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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第二章 学生編

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15 事前準備

 ゴンザレスは問題だらけだった。

 計算を間違えたり、礼儀作法で失敗する原因は長年、優秀な兄や姉と比べられて卑屈になり、「何をやっても失敗する」という思い込みがあるように見られた。できないから卑屈になり、卑屈になるからできないという負のスパイラルに陥っている。


 家庭教師陣も問題だった。どうせやってもできないのだから、時間内で決められたカリキュラムだけこなさせようという感じだった。さらに悪いことにジョージ様やレベッカさんとほぼ同じカリキュラムをさせていたのだ。同じ指導をしてできないのは、自分たちの責任ではないという論法だろう。


 私は指導の問題点を資料にまとめ、フレッド様、ジョージ様、レベッカさんに説明をする。


「問題はゴンザレス様が自信を失い、卑屈になるような指導をされていたからだと考えます。案としては、教師陣を一新し・・・」


 説明の途中でフレッド様が話を遮る。


「流石はクララ嬢といったところだが、教師陣を変更することはできん。彼らもこの国最高峰の教師だからな。国のことを思えば、彼らの意識改革をしてほしいのだが、可能か?」


「私だけでは無理でしょうね。こんな小娘にあれこれ指摘されたのでは、教師の方々も素直に聞き入れないのではないでしょうか?」


 これにレベッカさんが反応する。


「それなら、私に考えがある」


 ということで、予想外のことになってしまった。

 教師陣を指導する人物が派遣されたのだが、その人物、それは・・・


「アンタたち!!ゴンザレスがついてこれてないの分かっていて、話を進めているだろうが!!分からなくなったところまで戻って、丁寧に教えてやんな!!」


「そ、それではカリキュラムが・・・」


「何を眠たいことを言ってんだい!!生徒の学力を上げてこその教師だろうが!!」


 この国最高峰の教師陣を叱り付けているのは、お母様だった。お母様は長年、ボランティアで孤児たちに読み書きを教えている。高等教育の経験はないはずだが・・・

 レベッカさんに事情を聞く。


「ムーサ殿は教え方が上手いのだ。それに指導力もある。これくらいガツンと言える者でなければ、教師陣の指導は無理だろうからな。因みに教師陣には、某国の高名な教育者と紹介している」


 お母様の教師たちへのお説教はまだ続く。


「そもそも、アンタらはゴンザレスを馬鹿にしてるだろうが?ゴンザレスは馬鹿じゃないよ。王国史のテストを見てごらんよ。ほぼ完璧じゃないか。ちょっと細かい言い回しや、計算が苦手なだけだろ。とりあえず、算術は分数からやり直させな。それでも分からないようなら、リンゴでも切って丁寧に教えてやりなよ!!」


 言っていることは正論だ。教師たちも言い返せずにいる。

 それにお母様の指摘したとおりに指導を始めるとゴンザレスの成績はかなり良くなった。3日後、再度様子を見に来たお母様は言った。


「この調子なら大丈夫だね。もう次からは来ないから、後はアンタたちでしっかりやんなよ。それと今日は少し趣向を変えたテストをするよ」


 お母様が始めたのは、ラーメン作りだった。お母様はゴンザレスに指示する。


「ここに1リットルの水がある。1パーセントの塩分濃度にしたい場合、何グラムの塩を入れたらいいと思う?ゴンザレス」


 ゴンザレスは自信をもって答えた。


「少しひっかけですね。単純に10グラムと答えたいところですが・・・簡単な方法は、水を990グラムにすれば、塩は10グラムですけど・・・・水が1リットルのままだと・・・・」


「もういいよ。そこまで分かってたら十分だ。料理に誤差はつきものだから、10グラムでいいよ」


 ゴンザレスは誇らしげに、教師陣は驚愕の表情を浮かべている。


「ということで、紙の上の勉強だけでなく、実際にどのようなところに役に立つかを教えてやることも大事なんだ。孤児なんて、給料をちょろまかされたくないから、必死で勉強するからね」


