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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第二章 学生編

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34 ケンドウェル伯爵領

 ケンドウェル伯爵領への旅行は、エスカトーレ派閥のいつものメンバーである私、エスカトーレ様、レニーナ様、ミリア、ゴンザレス、ネスカに加えて、同行者もいる。

 まずは私の家族、お父様、お母様、ロキだ。ロキが開発したレーザーポインター付きのクロスボウの納品と、ケンドウェル伯爵領の窮状を知り、何とかしてあげたいとお父様が言い出したので、家族旅行も兼ねて同行したのだ。

 また、ケンドウェル伯爵領出身の獣人冒険者パーティーに護衛依頼を出した。里帰りするついでなので、快く引き受けてくれた。王都からケンドウェル伯爵領までは馬車で5日掛かるので、夜警も必要だから、どうせなら知り合いのほうがいいということで彼らに依頼をした。それに弓術教官のイカルス教官も同行する。こちらはレニーナ様の強い要望があったことは言うまでもない。


 そしてもう一組、ギルマスのレベッカさんと不自然にニヤついた顔の20代半ばの男性だ。レベッカさんは、ゴンザレスの付き添いということらしいが、連れの男の人が気になる。ミリアなんか、はしゃいで私に質問するようにけしかけてくる。


「あの人ってレベッカさんの彼氏かな?ちょっとクララ、聞いてきてよ」


「無理だよ・・・彼氏でも、違っても気まずいし・・・」


 結局、触れるのは止めようということになった。


 道中も楽しかった。食事は道中に現れた魔物を狩り、それをお母様と一緒に料理をする。私たちも夜警を手伝うことになり、みんなでワイワイと夜警という名の女子会が開かれた。そんなこんなで、予定通り5日後にケンドウェル伯爵領に到着した。


 ★★★


 ケンドウェル伯爵領は、ルータス王国北部の森林地帯に位置している。これといった特産品はなく、領都も町というか、村に毛が生えたくらいで、所謂、ザ・田舎という感じだった。領の主な収入源は農業と林業で、領内には獣人の里やエルフの里もあり、人口の3割が亜人と獣人だ。


 そんな領都の中で、少しだけ大きな屋敷があった。ちょっと大きな農家くらいの屋敷だが、歴とした領主館だ。レニーナ様の案内で領主館に入る。すると中から言い争う声が聞こえて来た。


「旦那様!!そろそろご決断を!!」

「しかし、エルフの里や獣人たちのことを考えるとそんなことはできん」

「でもこのままでは、財政破綻してしまいます。今ならアクツール商会が破格の条件で取引してくれます」

「それはそうだが、代々世話になっているエルフや獣人たちにそのような仕打ちはできん」

「とにかく、後1ヶ月以内には決断していただかないと・・・私はこれで失礼します」


 私たちに気付いたようで、初老の男性が近寄って来る。


「恥ずかしいところをお見せしたな。私が領主のレオニダス・ケンドウェルだ。レニーナが世話になっている。父親として礼を言う」


 それぞれが自己紹介をする。先ほど言い争っていたのは家令のワルスという男だそうだ。

 レニーナ様が言う。


「こちらのエスカトーレ様は支援を申し出てくれています。それに王都有数のベル商会のシャイロ会長も来てくれています。少し、我が領の現状を相談してみてはどうでしょうか?」


「有難い話だが、金を借りても返せる当てがない。我が領には特産品と呼べるものもないし・・・あるにはあるのだが、それが火種になっているのだ。詳しく話をすると・・・」


 要約すると、ケンドウェル伯爵領は貧しいながらも、自給自足に近い形でやってこれたそうだ。しかし、3年ほど前から状況が一変する。盗賊が頻繁に出没し、取引している商会や獣人の里が襲われ始めた。それで、それまで取引していた商会がケンドウェル伯爵領を訪れなくなり、更に獣人の里の復興などで、かなりの出費が必要になった。

 盗賊対策に乗り出すも、上手くいかず、現在取引している商会は、アクツール商会だけだという。


「現在、アクツール商会しか取引していないのだが、取引すればするほど赤字になる。安く買い叩かれ、高額な物資を購入せざるを得ない。なんとか切り詰めてやってきたが、それも限界に近い」


 レベッカさんが意見を言う。


「アクツール商会か・・・良い噂は聞かんな。普通に考えて、アクツール商会が裏で手を引いているのだろうが・・・」


 アクツール商会はロイター王国と魔王国との間の小競り合いの際に検挙された文官たちと懇意にしていた商会だ。王都から撤退した後、こんなところで悪さをしていたのか・・・


「そう言われるが証拠がない。他に取引してくれる商会もないしな・・・ここ半年は借り入れという形で、アクツール商会から商品を購入している。その利子も嵩むばかりだ。それで、アクツール商会は取引を持ち掛けて来た。鉱山の開発だ」


 ケンドウェル伯爵領では、獣人の里とエルフの里から税は取っていないという。しかし、毎年二つの里から税という形ではなく、お礼という形で貴重な鉱石であるミスリルやアダマンタイトが届くのだ。これも大きな収入源になっているのだが、アクツール商会は大々的にミスリルやアダマンタイトの採掘事業に乗り出そうとしているそうだ。


「鉱山開発が始まると、獣人やエルフたちが住処を追われる。それはしたくない。だが、鉱山開発をさせないと借金が払えず、ケンドウェル伯爵領は破綻する。そんな状態だ。レニーナに良くしていただいている皆にも迷惑が掛かる。申し出は嬉しいのだが、お願いする気にはなれんのだ・・・」


 一同、暗い雰囲気になってしまった。


「まあ、この領の問題は一旦忘れてくれ。何もない領だが、ゆっくりして行ってくれ。まずは、旅の垢でも落とされよ」


 そういうと領都の共同浴場に案内された。この領では、領主一家も領民たちと一緒にお風呂に入るようだ。私たちも浴場に入る。湯船につかりながら、レニーナ様が解説してくれる。


「この浴場は温泉を引いているんですよ。もっと山奥に行けば露天風呂とかもあるんですけどね。まあ、温泉があったところで、お金が入ってくるわけではないですが・・・・」


 いや、それってかなりいい観光資源じゃないの?まあ、ルータス王国にお湯につかるという文化は根付いてないから気付いてないのだろう。

 もしかして、この領はポテンシャルに気付いてないだけではないだろうか?

 


 私は提案する。


「せっかくなんで、領の色々な場所に連れて行ってください。もしかしたら、隠れた特産品が見付かるかもしれませんしね」



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