27 冒険者活動 2
騎士団や魔導士団への就職を希望している者たちは、まだよかった。実力主義で、明らかに実力が上のエスカトーレ様やゴンザレス、レニーナ様の言うことは聞くようになったし、ミリアやネスカもしっかりとサポートしてくれていることが、活動を通じて理解してくれたので、敬意を払うようになってくれた。目的もDランク冒険者の資格を取得するという共通の目標があり、3回目の活動あたりからは、それなりにまとまりも見られた。
しかし問題はまだ残っていた。
戦闘職ではない文官志望やご令嬢たちも冒険者活動に参加したいと言い出したのだ。これには様々な理由がある。単純にエスカトーレ様とお近付になりたい者やエスカトーレ様の覚えをめでたくしたい者、みんなが参加するから参加する者、自分の感知しないところで派閥活動が行われるのが気に入らない者など、その思惑は様々だった。
なので、総じてやる気が感じられない。戦闘職希望の者たちであれば、当初は嫌がった魔物の解体作業もDランクに昇格するためには必要だと説明すれば、渋々だがやってくれるようになった。しかし、今回の文官志望やご令嬢たちは、参加することが目的の者が多いので、全く手伝ってくれない。
堪り兼ねたレニーナ様が注意したのだが、何人かはあからさまに文句を言う。
「田舎貴族が偉そうに・・・・」
「同じ伯爵でもねえ・・・戦で武功を立てただけの貴族が何を言っているのかしら」
「まあ、貧乏な家は貴族でも大変ねえ・・・」
レニーナ様のケンドウェル伯爵家は、もともと男爵位だったのだが、三代前の当主が戦で武功を上げて、伯爵に陞爵したそうだ。文句を付けているのは主に伯爵家の三人のご令嬢だ。ミリアが言い返そうとそのご令嬢に向かって行こうとしたのだが、レニーナ様に止められた。
「私の家が貧乏で戦で成り上がったことに間違いはないわ。あの三人は頭を下げて派閥に入ってもらった経緯があるので、強く言えないのよ・・・文句があるでしょうけど、我慢してください」
こちらが我慢して対応していたのだが、その三人は更に付け上がる。
見るだけではなく、自分たちも魔物を討伐させろと言ってきた。伯爵家のご令嬢に怪我でもあったら大変だ。なので、一計を案じることにした。
ロキを呼び出し、討伐する魔物のランクを落とす。
「ロキ、ごめんね・・・色々事情があってね」
「大丈夫だよ、お姉様。罠の使用テストもしてみたかったし、丁度よかったよ。罠は使い捨ての割に材料費が結構掛かるから、僕にとっては有難いよ」
方針はこうだ。
討伐する魔物は、最弱クラスの一角兎。数だけは多く定期的な駆除が必要だ。放置しておくと農作物の被害が多く出る。この一角兎だけは、最下級のFランク冒険者でも討伐依頼を受けることができる。角での攻撃に気を付けなければいけないが、ほとんど危険性のない魔物なのだ。
それをコスパは悪いが、ロキが自作した罠に嵌める。ミリアとネスカが一角兎を罠に追い込む。更に力業だがゴンザレスがシールドバッシュ(楯による体当たり)で、エスカトーレ様が風魔法で一角兎をどんどんと罠に無理やり入れていく。
そこを参加者に仕留めてもらう。
男子学生のはナイフで、女子学生はロキ特製のクロスボウで仕留めてもらった。
解体については、スラム街出身の駆出し冒険者や冒険者志望の子供たちをアルバイトとして雇った。これはエスカトーレ様も、ボランティア活動の一環ということで、派閥の資金を使用することに同意してくれた。活動自体は上手くいったのだが、大きな問題があった。
ミリアが言う。
「一角兎討伐にこんな大金を掛けていたら、すぐに破綻するわね・・・個人的には派閥から追い出してもいいけど、そうもいかない事情もあるみたいだし・・・」
「そうね・・・更に悪いことに、一角兎の討伐が上手くいったから、また参加したいっていう人も多いからね。やればやるほど赤字になるし、戦闘経験を積みたかったエスカトーレ様の要望にも応えられないし、戦闘職希望の学生からも不満が出るだろうし・・・・」
あっちを立てれば、こっちが立たずという状態だ。それにご令嬢と戦闘職希望の学生の間で、諍いも起きている。戦闘が得意でない学生でも、物資の運搬や魔物の解体など、やれる仕事は多くある。協力してやれば、それなりに多くの魔物を狩ることができるんだけどね・・・
私とミリアが愚痴を言いながら、学園側に提出する報告書を作成していたところ、エスカトーレ様とレニーナ様、それにゴンザレスとネスカがやって来た。
エスカトーレ様が言う。
「問題が山積みというのはよく分かりました。私の思いつきから、貴方たちに苦労掛けて、申し訳なく思っています」
「そ、そんな・・・お気になさらずに」
レニーナ様も困り顔で言う。
「でもどうにかしないといけませんね・・・このままでは、活動自体が頓挫してしまいます」
するとゴンザレスがドヤ顔で言う。
「そんなの簡単だろ。殴り付けて言うことを聞かせればいいんだ!!それで俺は上手くまとめられたぞ」
これにはネスカがツッコミを入れる。
「ゴンザレス、いくらなんでも女子学生を殴り付けるなんてできないだろ?君の家では、女性を殴り付けて言うことを聞かせると教えられているのかい?」
「それは違うけど・・・・」
私が思うに、この活動に足りていないのは、絶対的なリーダーだ。エスカトーレ様は魔法の天才ではあるが、控えめな性格でリーダーには向かない。一番リーダーに向いているのはネスカだが、他国の子爵家の出身なので、それだけで言うことを聞かない者も出てくる。
そんな思いが独り言として、口に出ていた。
「絶対的なリーダーがいればなあ・・・」
「クララ、それはエスカトーレ様に失礼でしょ!!」
エスカトーレ様は笑って言った。
「リーダーなら私に心当たりがありますよ。ダメ元で依頼してみますよ」
次の日、エスカトーレ様が連れて来たのは、金髪青目の美少年、ルータス王国第三王子ダミアン・ルータス、その人であった。
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