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戦国時代で可能なチート覚書  作者: 上里来生
4/10

戦国時代で可能なチート覚書:銃火器編その3

続き。そろそろE判定でも技術的に厳しいものが増えて来てる。

以下テンプレ。


A:知識さえあればできるもの

B:知識さえあればできるが、法制度、慣習などを解決する問題があるもの

C:知識さえあればできるが、地理的制限があるもの

D:ある程度加工技術があれば当時の技術で実行可能なもの

E:転生、転移者の寿命内の技術開発で可能なもの


・コーニング(corning) A(既存技術)

 黒色火薬の保存性を高め、燃焼速度を向上させるために粉末状の火薬を粒状に形成する技術で、15世紀ごろに欧州で開発された。

 初期のコーニングは粉末の火薬に水分を加えて団子状に練ったものを乾燥させて、砕いて粒状にしていた。

 どれくらい燃焼速度に差があるかと言えば、コーニング処理を施した火薬は非処理のものと比較して10倍以上の早さで燃えると言う。

 用途によって粒の大きさが異なり小銃の火薬なら粒は小さく、大砲用なら粒が大きくなり、鉱山の発破用ならばパチンコ玉くらいの大きさになる。

 これによって火薬兵器が火槍やてつはうのような威嚇兵器から、火縄銃のように当たれば100m先の人間を殺傷可能とする射撃兵器へと進化した。

 現代では加工性から円柱状に形成した火薬を用途によって太さや長さを変えたり、中央に蓮根状の穴を開けたりして燃焼速度を変更している。


 戦国時代では既知の技術だが、より古い時代の歴史スレがあったり異世界転生チートスレの人も見ているみたいなので、一応紹介してみた。

 火薬の歴史においては極めて重要なターニングポイントなのだが、これについて語られたSSは一つくらいしか見つからなかった。

 異世界転生モノならば「転生者は黒色火薬の作り方は知ってるが、コーニングの技術を知らないために実用的な射撃兵器を作れない」とか

 「敵に黒色火薬を鹵獲されたが、コーニングの技術を知らないため威嚇兵器しか作れなかった」と言う展開になるかもしれない。

 もっとも、お手軽チートが信条のなろうではそこまで描写する必要はないのかもしれないが……

 

・騎馬砲兵 E

 フリードリヒ大王の時代に編み出された兵科で騎兵に準ずる機動力を持ち合わせた砲兵。

 砲を設置するだけでも一苦労での従来の野砲と異なり、素早く移動させるため弾重量が通常の野砲の半分程度の軽量の砲が主体であった。

 砲兵と言う言葉に反してかなり前線に肉薄して戦う兵科であり、味方が敵の戦列とぶつかり合う前に先行して砲撃を加えて陣形を崩す。

 前線で銃撃戦が始まれば側面に移動して援護射撃を加えると言った具合で、その性質上、素早い射撃への移行と移動を行うため厳しい訓練が必要であった。

 ナポレオン戦争の頃は「空飛ぶ砲兵」とまで言われ、相対した敵は「まるでピストルのように砲を撃ってくる」と漏らしている。

 イギリスではコンクリーヴ・ロケットで編成された騎馬砲兵もあった模様。

 ただし、その有用性に比例するように通常の砲兵と比較して数倍の編成コストが掛ったと言う。


 戦国時代に導入するとしたら、まず馬産の技術を根底から改革する必要があるだろう。

 徹底した品種改良と選別による体格の向上。

 繁殖に使わない馬への去勢技術は特に必要で、この処置がなかった日本の馬は明治の頃のお雇い外国人に「馬の形をした猛獣」とまで言われていた。

 また、牽引を容易にするために全体的に砲の軽量化が必要となる。

 具体例としてはグリボーバル・システムによる砲の軽量化、砲架を軽量なブロックトレイル型に変更、牽引を容易にするための前車など18世紀初頭程度のものに改良しなくてはいけないだろう。

