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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第二章 学生編

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24 追試

「ゴンザレス!!なんで、魔法学の講義を受講したんだ!?お前は魔法がまともに使えないって分かっていただろうが!!宮廷魔導士団特別顧問の息子が魔法学を落第って、冗談にもならないよ!!受講しなければ、「レベルの低い講義は受けさせる必要はない」と言って誤魔化せたのに・・・」


「は、母上・・・これには事情が・・・・」


 やはりそうだと思っていたが、この美魔女はゴンザレスの母親だった。レベッカさんから話だけは聞いていたが、魔法バカの危険な人のようだ。「狂った雷」という二つ名が付けられるほどの実力者だが、魔法の研究が最優先で、家庭を顧みない人で、惚れた弱みで、騎士団長は何も言えないらしい。


「派閥の決定事項だと!?だったら、なぜ、そっちの娘みたいに、上手いことやって誤魔化さないんだよ!!恥を掻いたじゃないか!!」


「ご、ごめんなさい・・・」


 というか、私が魔法ではなく、スキルを使っていたことはバレているようだ。高名な魔導士ともなると、そんなことはお見通しだろう。


「まあ過ぎたことは仕方がない。一週間後に追試をしてもらうことになったから、何としても的に魔法を飛ばせるようにするんだね。それとそこの娘、レベッカとフレッドから話は聞いている。卑怯なことをして単位をもらおうとしたことに目を瞑ってやるから、ゴンザレスの面倒を見てくれ。できなければ、単位は取り消しだな」


「それって脅しですよね?」


「別にどう取ってもらってもいいけどね。これでも私は忙しいんだ。これで失礼するよ」


 又しても、ゴンザレスのお守りをさせられることになってしまった。

 勉強や作法などであれば、私が教えられるが、魔法の素人で、しかも全く魔法が使えない私にどうしろというのだろうか?


 それにゴンザレスのジョブは「重戦士」というゴリゴリの戦士タイプのジョブで、魔法は基本的に使えない人が多いそうだ。ただ救いなのは、母親の影響からか、身体強化魔法と電撃魔法を体にまとわせることはできるのだが、前に魔法を飛ばすことはできない。

 とりあえず、その道のプロに相談することにした。



 ★★★


 私とゴンザレスは、エスカトーレ様とともに冒険者ギルドに来ている。天才と評されたエスカトーレ様に指導してもらうため、冒険者ギルドの訓練所に来ていたのだ。訓練を見学に来たレベッカさんが言う。


「魔法というのは、感覚が大事なのだ。だから、人に教えるのは本当に難しい。私もゴンザレスに何度も指導してきたが、全く上達しなかった。クララ嬢、一流の魔導士にしてくれとは言わん。せめて追試を合格できるようにはしてほしい」


 ゴンザレスの訓練を見るが、体に大量の電撃魔法をまとわせているのは分かるが、一向に前には飛ばせないでいる。一旦休憩に入り、エスカトーレ様に感想を聞く。


「ゴンザレスさんの魔力はかなり高いですね。ただ、なんというか・・・不器用というか・・・何年もトレーニングをすれば、サンダーボールくらいは習得できそうですが、一週間では無理でしょうね」


「そうか・・・ではクララ嬢、難しいとは思うが何か策はあるか?」


「そうですね・・・こっそりと魔道具に頼るとかですかね・・・そうなると・・・・」


 結局、「武具職人」のジョブを持つ、弟のロキにお願いすることにした。ロキの前で、ゴンザレスが魔法を繰り出す。唸るだけで、全く魔法が前に飛ばなかった。


「試験では弓はダメなんだよね?だったら槍は・・・」


 ロキの案では5メートルの槍を用意して、それを的まで伸ばせば、魔法が的に当たるのでは?

 とのことだった。実際にやってみたところ、体にまとわせた電撃魔法は槍を伝わって、的までは届いた。


「実戦であれば、かなり有用なスキルではあるが、試験の趣旨からは、かけ離れているな。そもそも魔法学は遠距離攻撃を中心とする魔導士を養成するカリキュラムだ。だから、形だけでも魔法を飛ばせるようにしてほしいのだが・・・」


 レベッカさんの言うことはもっともだ。


 何かいい案はないだろうか?

 前世の知識も総動員して考え込む。しばらくして、ある案を思いついた。


 電気は水を伝わって進む。真水は電気を通さないが、少しでも不純物があれば電気を通す。だったらこれを利用しよう。私はロキにコンセプトを説明した。


「相変わらず、お姉様の発想には驚かされるよ!!本当に天才だ!!まあ、1時間もあれば試作品は作れるよ。水の魔石と杖、ちょっとした部品があれば大丈夫だし・・・」


 実際にできたものを見ると、何の変哲もない魔導士用の杖に水の魔石を取り付け、水の魔石にはうっすらと塩を塗っている。そして、水鉄砲の要領で水を飛ばし、的に当てるのだ。

 実際にやってみると水に電撃が伝わり、的は粉砕した。


「威力は凄いな・・・あとはバレないように偽装するだけだが・・・」


 エスカトーレ様が言う。


「私はあまり好きではないのですが、キザな魔導士は変に凝った詠唱をしてみたり、派手な動きをしますから、それで注意を惹きましょう。その指導は私がします。少し恥ずかしいかもしれませんが、我慢してください」


 ロキも意見を言う。


「一応、ぱっと見分からないように偽装はしますが、そうなるとそこそこお値段が・・・」


「それくらい私が出してやる」


 ゴンザレスがみんなに頭を下げる。


「みんなありがとう!!俺、絶対に試験に受かってみせるよ!!」


 感動的な光景のようだが、やることは不正すれすれだ。それも水鉄砲もどきの杖を使い、派手なアクションと詠唱で、誤魔化すことに主眼を置いたものだしね・・・



 試験の当日は、派閥のメンバーだけでなく、ロキとレベッカさんも見学に来ていた。

 ゴンザレスが的に向かい、派手に杖を振り回し、詠唱を始める。


「魔界より出し、雷よ!!魔王の怒りを喰らうがいい!!サンダーボルト!!」


 もの凄い電撃が的に飛んでいき、的を粉砕した。実際は、水を飛ばしただけなのだが・・・


 試験官たちが騒ぎ始める。


「ものすごい威力だ!!」

「流石はキャサリン様のご子息だ!!」

「将来は宮廷魔導士団だな」


 試験は文句なしの合格だった。キャサリン様も渋い顔はしていたが、話を合わせてくれていた。試験官と話をしている。


「ゴンザレスは膨大な魔力はあるんだけど、不器用でね。だから、基礎から学べるこの講座を受講するようにさせたんだ。感謝しているよ」


「もったいないお言葉ありがとうございます!!教師冥利につきます」


 このことは墓場まで持って行ったほうがよさそうだな・・・・



 試験官が帰った後にキャサリン様がやって来た。


「クララだっけ・・・礼を言うよ。これからもゴンザレスのことをよろしく頼むよ。それとその杖を10本ほど売ってくれないか?研究に使えそうだ」


 ロキが笑顔で言う。


「もちろんです!!お安くしておきますよ!!」


 ゴンザレスは試験に受かり、寄せ集めの材料で作った杖は高額で売れた。結果オーライといったところだろう。


 後日談だが、これ以後、私とゴンザレスは魔法関係の講義を取ることはなかった。だって、エスカトーレ様は魔法関係の講義は免除で、その時間は宮廷魔導士団で研修を受けることになったので、魔法関係の講義を取る必要がなくなったからだ。


 今回のことは卒業して、何年も経てば笑い話にでもなるだろう。

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