指導している。レニーナ様が同行したのは、もちろん、イカルス教官と一緒にいたいからだ。


 また、ミリアの要望で冒険者ギルドと商業ギルドを統合したギルドを試験的に創設することになり、レベッカさんも承認してくれたので、商業ギルド用の資料も作ることになった。


「なるほどな・・・ミリア嬢もいいところに目を付けたな。冒険者ギルドと商業ギルドは昔から仲が悪いからな。協力すれば今まで以上にお互いの利益になると頭では分かっているが、どうも上手くいかん。この領で上手くいけば、真似をするところも出てくるだろう」


 エスカトーレ様は、貴族向けの保養地建設に向けてアドバイスをしてくれていた。温泉はあるし、料理も美味しいので、多くの貴族がやって来ると予想している。ギールス商会に融資の依頼をするのも、この件で助力してもらいたいからだ。流石のベル商会も、貴族相手の宿泊施設を運営するノウハウはまだないからね。


 ところで、ゴンザレスはというと熊人族伝統の近接戦闘術「ナダス」を習っていた。相撲に似た感じで、ゴンザレスには合っており、すぐに頭角を現し、熊人族からも認められていた。無理に仕事をさせて二度手間になることを考えて、黙認していたのだが、これが後に大きな利益を生むことになるのだった。


 ★★★


 早いもので1週間が経過した。

 レベッカさん、ニヤついた男性、エスカトーレ様、ミリアは一旦王都に帰還し、各種手続きや根回しをしてくれることになった。レベッカさんたちを見送って3日後、件のアクツール商会の商会長がやって来た。小太りで脂ぎった態度の悪い男だった。


「伯爵様、結論は出ましたかな?こちらとしては、早いほうがいいと思いましてね。今決断していただければ、追加で1万ゴールドを融通しますよ」


「そうだったな、忙しくて忘れておった。結論は出たぞ。シャイロ殿」


 お父様が歩み出る。


「我がベル商会がケンドウェル伯爵領に融資させていただくことになりました。そちらの債権はこちらで買い取りました。一括での返済は可能ですが、どうされますか?」


 アクツール商会長は、呆気に取られている。それもそうだろう。ミスリルやアダマンタイトを独り占めにできると思っていたのに当てが外れたのだから。


「こんな何もない領に融資をするなど、新進気鋭のベル商会とは思えんですな・・・」


 嫌味を言うのが精一杯だったようだ。

 悔しがって帰っていくアクツール商会長を尻目に私は早速仕事に取り掛かる。膨大な量だから、いくらやっても追いつかない。一分一秒が惜しいのだ。


 ミリアとレベッカさん用に急いでプレゼン資料を揃えたが、細かい調整はできていないので、最初から計算をやり直さなければならない。それに初めての統合ギルドは過去に例がなく、一からの作業になる。ここで生きたのは、意外にもダミアン王子のマニュアル作りだ。様々な事象を想定して対策を練る作業は、自然と私の能力を引き上げたと思う。

 まあ、もう一度やりたいかと言われれば、絶対に嫌だけどね。



 ★★★


 ケンドウェル伯爵領に滞在して、3週間が経つ頃、レベッカさんたちが帰還した。同行者も増えている。ギールス商会の関係者だ。

 ミリアが自慢げに言う。


「お祖父様も融資してくれるわ!!」


「それはよかったわ。すぐにケンドウェル伯爵に知らせないと!!」


 しかし、急にミリアの顔が曇り出す。

 尋ねるとエスカトーレ様が代わりに答えてくれた。


「少し困ったことになりましてね。私のお父様とお母様も視察に来たいと言われまして・・・・突然ですが、2週間後に視察が決定しました。そのときにギールス会長も同行する予定です」


 この忙しいときに、視察に来るだって!!


 すぐにみんなを集めて、ケンドウェル伯爵に報告する。融資が決定したという報に皆が歓喜したが、2週間後に視察が入ることを告げられると、崩れ落ちそうになっていた。流石のお父様も愚痴を漏らす。


「この時期に視察・・・寝るなってことかな?」


 レニーナ様が申し訳なさそうに答える。


「幸い、エナジーナッツはいっぱいありますから。それにコーカナッツも・・・」


 コーカナッツは興奮作用がある木の実だ。強壮剤の原料で、これも特産品の一種なのだが・・・・レニーナ様、それって暗に寝るなと言ってるのと同じですよ!!


 そんなことを思っていると、視線が私に集まっていた。

 これって私が仕切れってこと?

 まあ、流れからしてそうなるよね・・・・


「とりあえず、分担して対応しましょう。ウィード公爵夫妻の現場対応はダミアン王子で慣れていらっしゃるエスカトーレ様、レニーナ様を中心にエスコートしてもらいましょう。特産品の説明はお父様、総合ギルドの関係はレベッカさんとミリア、後は・・・・」


 思いつく限り、案を述べていくと、お母様が続く。


「私はもちろん、おもてなしの料理作りだね。それ以外はできないけど、最高の料理を作ってあげるよ。要望としちゃあ、エルフの里と獣人の里から料理が得意な者を集めてもらえないかい?」


「許可しよう。すぐに手配する」


 ネスカも続く。


「これから、獣人の里から入浴施設や宿泊施設建設に必要な人員を出してもらえないか、ロキ君と一緒に交渉に向かうよ。僕たちには好意的だから、多くの人が集まると思う。お礼は必要だろうけど」


「幸い「スナイパーボウガン」の評判がいいから、5丁ほど作ってあげれば納得してくれるよ」


 ロキも逞しくなった。

 ゴンザレスはというと・・・・


「俺は熊人族と一緒に資材搬送を頑張るぞ。鍛錬にもなるし・・・」


 ゴンザレスなりに役に立とうという思いが伝わってくる。


 そんな感じで、忙しいが充実したお仕事が始まった。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