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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第二章 学生編

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23 定期試験

 ケーブ学園の休暇はかなり長い。

 4月~7月半ばまでが前期、10月~翌年2月までが後期となる。つまり7月の半ばから9月いっぱいまで、年末年始と3月いっぱいが休暇なのだ。これには理由がある。ケーブ学園のカリキュラムはそこまで密度が濃くない。本当に基本的なことしか教えない。もっと学びたければ研究課程に進学したり、高名な魔導士や錬金術師に弟子入りすることが推奨されている。

 なので、長期間の休暇を使って、自分の将来の目標に近付けるようにするのが、その理念なのだ。だから入学早々から、将来のことを見据えて派閥活動を始める学生が多いのだ。


 日本で高等教育を受けた私に言わせると、そこまでレベルは高くはないのだが、それでもテストはある。前期と後期に1回ずつあるのだが、ここでの注意点をミリアから受ける。


「クララ、くれぐれもいい点を取り過ぎないようにね。かといって、落第になるような真似はダメよ」


「私も分かってきたわ。仕方ないことだけどね・・・・」


 試験で私がトップを取ってしまった場合、多くの貴族の顔をつぶすことになるし、成績優秀で奨学金を狙っている平民にも恨まれることになる。私の場合、卒業後にベル商会で働くことが決定しているため、無理をして好成績を取る必要はないのだ。

 だが、落第については、危ない科目が二つあった。一つは武術の科目だ。学園では最低一つは武術を履修しなければならない。私としては多少は「料理人」の下位スキルが生かせる短剣術を選択しようと思っていたのだが、派閥の事情で弓術になってしまった。

 というのもレニーナ様が担当教官に熱を上げているからだ。弓術の担当教官は美形のエルフで、レニーナ様のお父様が統治するケンドウェル伯爵領にあるエルフの里の族長の息子さんだそうだ。子供の頃から面識があり、慕っているようだ。


 なので、派閥のメンバーは全員が弓術を選択することになった。

 私はこの世界でも、運動神経には恵まれなかった。何をどうしても、まっすぐに矢が飛ばない。今期の履修者一の問題児であることは自覚している。しかし、エルフの担当教官は優しかった。私に付きっきりで指導してくれる。本当に優しい良い教官だと思うが、レニーナ様の冷たい視線が痛すぎる。わざとできないフリをして、担当教官に取り入っていると思われてしまった。


 流石にこれは不味いと思い、対策を練った。

 もちろん、コツコツと練習するという発想はない。弓の性能に頼ることにした。幸い弟のロキは、将来有望な「武具職人」なので、この世界ではまだ見たことがないクロスボウを製作してもらった。異世界物小説の定番で、クロスボウで私も無双だ!!と思っていたがそうはならなかった。これでもほとんど当たらなかった。1年生の試験内容は10メートルの距離から5発中3発を的に当てれば合格なのだが、それも無理そうだった。

 なので、さらに改良を重ね、レーザーポインターを搭載したのだ。これはドラマでしか見たことがないが、レーザーポインターを的に合わせれば、私のような下手くそでも当たると思ったからだ。結果は思惑通り、100発100中だった。


 試験の日、満点の成績を叩き出したのだが、私が使用したクロスボウは注目の的になった。的だけに・・・


 特に食いついたのは、担当教官だった。根掘り葉掘り聞いてくる。


「是非、販売してほしいです。故郷の集落には、弓が苦手な小型種の獣人も多く住んでいるので、その者たちが使えたらと思います。どこで手に入れられるのですか?」


「これは私の弟が作ったもので、まだ販売は考えてないのです。一度弟や父と相談して・・・」


「それなら早いうちに是非!!いつにしましょうか?」


 そんな会話をしていると、ふと気付いた。レニーナ様の刺すような憎悪の視線だ。

 ヤバいと思った私は、こう答えた。


「販売価格については、それなりに高額になると思います。レーザーポインターには光の魔石を使ってますからね。なので、ケンドウェル領軍の装備ということで購入していただければ、こちらも有難いです。よろしければ、レニーナ様とお二人で商談に来られてはどうでしょうか?」


 いきなり話を振られた格好のレニーナ様だが、満面の笑みを浮かべて言う。


「イカルス、一緒に行きましょう。今週末はどう?クララさんもそれで調整してもらえるかしら?」


 この後、商談について私は、一切関係のない立場を取り、父と弟に丸投げした。

 だって、変に勘違いされて、後ろから矢で射抜かれたら、堪ったもんじゃないからね。



 ★★★


 もう一つの授業は魔法学だった。前期の初めは座学が多かったのだが、途中から実技が多くなり、試験は座学のペーパーテストと実技だった。実技がネックで、魔法を使えない私は落第を覚悟していた。魔法が使えないと言っても、魔法の天才であるエスカトーレ様に気を遣って強制参加だった。

 ただ、これは「料理人」の下位スキルである。「着火」と「冷凍」で何とか誤魔化すことができた。スキルと魔法は、魔力を消費する点は同じだが、違いは成長するかどうかだ。「着火」のスキルを例に取ると「雑用係」で覚えたての私とベテランの「料理人」のお母様も、性能は変わらない。しかし、魔法のファイアボールであれば、かけだしの魔導士とベテランの魔導士では、威力が全く違ってくる。

 バレないかどうか心配だったが、魔法学を受講する生徒は多くいて、パッと見はほとんど分からないし、宮廷魔導士に推薦されるほどの高威力ではないので、特に指摘されることもなく試験日を迎えた。


 そして、試験の日に事件は起こった。この日特別に試験の視察に来ていたのは、宮廷魔導士団の特別顧問だという。担当教官から紹介された女性は、茶髪の40歳近い女性だが、グラマラスでまさに美魔女だった。


「宮廷魔導士団特別顧問のキャサリン・ドナルドだ。今日来たのは、才能のある子をスカウトしに来たのさ。全力を出し切るつもりで魔法を撃ってくれ」


 この発言で、魔導士志望の学生は大盛り上がりで、テンションが上がっていた。私はというとそんなことは関係なく、試験だけ受かればいいのだけどね。


 試験は5メートルの距離から的に魔法を撃つもので、私は「着火」で的を少し焦がし、「冷却」で的を少し凍らせた。学生も担当教官も特に気にすることはなかった。魔法の威力でいえば、ギリギリ合格できるくらいだからね。注目すべきこともないのだろう。


 しかし、予想外のことがあった。

 特別顧問の女性が言う。


「試験の講評を行う。まずエスカトーレ・ウィード、アンタにはこの授業は必要ない。冒険者登録して魔物と戦うか、宮廷魔導士団の訓練に参加するかして、実戦的な魔法の使い方を学んだほうがいい。動かない的にいくら魔法を撃ちこんでも、実戦では役に立たないからね」


 歓声が上がる。


「エスカトーレ様は、やっぱりすごかった!!」

「実質スカウトされたってことか?」

「今から派閥に入れてもらおうかな・・・・」


 問題はここからだった。


「次に言う二人は、この後ここに残ってくれ。ゴンザレスとクララ・ベル・・・」


 盛り上がっていた雰囲気が静まり返った。

 ゴンザレスと一緒ということは・・・・私は、冷や汗が止まらなかった。

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