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【祝!300万PV】転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話  作者: 楊楊
第六章 代理戦争

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105 幕間 聖女とヤスダの物語

 スライム投下作戦は、メサレム潜入班の情報を精査しつつ、ペースを落しながら続けていた。

 そんな中、可哀そうな被害者が出てしまう。天使族のルシルさんだ。三人娘とハイエルフの姉妹が嵌っているのは、演劇なのだが、聖女ヤスダ物語を作ると言い出した。天使族で、ヤスダに顔がそっくりのルシルさんが主演に選ばれるのだが、演技指導が厳しすぎる。


「何でそんなこともできなの?ヤスダはそんなことしないよ!!もっとこう明るくね」

「そうだよ。というか、それでよく女優を名乗れるね」


「す、すいません・・・ウッウッウウウ・・・」


「泣かない!!ヤスダは泣かないよ」

「いいこと思い付いた!!ヤスダが泣いた話を入れよう・・・駄目か・・・ビッテがまた落ち込むね」


 ルシルさんは念願の主演女優で公演ができることを喜んでいたのだが、ハイエルフの姉妹の演技指導が厳しすぎて、自信を失っている。これはルシルさんの演技が下手だからではない。ハイエルフの姉妹にヤスダに対する明確なイメージがないからだ。それに急に台本を変えたり、思い付きのエピソードを入れたりするので、芝居全体のストーリーが矛盾だらけになる。だから芝居は上手く行かず、半分以上が八つ当たりに近いのだ。


 それに輪を掛けて、三人娘が自分たちも出演させろと言い出す。もう無茶苦茶だ。事実を忠実に再現した作品にするのか、創作を交えながら何かを訴える話にするのか、それさえも決まらない。まさに迷走状態だ。

 小国家群から有名な脚本家を集めたが、みんな匙を投げてしまっている。誰かが、何とかしてあげないと・・・


 この時はまだ、私は他人事だった。悪魔の声を聞くまでは・・・


「あれ?クララじゃん。そうだ、クララに台本を書いてもらおう」

「いいね。クララはヤスダに詳しいからね」



 ★★★


 私の地獄の日々が始まった。

 私は「雑用係」であっても脚本家ではないのだ。なのに監督までやらされることになった。通常業務をこなしながら、そんなことをするなんて過労死してもおかしくはない。しかし、私がやらなければ、ルシルさんの女優生命が絶たれてしまう。なので、疲れた体に鞭を打って頑張ることにした。


 まずやったのは、テーマを決めることだ。

 話がまとまらない原因の一つにハイエルフの姉妹の思いつきがある。たとえるなら、おばちゃんの井戸端会議と同じで、急に話題が変わる。それも何の脈絡もなくね。

 だから、誰が見ても分かりやすい東大陸から中央大陸に海を割って、渡って来るシーンを中心に話を構成することにした。

 人族の中では世界創造の話として、魔族には国家の建国物語として、この話は有名だ。実際にブライトン王とヤスダ、それにドラゴン御一家とハイエルフの姉妹がやったことなので、彼女たちもイメージしやすいと思ったからだ。

 そして、何か言われても言い返せるだけの資料も揃える。


 問題は三人娘だった。ヤスダの生まれ変わりだが、当時はヤスダなので、三人娘なんて存在しない。なのに架空の人物として、それも主要キャラにしなければならない。結局、三人娘を聖女という新たな設定を作り、ヤスダとブライトン王を神様設定にすることで対応した。


 問題はブライトン王だけど・・・こちらは演技力よりもハイエルフの姉妹の演技指導に耐えられる精神力で選ぶことにした。私が知っている限り、最強のメンタルを持つのはゴンザレスしかいなかった。ゴンザレスに出演依頼をすると条件付きで、了承してくれた。


「ナダスを劇に入れてくれ。そうしたら、やるぞ」


 仕方なく、意味不明にナダスをするシーンが挿入されることになった。

 監督も脚本も主要キャストも、すべてが素人という状態なので、受けてくれる劇団なんてなく、全ての出演者を自前で用意することになった。


 そんな状態で1ヶ月が経過した。そして何とか、高校の文化祭レベルの演劇が完成したのだった。



 ★★★


 太古の昔、東の大陸で虐げられていた民たちがいた。人族、魔族、獣人、亜人・・・種族は様々。それに心を痛めた尊き三人の聖女。毎日の祈りが通じたのか、ドラゴンに乗った天使のような神ヤスダ、強く逞しい神ブライトンが彼女たちの前に舞い降りた。


 出演者

 三聖女・・・三人娘

 ヤスダ・・・ルシル

 ブライトン・・・ゴンザレス

 ドラゴン・・・ビッテ

 人族、魔族、獣人、亜人たち・・・聖女親衛隊のみなさん


 神ブライトンが言った。

「海を渡り、西に進め。そこに安住の地がある」

 神に導かれた三聖女と民たちは西へと進む。そこに現れたのは広大な海。

 神ブライトンは言った。

「ナダスを捧げよ」

 民たちは、力の限りナダスに打ち込む。すると海が割れ、道ができた。神ヤスダは言った。

「恐れずに進みなさい!!そこに安住の地があります」

 三聖女が言う。

「「「さあ、行きましょう!!私たちには神がついています!!」」」

 神と三聖女に導かれた民たちは、新たな一歩を踏み出したのであった。


(ハイエルフの姉妹の魔法とロキとドシアナの魔道具でそれっぽい演出になりました)


 ★★★


 公演は予想外の大ヒットとなった。劇の内容よりも、三人娘が出演するというだけで盛り上がるし、海を割るシーンは、前世のプロジェクションマッピングみたいな感じにしたので、それだけで大盛り上がりだった。台詞少な目、分かりやすい派手な演出が功を奏したのだ。

 また、ナダスの人気も高まり、ゴンザレスは嬉しそうだった。


 厄介なことに次回作を作るように指示されているのだが、それは何とか、のらりくらり躱している。

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