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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
最終章

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131 エピローグ

 ピサロの父で現教皇のエビルスは、多種族共存派の代表でもある。信者の数も多く、教皇として盤石の地位を築いている。事前にネスカと打ち合わせをしたところ、この人物が一番の難敵だという。


「クララの発表を聞けば、各宗派の代表クラスは、こちらが何かしらの方法を使って、門外不出の開祖の手記を入手していることが分かると思う。どういう対応に出るか分からないけど、護衛には気を抜かないように指示しておく。もちろんクララのことは僕が守るよ」


 現実派は、カマラ氏の言葉はバランスの問題で、それなりに正しいという話にして決着を図ったようだ。元商人だけあって、交渉が上手い。それに手記を見ればもっと酷いことが、いっぱい書かれていたしね。


「文無しのごく潰しども!!お祈りはいいから、早く畑を耕せ!!祈っても収穫量は増えない。どうしても祈りたいなら畑でやれ。案山子の代わりくらいにはなるだろうさ」


 これは流石にここでは言えないよね。論文を支持し、その論文の作成者の口からヤスダがカマラ氏の行いを認めるという言質を取りたかったのだろう。敢えてそれに乗ることにした。そして、私を助けようと神父様が発言し、場を和ませてくれた。

 アウグスト団長も私たちに恩儀を感じ、ピサロを思って協力してくれていた。


 さて、ラスボスはどういう態度に出るのだろうか?


 現教皇のエビルスは話始めた。


「我も恥ずかしい話をしよう。我が多種族共存派となったのは、完全な打算だ。信者の数も多く、戒律も厳しくない。開祖であるドスク氏の手記にも他の宗派と違って大したことは書かれていない。多分、かなり適当な人間だったと推察される」


 これは本当だ。ピサロがスキルで出した手記にも「モフモフで楽しい!!」とか「みんなと食べると美味しいね」くらいしか書かれていなかった。ヤスダとも気が合ったみたいで、二人でやりたい放題していたようだ。そしてそれを現実派のカマラに諫められ、エランツとウスラルに温かく見守られるのが、彼らのパターンだったと推察される。


「つまり、我が多種族共存派となったのは、教義を自分の都合で、どうとでもできると思ったからだ」


 会場がどよめく。


「人間とは弱いもので、どうしても自分よりも下の者を作りたがる。それを我は利用した。運よく我のジョブはレアジョブである「探求者」だった。「探求者」は一つの物事に対して専門的な知識を得ることができるジョブで、教会職員としては、かなり重宝された。そこで思いついたのだ・・・」


 一旦エビルスは言葉を切った。聴衆は息を飲む。


「我が宗派は、明確に種族間の差別を禁止している。だから暗に、ジョブによる優劣を認め、自然と差別するような環境を作った。その策は効果があり、我は瞬く間に出世した。だが、この行いは悲劇を呼ぶ。教皇まであと一歩のところで、息子のジョブが判明した。詳しくは言わんが、不遇職だった。我は思った。これは天罰であると。だが、その時は教皇になることしか頭になかった。息子を勘当同然で放り出した。そのことは今でも後悔している」


 突然の告白に私は呆気に取られていた。こんなことを告白したら、もう教皇としてやっていけない。


「それからも恥ずかしいことだらけだ。資金を得るため、獣人をターゲットにした奴隷貿易に目を瞑っていた。論文で否定されてしまったが、カマラ氏の手記にもある「エスとエムの話」を曲解してな。つまり、我は教皇に相応しくないということだ。この場をもって、教皇の職を辞する」


 会場は騒然となった。


「最後に一言、不遇職の者の頑張りを見て、我は間違いに気付いた。逆境にも負けず、ジョブに胡坐をかいている者よりも多くの功績を上げた。功績を上げたから認めるのではない。そんなこと関係なく、愛し、認めてやればよかったと後悔している。新な道を歩むのなら、我のような後悔はしないでほしい。以上だ」


 私はネスカに目配せをした。ネスカが頷いたので、私は話始めた。


「ここで私の助手であり、共著者のオッド研究員を紹介いたします。顔に大きな傷があり、本人の希望で素顔を晒すことはできませんが、ご了承ください」


 戸惑っているピサロを無理やり壇上に上げる。しばらくして、ピサロは話始めた。


「私も不遇職と呼ばれるジョブ持ちです。私の研究結果では、ジョブよりも環境や周囲の人の愛情が大きく影響することがデータで出ています。同じジョブでも、こうも違うものかと思うくらいです。ですが、どんな環境でも何人かは自分を支えてくれる人はいるものです。私にもそういった人がいました。その期待を裏切る結果になったことは残念で仕方がありません。しかし、過去の失敗を反省し、これから新たな人生を歩んで行こうと思っています。今まで支えてくれた方々に深く感謝申し上げます」