 必要技術が多く、特に馬産関係は時間が掛かると思われ技術判定はEでも難しめ。

 そのため、技術が向上した物語後半辺りでなければ導入は難しいと思われる。

 ただし、効果は劣るものの砲ではなく大鉄砲や狭間筒と三脚を組み合わせて騎馬砲兵と言うよりも竜騎兵もどきを編成するならば、そこまで難しくないかもしれない。


・発砲率の向上 B+D

 第二次大戦まで、戦場において銃を持った兵士の発砲率は10~20%程度であった。

 多くの人間が戦場にいながら消極的な関与しかせず、負傷者の救出や弾薬の運搬と言ったより危険な任務の方を好んだと言う。

 これは恐らくそれ以前の時代でも同様であったと思われる。

 実例としてナポレオンの時代では訓練における100ヤード(約90m)における命中率が50%、実戦における命中率が15%と言われていた。

 しかし戦場における使用した実包の数を敵の死傷者数で割ると命中率は0.2~0.5%だったと言う。

 銃兵の疲労や精神状態、黒色火薬の発砲煙が立ち込める戦場の視界の悪さを加味しても、この命中率は低過ぎると言わざるを得ない。

 また、南北戦争においてはゲティスバーグの戦場で回収された27000挺のライフル銃の内、12000挺が弾丸が装填されたままであり、中には十数発もの弾が装填されていたと言う。

