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65 迎えはいまだ来ず

 スィーが音もなく戻ってきた。


「ただいま」


「おかえりー」


 相変わらずのすまし顔だが、どことなく仕事をやりきった感が上乗せされているな。


「そんなに大変だったのか?」


「別に」


 微妙にドヤ顔をしているあたり返事とはちぐはぐなんだが。


「顔に書いてるぞ」


 そう指摘すると、スィーは聞こえるかどうかの舌打ちをした。


「で、どうやって傷つけずに足止めしたんだ?」


「大したことはしていない」


「勿体ぶってくれるじゃないか」


「簡単な手品のタネと同じで分かればどうってことがない」


「なら、魔法で転送させたか」


「あの数を?」


 木々の間を素早く駆け抜ける複数の対象をとなると……


「確かに現実的ではないな」


 それに出現位置をどうするかという問題もある。

 間近じゃ足止めにならないし、まるで違う場所に転送すると対象が別の方向へ行きかねない。

 追い払う格好になってしまうとエルフたちの経験値にならないしな。


「だったら理力魔法で宙づりにしたとか?」


 何故かケイトまで参戦してきた。

 それは確かに移動できなくなるから足止めにはなる。


「ハズレ」


「うっ」


「維持のために集中し続けるのが面倒」


「そうね。あの数は面倒よね」


「じゃあ、首輪をして適当な木につないでおいたなんてどう?」


 次は俺の番だなとか思っている間にまたしてもケイトが答えている。

 もしかしてクイズとか好きなのか?


「あれだけの頭数分を?」


 瞬時に用意できるのかってことか。


「くっ」


「首輪をはめる手間は?」


「ううっ」


「思いつきで答えるから」


「ぐっ」


 ものの見事にやり込められてしまったケイトである。


「群れごと足止めするなら風属性の魔法で柵でも作って囲うのが手っ取り早いか」


 シンプルに考えた結論がこれだった


「惜しい。足りない」


「足りない?」


「奴らは柵を跳び越えようとした」


「ああ、そういうことか」


 確かにブラッドウルフのリーダーは群れを二手に分けて風魔法を避けようとしたからな。

 先に風魔法を見ていたからこそ素早く対応できたのかもしれない。

 結果からすると対応しきれたとは言えないが。


「檻にしてしまうと体当たりしかねないしなぁ」


 それで傷ついてしまうと、リーアンたちが殲滅した後に一部経験値がこちらに流れてしまう。

 ならば跳び越えられないようにすればいい。

 問題は単純に風の柵を高くしてしまうと目立ってしまいかねないことだ。

 特にリーファンに感知される恐れがある。

 魔物を感知するべく網を張っている彼女の集中を乱しかねないのは避けたいよな。


「では空堀でも作ったか」


「正解」


 上がダメなら下に掘り下げるってことだな。

 最初からそうしなかったのは走っている勢いを残したまま落としてダメージを与えてしまうことを懸念したからだろう。

 風の柵で足止めしてから地面を押し下げる。

 わかってしまえば、どうということのないコロンブスの卵的な足止め方法だ。

 まあ、卵の逸話は実話ではないという説もあるのだけど。


「それよりも大型揚陸艇は?」


 到着していてもおかしくないはずだという目で俺やケイトの方を見るスィー。

 ケイトも困ったような顔で俺を見てきた。


「あー、それ保留中」


 という訳があるからだ。

 理由を教えていないのでスィーもケイトも困惑している。


「今後やきもきすることがないよう、もっとレベルアップしておいてほしいなって」


 身内じゃないから、あーだこーだと指図なんてできる訳もないし。

 俺たちがしょっちゅう目を光らせて見張るのも何か違う。

 それなら目の届く今のうちに防衛力を高めておいてもらえればと考えたのだ。

 余計なお節介だとは思うのだけど。


「内緒のパワーレベリング」


 鍛えられている当人たちは気付いていないので、まさにスィーの言うとおりな状況だ。


「そうとも言う」


「そうとしか言わない」


「ハハハ、こりゃ手厳しい」


「では、揚陸艇に大型モニターを設置させているのは何故ですか?」


 ケイトが俺たちのやり取りをスルーして聞いてきた。

 単なる時間稼ぎだとは思っていないようだが理由には思い至らないようだ。


「意味不明」


 その事実を把握していなかったスィーが再び困惑する。

 ブラッドウルフを足止めしている間に決定したことだからな。


「ああ、移動中の景色を見られた方が移動距離とか方向とかわかるだろ」


 スィーは呆れ顔である。


「まあ、保険だよ保険」


「どういうことですか?」


 今度はケイトが聞いてくる。


「自分のいる場所を客観的に把握できれば移動後に返せ戻せと言われずに済むかなってね」


「どうでしょうか?」


 ケイトは効果の程を疑わしく思っているようだ。

 元犬だけあって帰巣本能の強さが影響していそうである。

 カラスの帰巣本能がどれほどのものか俺は寡聞にして知らないのだけど、スィーは何も言ってこない。


 俺としては効果があると踏んでいるんだが……


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