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戦国時代で可能なチート覚書  作者: 上里来生
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戦国時代で可能なチート覚書:銃火器編

戦国時代に転生したら誰もが夢見る技術チート、その銃火器編です。

19世紀中盤くらいまでのものならアイディアをパクれますが、ライフル銃のように決定的な効果があるものは、作中で技術の向上が必要なものが多いと思われます。

当時の鉄砲の製造が可能なインフラが整ってる前提で考えています。

工業製品であるため、戦国転生に限らず異世界転生でも流用可能かと思われます。

大雑把に分けると下記の通りになります


A:知識さえあればできるもの

B:知識さえあればできるが、法制度、慣習などを解決する問題があるもの

C:知識さえあればできるが、地理的制限があるもの

D:ある程度加工技術があれば当時の技術で実行可能なもの

E:転生、転移者の寿命内の技術開発で可能なもの


・早合(紙薬莢)A

 弾と火薬を一まとめにして装填速度を向上させるもの。

 1発30秒掛る装填が半分程度になるが、史実でも早期に導入されている。

 紙薬莢は地道に改良、工夫がなされ、19世紀後半には蜜蝋、獣脂を塗る事で弾丸のパッチ、潤滑の役割を果たしてる。

 早合はA判定だが、後期の紙薬莢はB判定。

 蜜蝋は養蜂が必要であり、獣脂は大規模な畜産を行っていなかった戦国時代では大掛かりな調達は難しく、

 転生者があらかじめ畜産、養蜂を行う必要がある。

 蜜蝋は漆、ハゼノキの蝋で代替可能であるが、ハゼノキは中国からの1591年に導入された作物なので注意。


槊杖(さくじょう) A

 西洋では鉄製のものが銃の下部に備え付けられていたが、日本の場合はほぼ木製で銃の付属品は予備扱い。

 装填中に折れることがしばしあったため、予備を複数持つのが常だった。

 強度などの性能で言えば鉄製が上。

 長銃身化するならば、折れやすい木製の槊杖は好ましくない。

 日本では木製だったのは鉄製だと予備を複数持つことが難しいのと、鉄は貴重なので少しでも使用量を減らしたいからと思われる。

 また、先端が尖った椎の実弾を変形させずに装填するには、先端の丸形状にあわせて窪みが掘られた槊杖が必要。


・雨火縄、雨覆い A

 戦記物で度々見られる「雨になると火縄銃は使用不能になる」と言う問題に対する当時の解答。

 雨火縄は初期は竹などを使用していた火縄の素材を火持ちの良い木綿に変更し、硝石で煮た後に漆で表面をコーティングしたもの。

 雨覆いは火蓋付近に付ける雨避けの皮製の四角い傘のようなもの。

 これらを併用すれば、球技を雨天決行する程度の雨ならば問題なく発砲できる。

 ただし、信長の活動時期(1560年以降)には既に普及していた模様。


・肩当て銃床 B

 銃をしっかり固定できるため、命中率が向上し大型の銃でも保持しやすくなる。

 ただし、銃床が甲冑に干渉するため甲冑の改良が必要であるためB判定。

 同時期の西洋本場の火縄銃にはストックが付いてるものが大半で、装備する胸甲は肩当てする部分を切り欠いた形になっていた。

 マスケット兵用の鎧を装備した射撃動画

 ttps://www.youtube.com/watch?v=X1WwQkeDuXs


 当時、日本に伝わったのが肩当てストックが無い猟銃。

 ストックが無い型は仰角、俯角の変更が容易。

 これが現行の甲冑や後の当世具足と干渉しなかったから、これが正しいものと認識されたのだろう。

 動員兵は小口径の鉄砲、常雇いの兵は中口径だったので頬当ての反動制御で問題が発生しなかったが、

 士筒、大鉄砲みたいな大口径、大型のものは限られた人間にしか扱えなかったし、狭間筒は篭城戦用だったから、

 ある程度大型化、長銃身化すると一般人には肩当てストック無しでは使いこなせないのは明らか。

 欧州のブラウンベスやシャルルヴィル・マスケットは戦国時代の規格だと、銃身は狭間筒並の長さで、口径は中筒程度。

 これを肩当てストック無しで一般人=動員兵が扱うのは困難と思われる。


・銃架 A

 大威力の小銃を扱うために必要で、野戦での利便性から当時は大型のマスケット銃には叉杖と言われる一脚が存在していた。