 つまり、多くの兵が周囲の兵を誤魔化すために弾を込める動作だけを繰り返していたと言う事になる。

 そして実際に発砲したとしてもわざと狙いを逸らした可能性は充分ありうる。

 そのため、戦場における戦果の多くは大砲や数%の割合で存在すると躊躇なく発砲できる攻撃的な素養の持ち主が占めていたと言う。


 米軍ではこの問題に対処するために、まず的を丸型から人型の(マンターゲット)に変更し、次には不意に立ち上がるポップアップ式に変更したと言う。

 この訓練を繰り返して実戦で発砲する際に標的が生身の人間ではなく、それが「人型の的に過ぎない」と自己暗示を繰り返すことで躊躇なく撃てるように精神改造を施した。

 そしてうまくいったら特権や褒賞、賞賛が与え、発砲行動を強化させる。

 人型の的に似顔絵を描いたり、樹脂製の頭を付けたり、キャベツにケチャップを詰めて当たった時に頭が吹き飛ぶように見せかけたりしていた。

 また、基礎訓練キャンプでは殺人を神聖視させる洗脳を行っていた。

 この訓練によって発砲率は朝鮮戦争で50%、ベトナム戦争では90%にまで向上したと言う。

 戦力として見ると、この手の訓練を受けた兵と、ただ銃の扱いを覚えただけのゲリラ兵とで8倍もの殺傷率に差があったと言う。

 この方式だけならば戦国時代でも導入可能なので技術判定はD。

 ただし、暗示や条件反射が付くまで訓練をすると言うことは大量の煙硝が必要であるため、そのコストは膨大になるだろう。

 それ以外にも付け加えるならば罵倒と侮蔑を繰り返し、兵にとって指揮官を敵よりも恐れさせるプロイセン方式の訓練や、指揮官に絶対服従させる現代的な訓練も必要だろう。

 「指揮官に命じられたから殺す」と言う過程は殺人の罪悪感を軽減させることができる。

 同時に指揮官に「実際に発砲していない人間がいる」と言うことを理解して監視させれば、上記のサボタージュはある程度は回避できると思われる。

 躊躇無く発砲できる人間で猟兵などのコマンド部隊を編成すれば効果的に運用できるだろう。

 他にも仲間意識や相互監視、郷土愛などの要素を持ち込んで戦場への関与を強めるために、カントン制のような徴兵制度が必要かと思われる。

 軍制や社会制度を根底から変えるため、この点の技術判定はB。


 また、銃剣突撃においても本格的な白兵戦はまず起きず、どちらか片方が逃げ出して勝敗が決まっていた。

 実際に銃剣突撃による死傷率は戦列歩兵の時代でも数%が関の山だと言う。

 これは真っ当な社会生活を送っていた人間は、顔の見える人間を刺殺すると言う「明確に相手を害する」行為に強い忌避感を持つためである。

 第一次大戦の頃でも塹壕戦では弾を装填して、銃剣も付けた小銃を逆手にもって銃床で殴ると言う、一見すると珍奇な戦い方がそこらで見られたそうだ。

 逆に逃走のために背中を見せた「顔の見えない人間」はこう言った心理的なブロックが働かないため、容易く殺されたと言う。

 銃剣突撃の有効性を高めようとするならば、剣道の防具を付けて旧軍が使っていた実物に近い木銃で安全にド突き合う訓練や、

 発砲率の向上訓練同様、人型のものを用いて本物の銃剣で刺突訓練するなどの条件付けをする必要があるだろう。


 ただし、これらの手法はあくまでも条件反射で撃たせ、兵に人を撃つ行為に指揮官が免罪符を与えているだけであり、一度戦場を離れれば罪悪感に囚われPTSDを発症する。

 実際に「気づいたらことが終わっていたという」体験をする報告・体験が多かった。

 現代では発症を防ぐために戦友同士のグループセラピーや、本土への帰還までの遊休期間などの精神的なフォローが行われている。

 しかし、ベトナム戦争時はこれが行われなかったため、帰還兵の多くが精神的に病んでしまった。

 もし戦国時代にこのチートを用いるとしたら、同様の対策を行わないと戦後において社会問題となるのは確実である。


・ダムダム弾 E

 拡張弾(Expanding bullet)とも言われてる。

 弾頭の先端の中央に窪みを設けることで、人体に着弾した時に弾が百合の花のように拡張することで対人殺傷力を向上させた弾頭。

 MK.III.303Britis弾薬で使用されたのが有名であるが、1898年に「不必要に苦痛を与える兵器である」としてハーグ陸戦条約に抵触してると言う事で、軍用では使用禁止になった。

 もっとも、現代に到るまで重心を偏らせて体内で横転させる工夫など、ダムダム弾と同等かそれ以上の殺傷効果がある弾頭はごまんとあるので、条約は守られてるものの有名無実と化してる。

 調べる限りだとミニエー弾にも同様の細工が施されたものがあるようで、ミニエー弾を拡張弾化することは容易かと思われる。

 ただし、ダムダム弾は硬い対象には貫通力が低下してしまうデメリットがある。

 戦国時代の甲冑程度ならば容易く貫通するであろうが、土嚢や土塀、装甲目標が相手の場合はこのデメリットは響いてくるだろう。

 ライフル銃の存在が前提であるため技術判定はE判定だが、ダムダム弾用の鋳型の加工難度はそれほど高くない。


 ただし、古来より「不必要に苦痛を与える兵器」に対する忌避感は東西問わずあった模様。

 戦国時代ならば甲斐武田家が刺さった鏃を抜けにくくするために緩く詰めたと言う戦法に家康が不快感を露にしたと言う逸話がある。

 また、WW1時に傷口の縫合が困難になるように銃剣の背を鋸状に細工した兵が捕虜になった時に惨たらしく殺されたと言う逸話もある。

 戦争と言う極限状態であるがため、不必要な害意を兵器に込めると、相手もそれに過敏に反応してしまう。

 もし、チートとして用いるのならばそう言うエピソードの一つや二つは出て来るかと思われる。


・気球 E

 軽い気体を風船に詰めて浮上する装置。

 平地であっても天守閣や物見櫓とは比較にならないほどの高さから観測できるため、物見や大砲の着弾観測に有効である。

 史実では普仏戦争~日露戦争の頃くらいまで軍事利用されていた。

 熱気球は気嚢に使用する布の材質が戦国時代で利用できる素材を考えるとあまり向いていないため、水素なのどの軽質ガスを用いる方が実用化しやすいだろう。

 撃たれたら一発でアウトだが、自陣内で使用する即席物見櫓ならばそう言った被害は軽減できると思われる。

 決死の覚悟で敵陣上空を飛行する展開もいいかもしれないが。


 実際に飛ばすとしたら日本で初めて気球飛行をした島津源蔵のガス気球が参考になると思われる。

 ガス球部分を絹織物の羽二重で作り、樹脂ゴムで強化したもので、ガスは鉄クズと硫酸で水素を発生させて36mほど浮上した。

 ガス球部分に使用した樹脂ゴムが戦国時代には存在しないため、代わりに風船爆弾に使用したこんにゃく糊が代用になるが、こんにゃくの発明自体も江戸中期と戦国期には存在しないため、別途で要開発。

 ガスは同様の方法を用いてもいいが、石炭を乾留させるガス発生装置でもいいかもしれない。

 地上との連絡手段も課題であり、軍靴のバルツァーでも使用された太陽光を利用したテレグラフ+望遠鏡+モールス信号がベターと思われる。

 浮上するだけならば開発技術が多いものの、そこまで高度な技術は多くないが、地上とリアルタイムで通信する技術がネックになる。

 物語終盤の最後の決戦辺りで出せればいいところか。

内容に誤り、不足があったらご連絡をお願いします。

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