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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第六章 代理戦争

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108 幸せのスライム作戦

「幸せのスライム作戦」と名付けられた作戦を遂行することになる。私の思いつきから生まれた作戦なのだが、善い行いをしている教会や団体をピックアップして、空から贈り物を届けることにしたのだ。この作戦は主に情報分析班、地上部隊、空中部隊に分かれている。情報分析班は私、ネスカ、ミリアが中心になり、教会や団体の調査を行う。その分析結果を基に活動を開始するのだ。


 一番最初に思い浮かぶのは、私がジョブ鑑定を受けたあの教会だ。今でもケーブ学園の生徒がボランティアに多数訪れているし、神父様の功績も偉大だ。会議の結果、満場一致で最初に作戦を行う教会に決まった。


 今回の地上部隊はエスカトーレ様、レニーナ様、ミリア、ゴンザレス、そしてダミアン王子で、空中班は三人娘とドラゴン御一家とハイエルフの姉妹、ビッテさん、それに私とネスカだ。まず、エスカトーレ様以下で普通のボランティア活動を教会で行ってもらった。準備が整ったらこちらに連絡が入るのだ。


 しばらくして、ミリアから通信の魔道具で連絡が入る。


「こちらミリア、最後のイベントが終了した。作戦を決行されたい」

「クララ了解!!作戦開始」


 ドラゴン御一家とビッテさんに分乗した私たちは教会に近付く。ベンドラ様たちが認識疎外の魔法を掛けてくれているので、よく見ないと気付かない。まあ、空をじっと見る人なんてまずいないからね。

 ネスカが三人娘に指示をする。


「じゃあ撃ってください」


「さあ、聖女の恵みですわ」

「幸せをどうぞ」

「明日に幸あれ」


 落ち着いた様子で三人娘とハイエルフの姉妹が、スライム発射装置でスライムを乱射する。すると辺りは眩しく奇麗な光に包まれた。シャイニングスライムを大量に投下したからだ。更にゴールデンスライムとジュエルスライムを投下する。辺りが砂金や宝石の欠片でいっぱいになる。ここで地上部隊の出番だ。エスカトーレ様とダミアン王子が集まっていた民衆に語り掛ける。


「皆さん!!これは奇跡です!!日頃の献身的な活動が神様に伝わったのかもしれません。ああ、何という幸運なのでしょう!!」

「そうだ!!これは王族として大変誇らしい!!弱者救済!!多種族共存!!それが答えだ」

「見てください王子!!あれは何でしょうか?」


 エスカトーレ様の台詞に合わせて、それっぽい宝箱を投下する。ロキが開発した小型パラシュートを取り付けているからゆっくり落ちていく。

 上手く地面に着陸した。従者役のミリアが宝箱を開けて叫ぶ。


「なんと凄い!!ベル商会の缶詰やギールス商会の燻製肉も入っています。それにたくさんのお菓子も!!それに手紙が・・・」


 こんなところでさり気なく、商品のPRをするのは凄いと思う。


「読みますね。「善い行いをすれば善い事が、悪い行いをすれば悪い事が起きる。私は貴方たちの活動を応援してます。なので私がよく食べている商品を送ります。ヤスダより」ああ・・・ヤスダ様だ!!ありがとうございますヤスダ様!!」


 市民たちは大騒ぎになる。何も知らない神父様は言う。


「奇跡です!!本当にありがとうございます、ヤスダ様!!」


 教会の一帯は幸せな空気に包まれた。この事件は「ケーブの奇跡」として語り継がれることになった。三人娘とハイエルフの姉妹も満足している。


「感謝されるっていいね」

「逃げ惑う人を見るのも面白いけど、こういったこともいいかな」


 ここで少し、言い訳をしておく。私たちは嘘は一言も言っていない。

 エスカトーレ様もダミアン王子も嘘はついていない。自分の感想を言っただけだ。それを市民たちが勘違いしたにすぎない。それにヤスダの手紙も三人娘がヤスダなのだからセーフでしょ?絶対神ヤスダとは言ってないし、実際、缶詰もお菓子も三人娘は好きだからね。