 上記の射撃動画でも使用されている。

 ロシア銃兵はバルディッシュと言われる白兵武器を叉杖代わりに使用していた。

 分厚い胸甲を装備していた騎兵が存在していた頃の装備であるため、重装騎兵が衰退するにつれて大型マスケット銃と一緒に消滅した。


・銃剣 B

 歩兵を全て銃兵にするために必要な要素。

 初期の銃口に差し込む差込型、銃身の横に括り付けるソケット型、後装銃以降の銃に付いたバイヨネットラグと銃身の二点で保持する三つの方式がある。

 銃剣採用に必要なのはチートなアイディアではなく銃の装備率。

 私見だけど装備率3割以下なら長柄との混合にして、銃は射撃、白兵は長柄に分担した方が効率がいい。

 参考までに言うと、日本で一番銃兵率が高かった大坂の役での銃兵率が3割無い程度

 また、銃剣は全長+銃剣の長さで2m弱で当時の槍では短槍程度で武器として中途半端。

 そのため陣列を維持した長柄とまともにぶつかる可能性がある内は採用をためらわれる。

 銃撃で乱れた陣列に白兵戦ならば勝ち目は充分ある。

 ただし、白兵戦に使用した銃は照準や銃身に損傷を負い、修理が必要なのを忘れてはいけない。

 パッと見で分かるアイディア商品のため、敵に容易に模倣されるので出し所にも注意が必要。


・バレルバンド A

 火縄銃やイギリスのブラウンベス・マスケットは目釘で固定されているが、これは固定が甘く、乱暴に扱うと外れ易かった。

 シャルルヴィル・マスケットで導入された2~3個の円環状のバンドで固定することで、銃床に強く固定できて取り外しも容易になった。

 銃剣で白兵戦をするのに必要と思われる。


・照尺 E

 アイアンサイトと併用して取り付けられた照準装置。

 タンジェントサイトとも言われており、ライフル銃の登場によって何百mも先の遠距離を狙うために追加された。

 遠距離では重力や空気抵抗で弾が大きく下がるため、単純に照準を付けただけでは当たらない。

 そのため、何m飛んだら狙いが何m下がるのでこれだけ仰角を上げると言う目盛りが付いていて、距離に応じて調整して射撃する。

狙って当てると言うよりも集団射撃で距離と高さが合っていれば敵の戦列に被害が出るだろうと言う公算射撃に用いるもの。

 エンフィールド銃などの19世紀中盤のライフル銃や南北戦争で用いられたライフル砲には取り付けられている。

壊れやすいため博物館に置いてあるものは取り外されているが、Total warの南北戦争ものでは良く見ると装着されている。


 日本でも火縄銃に取り付ける同等の照準器で矢倉と言われるものが存在した。

運用方法は同様で、照準した後に射撃時には壊れないように取り外していたとか。

記録では島原の乱の際、600m先の敵兵を狙撃したと言う。

木製であるため当時のものが現存しているのは貴重とのこと。

 正確な弾道学が必要であるため普及にはE判定。銃兵の超人的技量に頼るならD判定。


・ライフリング D、もしくはE

 ライフル銃自体は鉄砲伝来の100年ほど昔に欧州では存在していて、日本でも現状の彫金技術の延長で生産可能。

 ただし、職人芸になるので生産速度はお察し。

 欧州でもライフル製造はマイスターの技だった。

 幕末でも火縄銃しかなかったり、旧式のゲベール銃を掴まされた藩が急造で改造を施して、ミニエー弾をぶっ放したケースがあった模様。

 また、フランソワ・タミシエが考ライフルの溝を薬室側では深く、先端に行くに従って浅くする「漸進施条溝」と言う溝の掘り方を開発している。

 これによってライフル銃の効率を向上させている。

 この段階の製造技術の場合はD判定。


 問題は「ライフル銃を量産する技術」にあり、この技術がE判定。

 ライフル銃製造の問題は巻き鍛造で製造される銃身の口径が安定していなかった。

 銃ごとに弾の鋳型が存在して銃手が暇を見て弾を作っていたと言うことは、それだけ口径にばらつきがあった証拠。

 手製ライフリングマシーン自体は現代でも割と簡単に製造されて、銃器の密造現場でも度々見られる。

 どのようなものかは「rifling machine」で見れば大体想像が付くかと。

 しかし、±1mmの精度で製造される銃身の口径に合わせてマシーンをいくつも用意すると言うのは非現実的。