「「「はい!!分かりました、先生!!」」」


 最高峰の教師たちを指導するお母様って一体・・・・


 できあがったラーメンをみんなでいただく。いつ食べてもウチのラーメンは美味しい。


「これはウチの新商品だから、食い方に作法なんてないんだ。気にせず食べてくれよ」


「これは美味しい!!」

「本当だ・・・複雑な味が病みつきになる・・・」


「私も細かい作法とかは分からないけど、食材に感謝したり、相手のことを思いやったりすることが、マナーの原点だと思うんだ。その辺をアンタたちはしっかり教えてやんな!!」


「「「はい!!分かりました、先生!!」」」


 これを機にゴンザレスの学力とマナー関係は大幅に向上した。



 ★★★


 ゴンザレスの問題はまだあった。馬鹿みたいに力は強いが、その不器用さは剣術教師も呆れるくらいだった。それにこの剣術教師は何かにつけてゴンザレスを馬鹿にしていた。側で見ていても気分がいいものではない。聞いたところ、この教師は近衛騎士で、一般的に近衛騎士は普通の騎士を馬鹿にする傾向にあるという。

 そこで、私はレベッカさんとジョージ様にお願いをした。


「他ならぬクララ嬢の提案だ。受けることにしよう。しかし、そんなことでゴンザレスが成長するのか?」


「突き詰めれば、剣術も武術も勝てばいいんですよね?だったら大丈夫です」


 そして剣術の授業の日がきた。

 いつも通り、授業を始めようとした教師だったが、レベッカさんとジョージ様がストップを掛けた。


「剣術はもういいので、ゴンザレスには素手での戦闘を教えてもらえないか?それも実戦形式で」


「ゴンザレス殿は不器用だからな。型も碌にできんから仕方がないか。騎士は諦めて冒険者にでもなったほうがいいということかな?」


「貴殿は冒険者を馬鹿にしているのか?私が冒険者ギルドのギルマスと知っての発言か?」


 レベッカさんがヤバいくらい殺気を放つ。教師はその殺気に当てられて青ざめて言った。


「そういう意味ではない。騎士に向いていないということを伝えたかっただけだ」


「まあいい、早く指導を始めてくれ」


 素手での近接戦闘の模擬戦が始まった。教師も流石は近衛騎士といったところで、スピード重視で蹴りや突きのコンビネーションでゴンザレスを攻め立てる。


「何をやっても愚鈍だな・・・」


 かなり舐めていたのだが、状況が一変する。

 ゴンザレスは攻撃を何とか受け止め、教師を掴み、投げ飛ばした。レベッカさんもジョージ様も感嘆の声を上げる。

 そこからは、一方的な展開だった。ゴンザレスは教師の攻撃は全くダメージが入っておらず、何度も教師をぶん投げた。ボロボロになった教師は言う。


「も、もう訓練は終わりにしよう。流石に疲れただろう?」


「先生!!訓練はこれからですよ!!」


 ゴンザレスもストレスが溜まっていたのだろう、その後も教師を何度も投げ飛ばしていた。

 そして、その教師が気絶したところで、レベッカさんが使用人に合図をして、訓練場から連れ出させた。


「ゴンザレス、見事だったぞ!!冒険者を馬鹿にした阿呆を血祭りに上げて、胸がすく思いだ」


「そうだな。近衛騎士はプライドばかり高くていかん。実際に魔物と戦っているのは、一般騎士や冒険者なのだがな・・・それにしても、よくやった!!」


 レベッカさんもジョージ様もゴンザレスを褒めたたえ、ゴンザレスも満更でもないようだった。


「それにしてもクララ嬢の眼力は凄い。ゴンザレスが投げ技が得意なことを見抜いたからな」


 見抜いたのではなく、身を持って体験したからね。多分、社交ダンスでゴンザレスに投げ飛ばされた回数は、今回の教師よりも多い。


「冒険者ギルドで、訓練をよく見ますので・・・」


 適当に誤魔化した。


 そこからは、レベッカさんとジョージ様がゴンザレスと近接戦闘訓練を始めてしまった。流石のゴンザレスもレベッカさんやジョージ様をポンポン投げ飛ばすことはできなかったが、それでも何回かは投げ飛ばしていた。


 かなり長い時間兄弟で訓練と称したじゃれ合いをしていたところ、怒った様子でフレッド様がやって来た。


「お前たち!!一体何をやったんだ!?剣術教師の親から果たし状が届いたぞ!!分かるように説明しろ!!」


 何やらまた、トラブルに巻き込まれたようだ・・・・

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