 ★★★


 こんな感じで、同じような活動を定期的に行うようになった。神聖ラドリア帝国や小国家群でも神聖ラドリア帝国寄りの国では、地上部隊は魔王軍の特殊部隊を使って、軽く噂を流すのみにした。それでもかなりの効果があった。

 善行をしている教会を調べている過程で、私は、かなりヤスダ教の現状に詳しくなってしまった。そこら辺の神学者よりもだ。ヤスダ教はエランツ派以外にも多くの宗派があり、代表的なのが、庶民派、多種族共存派、現実派だろう。エランツ派以外はそれなりに仲良くやっている。


 例を挙げると他種族に対して、多種族共存派は「なるべく仲良くしたほうがいい」と説いているが、現実派は「無理に仲良くしなくてもいい」と説いている。一見違う主張に見られるが、同じことを言っている。多種族共存派はあくまでも、「なるべく」と主張しているし、現実派も「仲良くしてはいけない」とは言っていない。要はバランスの問題なのだ。基準をどこに置くかで違ってくるが、それでも折り合いが付けられるレベルなのだ。


 だが、エランツ派は違う。声高に亜人、獣人の排斥を訴えている。これはどうもエランツの求めた真理とは違う気がする。ヤスダの手記や聖書を読む限り、「神を冒涜して信仰しない者や嘘吐き、泥棒とは付き合ってはならない」とは主張しているものの、一言も他種族の排斥を訴えてはいない。どこかで誰かが教義を捻じ曲げたと考えるのが自然だろう。

 ヤスダの手記によると、エランツは自分にも他人にも厳しい人物だったようだ。厳しく自分を律し、余計なことを考えずにひたすら修行に励んでいたようだ。曲がったことは大嫌いで、浮気したブライトン王も許せなかったのだろう。ヤスダの手記を読む限りでは、融通の利かない頑固者ではあるが、そんなに悪い人ではなかったように思う。


 もしかしたら、その辺に解決の糸口はあるかもしれない。具体的に何をどうするかは思いつかないけどね。


 そんなとき、ネスカが声を掛けて来た。


「クララも忙しそうだね。実は急遽魔王軍の戦略会議に出ないといけなくなって、今日の作戦は参加できないんだ。クララも忙しそうなら、別の日に・・・」


 言い掛けたところで、ハイエルフの姉妹が声を掛けて来た。


「忙しいなら、私たちだけでやってくるよ」

「そうだよ。2箇所に撒くだけでしょ?それにビッテだけで大丈夫だしね」


 コイツらだけで行くのか・・・


「そうですわ!!」

「エランツ派の施設に鉄槌を加え、多種族共存派にご褒美を与えるだけですからね」

「そうです。朝飯前です」


 かなり不安だが、ハイエルフの姉妹、三人娘、ビッテさんだけで行かせることにした。この決断が大きな事件の始まりだとも知らずに・・・


 ★★★


 作戦を終えて、帰還した彼女たちの様子がおかしかった。聞いても、何でもないと言う。どうもおかしい。そんなとき、堪り兼ねたビッテさんが土下座してきた。


「ごめんなさい・・・私たちは大変なことを・・・エランツ派の施設にご褒美を、多種族共存派の施設に嫌がらせをしてしまい・・・」


 言い掛けたところで、ハイエルフの姉妹に殴られた。つまり、逆にしてしまったということか・・・


「元はと言えば、お前が間違えたんだろうが!!この馬鹿ドラゴンが!!」

「そうだ!!浮気野郎を信じた私たちが馬鹿だった!!ヤスダに謝れ!!」


「ごめんなさい、ごめんなさい。反省しています」


 もう浮気は関係ないだろうに・・・


「まあ・・・間違いは誰にでもあるものですわ」

「そうですよ。間違いを犯したことよりも、正直に名乗り出ないことの方が罪ですわ」

「もうその辺で許してあげましょうね」


 というか、お前らはビッテさんが自白するまで、隠そうとしてたよね?それに何か他人事のように言っているし。


 とりあえず、会議を終えて帰って来たネスカに説明する。


「すぐに対処法は思い浮かばない。とりあえず、魔王様に報告する。しばらくは作戦中止だ」

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