 会場にいる多くの聴衆は、この意味は分からないだろう。でも、ピサロが伝えたかった人には伝わったと思う。



 それからの話になるが、神聖ラドリア帝国は大きく生まれ変わった。「神聖」が無くなり、ただの「ラドリア帝国」になった。というのもエビルスの証言にもあったとおり、教会関係者が国を牛耳る危険性を強く認識し、教会関係者が自主的にメサレムに移住することになったからだ。これで、ラドリア帝国は「神の国」と自称することもなくなった。

 皇帝はこれを承認した。元々事なかれ主義で、ほとんど側近たちの言いなりだった人らしい。自分の代になって、領土が飛躍的に拡大したので、「できれば、歴史に名を残す皇帝になりたい」くらいの思いしかなかったようで、説得も、「このまま領土を維持するだけで、歴史に名が残ります」と言うと、二つ返事で頷いたみたいだ。


 一方メサレムでは、アウグスト団長が教皇となり、宗派や国際情勢に関係なく、真理を探究すると息巻いている。一応小国家群に属し、メサレム市国という国名にはなっている。因みに前教皇のエビルスは、最下級の神官職になって、一から修行をやり直すことになった。


 まあそんなわけで、当面の大きな戦争は回避されたというわけだ。戦争がない状態を平和と定義すれば、世界は平和になったと言えるだろう。



 ★★★


 それから1年が経った。

 世界は平和になっていなかったのだ。というのも「星読み師」のネブラスカさんが、新たな預言を発表したからだ。


「聖女よ、世界を救え!!東の大陸へ行け。そこに想い人がいる」


 私が物語の主人公であれば、東大陸に向かうのだけど、業務多忙で動けない。なので、今日はこちらから東大陸に渡る者たちを見送りに来たのだ。場所は魔王国ブライトンの最東端イーストエンド、聖書によると海を割って歩いて横断したとあるが、実は500メートルも離れていない。年に何度かは、陸続きになることもあるという。


 ハイエルフの姉妹は言う。


「ヤスダが海を割って渡ったらカッコいいって言いだしたからだよ」

「ヤスダはイベント事が好きだったからね」


 まあ、ヤスダらしいと言えばヤスダらしい。


 東大陸に渡るメンバーだが、三聖女とその親衛隊約300名、それになぜかゴンザレスもいる。ナダスを普及しに行くそうだ。そしてピサロだ。見送りに来たアウグスト団長と父のエビルスと別れを惜しんでいる。


 そしていよいよ、出発の時が来た。

 干潮を選んだようで、東大陸まで僅か200メートルほどしかなかった。東大陸から渡って来た時のように三人娘はベンドラ様に乗っている。

 ハイエルフの姉妹が魔法を放つ。それは普通の風魔法だった。しかし威力が桁違いで、ずっと風が吹いている。原理は風魔法で海水を強引に吹き飛ばす感じだった。


「それでは皆さん参りましょう!!」

「希望の大地へ!!」

「楽しいことがいっぱいありますよ!!」


 三人娘はいつもどおり能天気だ。ピサロを見ると大変そうだった。


「ちゃんと3列に並んでください!!そこのリザードマンとフロッグ族!!勝手に泳がないで!!

 忘れ物?とりあえず、渡り切って、その後でベンドラ様かパミラ様に頼んで、取りに帰りましょう。この状態で、一旦帰るのは、イベント的に不味いです!!

 ちょっと!!先頭の人!!走らないで!!」


 これからピサロは地獄を味わうのかもしれない。でも少し楽しそうだ。


 ネスカが言う。


「名残惜しいけど、そろそろ戻ろうか?仕事が山積みだよ」

「そうね。優秀な助手のピサロもいなくなったし、論文の発表まで、しばらくは資料室に缶詰よ」

「本当にクララは缶詰聖女だね」

「うるさいな!!もう!!」


 私とネスカはビッテさんに乗り、イーストエンドを後にした。空から見てもまだ、聖女親衛隊は渡りきっていなかった。ピサロの苦労が伺える。


 場合によっては、私がピサロの立場になっていた可能性があることを考えると、他人事には思えなかったけどね・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!


後2話程、後日談が続きます。

新作を発表しましたので、是非読んでください。クララと同じ元OLの転生者ですが、こちらの主人公はクララと違って尖った能力の持ち主です。


勇者が来ません!!~物語の初期段階で勇者に剣術スキルを教える女道場主に転生しましたが、いつまで待っても勇者が来ません。だったら、こっちは好きにさせてもらいます。まずは剣術道場の経営再建から!!

https://book1.adouzi.eu.org/n4800kc/


あらすじ

大人気RPG「雷獣物語」の世界で、勇者に剣術スキルを教える剣術道場の女道場主エミリアに転生した元OLの物語です。前半はあの手この手で、勇者が来るまで、経営破綻目前の道場を存続させるためにエミリアが奮闘します。剣術道場版の細腕繫盛記ですね。

後半は、多くの陰謀に巻き込まれ、世界の謎を解明していきます。


この物語では、RPGあるあるの信じられないくらい強いモブキャラが多く登場します。エミリアも初期の剣術スキルしか使えませんが、その内の一人です。本人は気付いてませんけどね・・・

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