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59 招かれざる客は特大で

 危うくエルフたちを恐怖のどん底に突き落とすところだった。


「鉄の巨人!?」


 口頭で説明しただけでリーアンを初めとした一同を驚愕させたからね。


「それが味方になってくれるなら心強い」


 となったおかげで事なきを得たけれど。

 ケイトに説明を任せて正解だったと言えるだろう。

 大物狩りの遠征を強行したレイを止めなかったのは正解だった。


 エルフたちにVMAを見せるべく光学迷彩を解除して降下させた。

 地上に近づいたら人型に変形しゆっくりと着地態勢を取る。


「形が変わったぞ!?」


 エルフの1人が驚きの声を上げた。

 このVMAは汎用のMAと違って高速移動と大気圏突入を単独で可能とするタイプだ。

 どうして変形するのかというのは説明するのが難しいと思う。


「こんなに巨大なものが……」


 別のエルフが呆然とした面持ちで着地したVMAを見上げながら呟いた。

 ここまで大きいとは思わなかったようだ。


「本当に巨人だ」


 人の形をしている時点で驚きを禁じ得ないらしい。


「この大きさで動くのか?」


 大きいと鈍重になると考えたエルフがいるようだ。

 大小に比例して重くなると考えれば、そういう風に帰結するのも分からなくはないか。


「動いてたじゃないか」


「そうよ」


「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて戦えるのかってことだ」


「動くなら戦えるんじゃないの?」


「単に動けるというのと戦えるというのは違うだろう」


「もしかして魔物に翻弄されて満足に戦えないかもしれないと?」


「そういうことだ」


 大型の魔物に対抗させるべく呼んだんだけどな。

 MAは見た目と違ってかなり軽く機敏に動けるので大型ではない魔物にも対応可能だ。

 軽いと逆に大型種と戦えるのかという話になりそうだが、そちらも問題はない。

 CWOの設定では機体制御のために簡易的な重力制御装置が内蔵されている。

 ゲームではないこの世界アルスアールでは重力制御装置は魔道具に置き換わっているけど。

 物理的な衝突に対抗するためにも使用されるので魔物相手に白兵戦で力負けなどしない。


「言ってるそばからお出ましのようだな」


 ズシンズシンという重い足音が聞こえてくる。

 その姿は森の木々に遮られて明確には見えないものの大型の魔物であるのは間違いない。

 真っ直ぐこちらに向かっているのはエルフたちの魔力を嗅ぎつけたからだろうな。

 こちらは気配を消すように魔力を隠蔽できるから奴には感知されていないはず。

 俺たちがこれ見よがしに魔力をさらけ出した状態にすると魔物ホイホイになりかねないのでね。

 闇夜の灯台にはなりたくない。


 それよりも現状で気にすべきは足音の主であろう。

 接近してくる魔物の姿が見えるようになるとリケーネの民たちが息をのんだ。

 凶暴そうな面構えよりも大きさの方にビビったんだと思う。

 森の木々をなぎ倒しながら突き進んでくる姿は迫力満点だからな。

 それと足音に伴う地響きも伝わってくるようになったし。


 見た目は二足歩行するイノシシといったところか。

 ボアウォリアーというオークのイノシシ版が巨大化した魔物だ。

 通常サイズでも凶暴性はオークよりも上で退くことを知らない戦闘狂という厄介な相手である。

 突然変異によりVMAを一回り上回る背丈まで大型化したみたいだ。


「大丈夫なのか?」


 リーアンが俺の隣に来て小声で確認してきた。

 スタンピードの魔物を見た時とは別の意味で圧倒されたか。


「倒すだけならな」


 含みのある俺の返答にリーアンが顔色を失う。


「何か問題でも?」


「パニックを起こさないようにしてくれれば何も」


 クモの子を散らすような状態になってしまうと、周辺へも配慮しなければならなくなるからな。

 魔物との戦闘に勝利してもVMAがエルフを踏み潰してしまっては意味がない。


「わかった。そっちは任せてくれ」


 硬い表情ではあったがリーアンは力強く頷いて返事をした。

 すぐさま持ち場に戻って仲間に指示を出す。

 決死隊には前面に出て風の結界魔法を展開させる。

 その他の戦闘員には周囲への警戒を。

 非戦闘員は結界から出ないように。


 決死隊の面々は指示に従って即座に動き始めた。

 練度に差があるのは仕方あるまい。

 彼らの表情から察するに巨大化した魔物に対する恐怖心が皆無とは言えないはずだが、その行動は素早く的確でモタつく様子は微塵も見られなかった。


 一方で他の戦闘員はどうにか踏ん張っているように見受けられた。

 スタンピードを見てきたか否かで度胸に差がついたのかもな。

 残りの面子は震え上がっているものの我を忘れるほど恐怖に囚われている者は見当たらない。

 ギリギリっぽいけど、しばらくは持ちこたえられそうだ。


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