戦国時代で可能なチート覚書:銃火器編その4
半年以上放置してしまった…
色々とネタも集まったので投稿再開。
続き。
以下テンプレ。
A:知識さえあればできるもの
B:知識さえあればできるが、法制度、慣習などを解決する問題があるもの
C:知識さえあればできるが、地理的制限があるもの
D:ある程度加工技術があれば当時の技術で実行可能なもの
E:転生、転移者の寿命内の技術開発で可能なもの
・散弾 D
感想欄で話題に出ていたので一通り調べてみた。
海外の前装式散弾銃の動画を見ると下記のような図で散弾を装填していた。
muzzle loading shotgunでyoutubeを検索すると大体の手順が分かる。
←銃手側 銃口側→
{}■■{}∵∴||
{}柔らかいフェルト状のもの
■火薬
∵散弾
||布製のパッチ
これは散弾が銃腔内で暴れて銃身が傷付かないようにするための措置と思われる。
実際に現代の散弾銃のシェルでもおおむねこの構造になっている。
動画を見る限りでは装填に時間が掛っていたため、戦場で運用するならば
銃身が傷付くのを覚悟でフェルトや布のパッチを省略して、紙薬莢で一まとめにして銃口に突っ込ませたほうがいいだろう。
また既存の火縄銃で散弾を撃つ場合は、現代の散弾銃と異なりチョークが装着できないため、有効射程はかなり短くなる。
敵が切り込んでくる直前の阻止射撃に用いると言う形になると思われる。
ただし、これは相手に竹把の防御がない場合に限る。
竹把は弾が大型化すると効力がなくなるが、散弾のように小さい弾をばら撒く場合はその防御力を発揮するため。
また、小さい散弾を量産するのはこの時代だと非常に手間がかかるため、技術チートで量産方法を確立する必要がある。
融解した鉛を高い所から垂らして落下中に球状に固まらせて、水の中に落として変形しないように受け止めれば簡単に量産できるようになる。
散弾の量産方法は発想がチートであって、特別な技術は必要ないと思われるため、技術判定はD。
・迷彩服、ギリースーツ B+E
迷彩服は目立たない色で軍服を染めることで撃ち合いの時、敵の命中率を低下させたり、奇襲時に被発見率を低下させる効果がある。
色としてはカーキ色かオリーブドラブ辺りがベターと思われる。
化学染料がないため草木染めを用いてこの色にする場合、前者は楊梅の実を鉄媒染で、
後者は梔子の実を鉄媒染で染めればオリーブドラブに近い色になる。
鉄媒染液は錆びた鉄、水、酢を混ぜて、水が半分くらいになるまで濃縮すればできる。
ただし、甲冑は顔料で迷彩色を施す必要があるため、これがコスト上大きな問題となる。
戦国時代の甲冑で赤、黒、金銀が多かったのは、顔料のコストの問題。ぶっちゃけると赤と黒は安い。
迷彩色を採用する場合は甲冑による防御は捨てたほうがいいかもしれない。
ギリースーツは網の服やマントに草木を括り付ける形がいいと思われる。
括り付ける草木は植生にあったものを選ばないとかえって目立ってしまうので注意。
単純にこの時代にある蓑でも偽装効果はあったみたいだ。
草木に紛れる以外にも頭から肩にかけての人間のシルエットは山野では目立つため、これを隠す効果があったためと思われる。
重くてかさばるため、山野に隠れての待ち伏せや少数の奇襲のための浸透と言った形の限定的な運用に止まるだろう。
戦国時代の軍制~戦列歩兵の軍制の段階では指揮に支障をきたすため、導入する場合は猟兵のような散兵的な運用をする部隊から行った方がいいだろう。
全軍で導入する場合は小隊~中隊規模の部隊に大きな裁量を与え、視覚ではなく信号ラッパのような音で軍を指揮をする必要があると思われる。
そして最大の問題が戦国時代では指揮官が指揮を執るためだったり、兵や武士が個人の武功を見てもらうために目立つ甲冑や旗を装備していたと言う点。
もし、この迷彩部隊を運用する場合は、個人の武功に囚われない観既存の軍事体系とは全く異なる兵や指揮官をイチから育成しなくてはいけないだろう。
当時の軍制度を根本から改良する点で技術判定はB、軍楽やラッパのような楽器が必要な点ではEとする。
・狙撃スコープ E
銃の上に望遠鏡をマウントして、敵が見やすくなって命中率が上がってやったー。
……と言う単純なものではない。
まず望遠鏡の史実の発明は1590年頃とされているため、物語の開始年代次第では望遠鏡の開発から始める必要がある。
ガラス加工技術が低い当時の日本においては、ガラスの製造からレンズの研磨技術まで育成する必要があり、相当な手間となる。
ただし凹、凸レンズ自体は既に発明されているため、これらを欧州から輸入するする場合は技術難度は下がるが、量産は困難となるだろう。
そして狙撃銃+望遠スコープと言う組み合わせは南北戦争が始まりと言われてる。
つまり、最低でも望遠鏡とライフル銃の組み合わせが必要。
なぜなら、滑腔銃はランダムな回転が掛っているため、いくら照準をしやすくても100mを越えた辺りから命中率は大きく低下するため、スコープを搭載する意義が低下する。
また、狙撃スコープで狙った十字線の中心に、実際の弾道が何m先で交差するかを合わせるゼロインと言う作業が非常に手間が掛る。
このゼロイン作業は詳しく語ると本が一冊書けるほど(そして筆者はそんなに詳しくない)なので詳しくは割愛。
実際に運用するならば物語序盤~中盤に強敵の暗殺狙いの狙撃銃をワンオフで作るか、物語後半に光学機器やライフル銃が普及してからの話になるだろう。
前述の迷彩服&ギリースーツを使って決死の敵陣への浸透からの狙撃と言うシチュエーションもいいかもしれない。
ただし、あまり多用すると敵からのヘイトを買うし、物語としてもあまり面白くなくなるため、乱用はしない方がいいだろう。
敵側も指揮官の軍装を目立たなくするなどして対策を取るだろうし。
技術判定はライフル銃+光学望遠鏡の開発が関わるためE。
・ナパーム C もしくは E
調べれば説明不要でレシピが出てくるメジャー兵器。
しかし、どう言う理由でこの素材が使われているかまとめられていないのでまとめてみる。
基本的には【引火点の低い軽質油】+【ゲル化させる増粘剤】で構成されている。
まず、引火点の低い軽質油。これがメインで燃焼している。
・どうやって調達するか?
