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74 腹が減っては

 ストラトスフィアに到着後は細々した説明をして艦内を案内する。

 CWOのプレイ中は無駄にデカいと取引相手たちに呆れられた規模なので簡単には終わらない。

 田舎の住民が村ごと無人の都市に引っ越すのと同じくらいのインパクトはあるだろう。


「「「「「………………………………………」」」」」


 そのせいか興味の塊である子供たちでさえ我を忘れるほど言葉を失っている有様だった。

 その衝撃たるや俺には想像もつかない。

 ただ、怯えなどは感じられないのでパニックを起こすこうとはなさそうだ。


 難点は一通り回るとそれなりに時間がかかることか。

 それでも本来なら彼らには案内不要であろうブリッジなどもスルーせずに巡った。

 子供たちが後で探検と称してあちこち行きかねないからだ。

 位置関係を把握せぬまま来れば高確率で迷子になってしまうのは想像に難くない。

 そのくせ、そういう場所ほど行きたがるのが子供である。


 きっとワクワクするのだろう。

 だから探検ごっこは止められまい。

 道順がわからず迷子になることもね。

 今回の案内くらいでストラトスフィアの中をすべて把握するのは無理ゲーである。

 ただ、見覚えのある場所が多ければ少しは不安も抑えられるんじゃないかと思うんだよな。


 もちろん迷子の対処もする。

 艦内を管理するAIが迷子を判定しメイドを派遣するようにしておいた。

 これで大きな騒ぎにはなるまい。

 と思いたいのだが、何事も不測の事態は起こりえるものである。

 元上司への天罰のとばっちりで龍の素材とフュージョンしてしまった俺が言うのだから間違いない。

 自慢にゃならんがね……


 それにしても大人数での移動は時間がかかる。

 そのせいで想定外のことが起きるのは世の常と言えるだろうか。


「ねー、おかーさーん。お腹すいたよぉ」


 このように子供たちが真っ先に音を上げるであろうことを失念していた。


「僕もぉ」


「私も~」


 1人が言い出せば他の子供たちへと連鎖していくのは当然のこと。

 疲れたと言い出し、てこでも動かなくなってしまう状態でなかったのは不幸中の幸いだ。

 残りの予定は居住区画に行って部屋の割り当てだけだし忘れたりはしないだろう。


「それじゃあ食堂に行こうか」


「やったー! 御飯ニャー!」


 子供より先にピョンピョン跳びはねて喜んでいる誰かさんがいますよ。

 身内として非常に恥ずかしいはしゃぎっぷりである。

 子供かとツッコミを入れたくなったさ。

 ちなみに子供たちがレイのようにはしゃがなかったのは食堂が理解できなかったからだ。

 リケーネの里には食堂なんてなかったしな。


 レイが御飯と言ったことで、そういう場所があるのだと気付いたくらいである。

 気付けば喜ぶのが道理なんだけど親に注意されてレイほどはしゃいだりはできなかった。


 おかげでレイのはしゃぎっぷりが際立ってしまい更に恥ずかしくなりましたよ?

 同類だと思われたくないのでスルー決定。

 俺は案内のために先頭に立っているからレイとは距離があるし都合がいい。

 でもってレイと一緒に最後尾からついて来ていたケイトとスィーは気配を殺してススーッと離れていきましたとさ。

 撤収の仕方が見事すぎて草生えるっての。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 食堂に辿り着くと幾つかのグループに分かれて点呼が開始された。

 誰か欠けた状態で食事を始める訳にもいかないからね。

 決死隊の面々が各グループを受け持ち、確認が取れればグーガーに報告に行く。

 全グループの報告が終わるとグーガーが頷いた。


「リーアン、全員そろっている」


「了解した」


 報告を受けたリーアンが俺の方を向いた。


「そういう訳だ。済まないが世話になる」


 リーアンが頭を下げるとリケーネの民たちも深々とお辞儀をしてきた。


「いやいや、気にしなくていいからさ」


 たかが一飯のために、そこまでされると罪悪感のような居心地の悪さを感じるだろ。


「そういう訳にはっ」


 リーアンは下げていた頭こそ上げたものの顔には納得しかねると大書していた。

 それどころか食ってかからんばかりに身を乗り出してきて暑苦しいったら。

 律儀なところは好感が持てるけど、もうちょっと軽めでお願いしたいものだ。


 でもって、こういう時に援護してほしいと思う3人娘は厨房にいる。

 皆の御飯を用意するという口実で逃げたのは言うまでもない。

 俺を守るために守護霊から転生したんじゃなかったのかよと言いたい気分だ。


「そう堅苦しく考えてちゃ御飯がおいしくならないわよぉ~」


 なんて声が聞こえてきた。

 もちろん戦術的撤退をした3人娘ではない。

 ストラトスフィアには他にも人が乗り込んでいるからね。

 いや、人っていうか……


「誰だっ?」


 声のした方へと振り向くリーアン。

 気配の感じられなかった方から急に声を掛けられれば驚きもするか。


「ハーロウ!」


 椅子に腰掛けたまま小さく手を振ってくる星界神様だ。

 向かいの席には創天神様が座して涼しい顔でお茶をすすっている。

 すっかり忘れていたよ。


読んでくれてありがとう。

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