 解決するには

 :正確な測定器具で銃身の鍛造時の芯金の寸法を測り、統一する。

 :鍛造後に銃の正確な口径を測る。

 この二つを守れば口径のばらつきを抑えられるため、ライフル製造が容易になる。


・褐色火薬 A

 黒色火薬は装薬としては燃焼速度が早すぎるため、これを抑えたもの。

 黒色火薬は硫黄を着火剤、燃焼速度の上昇に用いているため、これを減らすことで燃焼速度を低下させたもの。

 そのままでは着火性能が低下するため、麦の籾殻を素材にした褐色炭に含まれる成分を利用して着火性能を補っている。

 ゆっくり燃焼して加速するため、初速の向上や暴発事故の低下の効果がある。

 ライフル銃の方が効果が高いが、滑腔銃でも効果はあると思われる。


・雷管 E

 管打式小銃の製造に必要で中身の発火薬である雷汞(らいこう)の製造。

 硝酸水銀の硝酸溶液とエタノールを混ぜることで製造できる。

 必要な素材は硫酸、硝石、水銀、エタノール。

 硫酸、硝酸の製造に必要な正確な科学知識と温度管理の必要性からE判定。

 管打式の機構そのものはさほど難しくなく、洋書を元に開国前に火縄銃を改造して開発した人物がいた模様。

 雨への耐性が雨火縄やフリントロック式より高く、不発率が大きく下がる。

 また、火皿のような大きな開口部がなくなるため、命中率の向上にも繋がる。

 管打式以前は火皿からの噴出しが大きく、猟兵などの狙い打つ狙撃兵は眼病と失明が常に付きまとい、戦列歩兵ならば目を瞑って撃つから命中率はお察しと言う状況であった。


 ただし、初期の雷管は雷管への充填方法や質に問題があったのか、雷管の装着時に兵の指を吹き飛ばしたり、キャップが撃発の際に吹き飛んで顔に当たるなどの欠陥があった。

 後の後装式に必要不可欠。


・ミニエー弾 D

 マスケット並みの装填速度とライフルの命中精度を併せ持つライフルド・マスケット

 有効射程は3~5倍、同距離での威力は3倍と言う桁違いの性能向上を誇る。

 単純な球弾よりも作成難度が高いが鋳造が容易な鉛製であるためD判定。


 よくある誤解その1:いきなりミニエー弾が生まれたわけではない。

 スカート部分を備えた椎の実弾、空力特性を向上させる溝のタミシエ・グルーブ、スカート部分を変形させて銃身に食い込ませるステム・ライフル、この三つの改良を段階的に合わせたもの。


 よくある誤解その2:椎の実弾のような円柱状の弾丸は滑腔銃で撃つのには向いていない。

 椎の実弾を滑腔銃で撃つと、ジャイロ効果が無いため、弾の進行方向に対して弾の軸線がずれて飛翔するバロッティング(balloting)と言う現象が起きる。

 これでは空気抵抗が悪化して逆効果であり、命中率の悪化しか起きない。

 そしてこれは弾が銃身に対して隙間のある前装銃の銃身内でも起きる。

 銃身にガタガタぶつかりながら飛び出るので命中率が悪化するだけでなく銃身を痛める。

 滑腔銃の弾は球形であり、転がりながら飛び出るためこのようなことが起きない。

 ちゃんと銃口から飛び出ればまだマシで、下手をすると内部で引っ掛って止まって暴発してしまう。


・銃製造の機械化 E

 銃の生産は早い段階で機械化が進んでいた。

 水力動力を利用した機械ならば簡単な機構ならば基礎技術を向上させればギリギリ製造可能。

 ただし転生者が技術者だったり、詳しい資料を持ってるなどに正確な知識が必要なのでE判定。

 銃身の外側を削る旋盤、銃床の切削機械や部品製造のフライス盤、ライフリングマシーンなど。

 当時の銃の価格=人件費&工期であるため、これが短縮できれば銃の価格が劇的に低下する。


色々書きましたが、まず根本的な問題として当時の日本は製鉄能力が非常に低いため、

生産時に鉄の生産力が強いボトルネックになるため何かしらの方法で鉄を増産する必要があります。

たたら製鉄は高炉製鉄と比較するとその生産量は矮小もいい所です。

古戦場から武具がまるで出てこないのも、農具は風呂鍬が昭和頃まで現役だったのも、

江戸時代に火事が起きると焼け跡から釘がパクられるのが常だったのも鉄の貴重さを物語っています。

内容の不足や別のチートアイデア、誤りがあればご連絡下さい。

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