原油からガソリン、ナフサを分留するのがベスト。領地内か通商圏内にある油田から採掘する。
著名な油田だと、遠江にある相良油田。戦国自衛隊的な転移系のSSでは車両用燃料の調達先として知られている
とても軽質油であるため、ゴミを濾したら車両用としてそのまま使えるくらい。
それ以外だと秋田や新潟、長野県北部に戦前に採掘していた油田がある。
位置に関してはwikiの「油田の一覧」を参照。
この辺りの油田は最低でも重油質、灯油、ガソリン+ナフサの軽質油の三種類くらいに分留する技術力が必要。
・油田が無い場合はどうするか?
無いなら石炭を乾留し、分留したコールタールから更に分留したベンゼンを使用する。
それ以外の場合はエタノールと硫酸を混合して得られるジエチルエーテルが利用可能。
ただし、ジエチルエーテルは気化しやすい、静電気や加熱された金属程度でも発火するくらい発火点が低いので取り扱いが難しい。
そしてベンゼンは石炭化学に片足を突っ込んでるので、これが分留できるくらいなら技術力では余所の大名を大きく引き離してるため、
「別にナパームとかなくても良くね?」と言う状態になっている。
次にゲル化剤。これは大別すると【高級脂肪酸】【界面活性剤】【金属石鹸】のどれかが用いられる。
高級脂肪酸はパルチミン酸など獣脂や木蝋に多く含まれるもので、これを軽質油に混ぜればゲル化した油ができる。
この時代でも調達は容易であるが、激しく燃える軽質油の割合が低下するため、燃焼温度や熱量では劣る欠点がある。
界面活性剤=石鹸であるが、石鹸の製造から始めなくてはいけないため、手間が掛る
金属石鹸はさらに調達が難しく、石鹸ににがりなどを混ぜて作るマグネシウム金属石鹸がこの時代で作れる限界ラインかと思われる。
ただし、金属石鹸の場合はゲル化させるのに必要な量は軽質油に対して数%で済むため、燃焼の激しさでは一番優れている。
・ありそうな質問:エタノール=アルコールじゃ駄目なのか?
エタノールの場合、戦国時代でも蒸留で濃度96%まで上げれるため調達が容易であるが、先に挙げた金属石鹸や高級脂肪酸はエタノールに対して難溶と言う欠点がある。
つまり、肝心な可燃物のゲル化と言う点でハードルが上昇してしまう。
・どのような投射手段を用いるか?
最も容易なのは史実の焙烙玉のように手で投げる方法。激しく燃えるナパームを手投げするのは少々危険ではあるが。
次に中世西洋で用いられた投石器のようなものを用いること。
手で投げるより大きな焙烙玉を遠くに飛ばせるが、建造が手間。
続いてに大砲。火攻めが目的なため、それほど大きな大砲は不要と思われる。
大きな砲弾よりも小口径の砲を多数用意して着火させるポイントを多数用意して延焼狙いの方がいいだろう。
砲身の短い榴弾砲、臼砲、使い捨てでもいいなら木砲でもいいだろう。
最後に銃火器編その2で紹介したロケット兵器の弾頭に用いるのも効果的と思われる。
瞬間的な火力は大砲を上回るため、敵の水軍や城をあっという間に火の海にすることができるだろう。
必要なナパームの量も膨大であろうが。
運用が油田に左右されると言う点でC判定。石油やベンゼンの分留技術、石鹸の製造技術が必要と言う点でE判定。
物語後半で他の軍事技術力が向上している場合はあまり必要でないかもしれない。
スタート地点に油田が傍にある大名限定の兵器と見るべきだろう。
元々、出入りしていた技術チートもののやる夫スレで色々調べていたことの覚え書き程度だったのに、
想像以上に見ている人がいるみたいで驚いた。




