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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
最終章

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127 取調べ 3

 早速、取調べを始める。


「じゃあ、学生時代から話すとしようか。学生時代は勉学だけに明け暮れたね。とにかく色々な講義を受けた。軍事関係から宗教学までね。実技はさっぱりだったから、主席にはなれなかったが、それなりに優秀な成績で卒業できた。その成績を生かして文官になった。神官職はもううんざりだったからね。文官になって最初は、研修の意味もあって色々な部署を回らされた。慣例で、私を含めて新人は皆、雑用ばかりやらされていたから、私はかなり評価が良かったよ。特に魔法省での研修では、『このままここに居てくれ』と言われるくらい、最高の評価だった。しかし、お断りしたよ。延々と意味不明の魔法陣を転写させられるだけだったからね」


「私にも経験があります。私は2週間でしたけど」


「だが、魔法省での研修が一番役に立った。転写したものを長期間保存できる「長期保存」のスキルが発現したし、当時、研修担当だった魔導士からこう教わった。『雑用しながら仕事を覚えろ。空いた時間に少しは魔法陣の勉強をしろ。基本的な魔法陣が読めなくてどうする?』とね。その魔導士のお陰で、多少は魔法陣を読めるようになったし、雑用しながら、研修先がどんな部署で何の仕事をしているのかを注意深く観察するようになってね・・・」


 ピサロの話を聞いて思った。私も魔法陣のことを少しは勉強すればよかったと。でも、キャサリン様の元では絶対に嫌だけどね。


「研修も終わり、成績もよかった私は財務担当の部署に正式に配属された。配属当初も変わらず雑用をさせられた。まあ当たり前だ。いきなり予算の編成なんかは、やらせてもらえるはずはないからね。それから、1年が経った。ようやく認められ、それなりに仕事もさせてもらえるようになった。そこで上司の不正を指摘したんだ。しかし、結果は濡れ衣を着せられた。誰も庇ってくれなかった。本格的に仕事をさせてもらえるようになるのは、入庁して最低でも3年は必要だ。それから考えて、私は異例の早さで仕事をさせてもらえるようになった。それで、妬まれたのもあるが、人付き合いも悪かったからね・・・」


 何とも可哀そうな話だ。私もOL時代に似たような経験がある。


「それで、聖騎士団に異動になった。当時の聖騎士団長はアウグスト団長という非常に厳しい方で、文官からは人気がなかった。ただ、この人だけは、今までの上司と違ってジョブに対する偏見を持たなかった。それに不正を犯してここに来たというのに、こう言われたんだ。『お前がやっていようがやってなかろうが、我らには関係ない。ここに来たからには、仕事で示せ。剣を持てとは言わん。お前なりに戦え』とね。尊敬すべき上司だったよ」


 ピサロはアウグスト団長を信頼していたのは間違いないだろう。


「アウグスト団長時代は本当によかった。書類仕事や倉庫整理、物品の管理などで忙殺されていたけど、やりがいはあったし、他の団員からも慕われていたと思う。結局は幻想だったけどね・・・」


 アウグスト団長が退団されてからは地獄だったという。戦闘力がほぼゼロで騎士でもないことから、隊長たちが反旗を翻した。公の場で馬鹿にされることも多くあったという。


「昔からそうだったけど、この頃は本当に人間不信だった。隊長たちを失脚させるために荒探しばかりしていたよ。そのお陰で、団長としての地位は確立できたんだけどね。聖騎士団長としての地盤を固めるのに1年掛かった。隊長たちの弱みを探るために諜報部隊を増員したんだけど、思わぬ効果があった。かなりの情報が集まって来るようになった。そして、私はこの情報を利用することにした。まず目を付けたのは獣人の国だ。もう今では国とは呼べないがね」


