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80 地上に降下してみた

「で、どうしてこんな誰もいないような僻地に降下したんだ?」


 不可解だと言わんばかりにリーアンが聞いてきた。

 てっきり目的地である街の近くに降下すると思っていたのだろう。

 慣れとは恐ろしいものである。


「兄さん……」


 呆れたような眼差しを向けるのはリーファンである。


「どうでもいいような時にポンコツになるよな」


 慣れっこだと言わんばかりのリグロフが特に表情を変えずに言った。


「言ってくれるじゃないか」


「何故なのか理解していないじゃないか」


「ぐっ」


 本気でわからないらしい。


「おいおい、揚陸艇を人に目撃される訳にはいかんだろうが」


 そしてツッコミを入れたのはグーガーである。


「あ、そうだったな」


 ようやく気付いたようだ。


「ここからは徒歩なのか?」


 何事もなかったかのようにリーアンが聞いてきた。

 ここまで筋金入りの天然ボケを発揮してくれるとはね。


「なんでやねんっ」


 天然ボケのお代わりをするとは思ってもみませんでしたよ?


「歩いて行きたいなら1人で行けばいい」


 不敵な笑みを浮かべながらスィーもツッコミを入れてくる。


「いやいや、誰もそんなことは言っていないぞ」


 さすがに徒歩の大変さに思い至ったであろうリーアンが慌てて訂正した。

 リーファンたちの視線は冷ややかだが、自分たちのリーダーがこの調子じゃあね。

 先々のことを考えると漠然とした不安を抱いてしまうんですが?

 俺は別パーティだし彼らの自立したいという思いを尊重したいから極力手を貸さないつもりだ。

 まあ、パーティメンバーに頑張ってもらおう。


 何にせよこんな所でコントみたいなことをしている場合じゃないのだ。

 早々に移動車両を揚陸艇から下ろした。

 これくらいは自動操縦でもできるが運転席には武装させたメイドロイドを座らせている。

 番犬代わりだな。

 今回の移動に使うのはその必要もない代物なんだけど。


 空気抵抗を考慮しているので四角四面な形状ではないが見た目は窓のない箱そのものの。

 足回りは8輪のAWD、すなわち全輪駆動車である。

 ホイールも特殊な機構が取り入れられており状況に応じてクローラーに変形する。

 ぶっちゃけるまでもなく装甲車だ。


 ただし、それは外から見た場合の話である。

 CWOで商人だった俺が中身をあんな辛気くさい代物にする訳がない。

 壁面の上半分はモニターになっており外の映像を映し出すため乗車感はバスに近い。

 乗り心地も外観の厳つさに反してゆったりしたものだ。

 サクッと乗り込んで出発しよう。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 装甲車を走らせて何時間が経過しただろうか。


「暇だ~」


 することがなくて思わず愚痴が声に出てしまうくらい退屈である。

 途中までは皆でカラオケに興じていたのだけど飽きてしまった。

 各自の持ち歌が歌い終われば一気にお開きムードになってしまうんだよな。

 そんな訳で車内は静まりかえっていたのだけど。


「カードゲームでもするかニャ?」


 レイがスチャッとカードを取り出した。

 何もせずに流れる景色を漠然と見ているよりはマシかもしれない。

 そう考えてテーブルをセットし椅子の向きを変えて皆で囲い込む格好にしていく。


 あっという間に準備完了。

 テーブルも座席も車の仕様で簡単に組み替えられるようにできているからだ。

 自分でも装甲車とは? と思うことがあるけれど。


「おおっ、何だ?」


 さあゲームを始めるかというところで予定にない停車だ。

 メイドロイドには魔物を発見しても無視して走り抜けるように指示していたのだが。

 装甲車は並みの魔物には追いつけないからね。

 依頼を受けての仕事ならともかく、そういうのを相手にするのも面倒だもんな。

 しつこいのがいた場合は返り討ちにするまでだ。

 ゴブリンやオークあたりなら投石とか弓矢で攻撃してくるかもだけど。

 そのくらいで傷つくようならCWOでは装甲車とは言わない。


「不穏な気配は感じないんだがな」


 それ以外で停車するだけの理由があるとメイドロイドは判断した訳だ。


「どうしたのニャ?」


 すかさずレイがメイドロイドに声を掛ける。


「この先、数キロの所に事故車両が立ち往生している模様です」


「立ち往生ぉニャ~?」


 うさんくさいと言いたげに顔をしかめるレイ。


「そんなの盗賊のくさい芝居に決まってるニャ」


「確認もせずに決めつけるのはどうかと思うわよ」


 ケイトがジト目で溜め息をつきながら反論する。


「あー、ハイハイ。だったら確認するニャ」


 面倒くさそうにしながらもレイは偵察用に先行させていたドローンから送られてきた映像をモニターに表示させた。


「隊商のようだな」


 パッと見て感じる印象はそんなところだ。


「規模は大きめ」


 スィーがそんな感想を漏らす。

 確かにに、いくつもの荷馬車が列をなしていた。

 その周囲には護衛とおぼしき武装した者たちが展開している。

 メイドロイドはいきなり接近すれば、この護衛たちと揉めるかもしれないと判断して停車したようだ。


「これなら盗賊の罠という線は消えそうだけど?」


 ケイトがレイの方を見ながら問う。

 ここまで大がかりな罠を用意する盗賊というのも確かに考えにくい。


「油断は禁物ニャ」


 なんて反論しているが、その口ぶりは適当感にあふれている。

 もう興味を失ってるのか。


「で、どうするんだ?」


 リーアンが聞いてきた。


「前に進むだけだ」


 この街道は森林地帯を抜けるように作られているので迂回路は存在しない。

 魔法で木々を避けながら進むような事情もないしな。

 ただ、街道のド真ん中が塞がれているので追い抜くことは難しい。

 おまけに隊商が壊れた馬車を処理するのは時間がかかりそうだ。


「つまり、手助けするというのだな」


「その方が早く先に行けるだろう?」


「本当に信用できるのか?」


 ストラトスフィアで色々と学んだだけあって用心深い反応だ。

 詐欺の啓発動画とかが役立ったようで何よりである。


「相手の反応しだいでは強引に通り抜けるだけになるかもな」


読んでくれてありがとう。

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