「それについては、酷いと思います。獣人から自治権を奪い属国にするなんて・・・」


「そういう意見もあるが、私はそう思わない。まずは私の話を聞いてくれないか?」


 ピサロが言うには、獣人の国を属国にしたのも理由があるという。


「最初は攻め込もうなんて、これっぽっちも思っていなかった。知っていると思うが、戦争ってのはお金が掛かるからね。だけど、長年の敵国だし、毎年大勢の難民が流入して、問題になるしで、何もしないわけにはいかなかった。そこで、とりあえず情報収集することにしたんだ。そうしたら、獣人の国の内情は酷いものだった。獅子族や虎人族などの戦闘に強い種族が、小型種や温厚な種族を虐げていた。それに種族間で昔から争いが絶えなかった。この情報に目を付け、工作活動をすることにしたんだ。比較的話ができる種族を中心に交易で税を優遇したり、食料支援なんかもした。この時は神聖ラドリア帝国の国境沿いの種族を懐柔して、防波堤になってもらおうと思っていただけなんだが・・・」


 ピサロはそこで言葉を切った。


「ここで誤算があった。神聖ラドリア帝国と活発に取引していた種族が攻められた。急激に発展したことを妬まれ、危機感を抱いたのだろう。仕方なく、援軍を出し、懇意にしていた種族を守った。これが初めての出兵だ。散発的に攻めて来る者たちを追い払うだけだったので、大きな被害を出さなかった。しかし、何とか対策をしないといけなかった。私は戦争大好き人間ではないから、なるべくこちらが戦火に巻き込まれないようにと思って、ある工作をすることにした」


 ピサロが考えた工作は、獣人の国の二大勢力である獅子族と虎人族を仲違いさせることだった。工作は上手くいき、神聖ラドリア帝国と懇意にしている種族を攻めるどころではなくなったという。


「酷いもんだったよ。獅子族に大量の剣を卸したと思えば、虎人族に大量の槍を売りさばく。鉱山の利権と引き換えに双方に食料を融通したものだ。ここで私も神聖ラドリア帝国もあることを学んでしまう。戦争はお金が掛かる。しかし、それは当事者だったらだ。戦争に参加しない周囲の国は儲かるということをね。この考えが、今後の神聖ラドリア帝国の基本戦術になっていく」


「そ、そんな・・・それは流石に酷いと思いますけど・・・」


「君がそう言うのも理解できるが、なぜ工作がこんなに上手くいったと思う?それは、獣人の協力者が大勢いたからだ。長年虐げられてきた恨みは消えないからね。それに裕福になったからって、急に攻めて来たのはあちらのほうだからね。どちらが悪いとも言えない」


「それは・・・」


 私は言葉に窮した。こんなの答えが出ない。


「それからの話をすると、別の種族から要望があった。神聖ラドリア帝国に統治してほしいとね。獅子族と虎人族が激しく争った所為で国土は荒廃し、それぞれに従っている種族は食料を徴発されたり、徴兵されたりもしていた。だったら、それなりに自治権を与えてもらえる条件で属国となることを求めた種族が増えた。結局、獅子族と虎人族、それに従う種族以外は恭順することになった。そして、獅子族と虎人族を各個撃破することになった。事前の工作でほとんどの者を取り込んでいたから、大して戦闘にならなかった」


 この後もピサロの快進撃が続く。

 同じ要領で、長年の悩みの種だった遊牧民族を平定する。こちらも部族同士の仲が悪かったので、獣人の国と同じ工作が有効だったという。こちらも戦闘はあったみたいだが、基本的に砦を築いての防衛戦がメインだったので被害はほぼゼロ、属国と言っても自治権は与えているから統治も問題なく進んだようだ。


「その後も同じ要領で、小国家群の都市を2つ取り込み、南部の小国も属国化した。破竹の勢いだったよ。これで、南部に憂いがなくなったことから、我が国は欲望を剥き出しにすることになる。それに戦闘は連戦連勝、騎士団も勘違いする。末端の兵士が「俺たちは大陸最強だ!!」と酒場で叫んでいたのを聞いてぞっとしたよ。決して最強なのではなく、弱り切った相手をただ作業のように打ち倒しただけだったのだがね・・・」


 そんな話をしていたところにネスカが呼びに来た。今日の取調べは終了ということだ。


「あっという間だったね。明日は、神聖ラドリア帝国の転落編ということで話してあげよう」


 看守に連れられて、ピサロは取調室を後にした。

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