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58 ユート、泡を食う?

「好きにやりたいなら遠征してもらうことになるぞ」


「その手があったニャー!」


 レイは俺の提案にサクッと乗ってきた。


「行ってくるニャ~」


 許可も出す前からシュバッとダッシュで飛んで行った。


「あーあ、行っちゃったよ」


「よろしいのですか?」


 渋面を浮かべてケイトが聞いてきた。


「しょうがないさ」


 俺は肩をすくめながら答えた。


「近場で好き勝手に暴れられるよりは、よほどマシだからな」


「あー……」


 俺の返答にケイトが諦観を感じされる嘆息を漏らしながら苦笑した。


「最適解」


 スィーがフォローするように言ってきた。


「ストレス解消すれば納得して帰ってくる」


 無理に引き止めて余計な手間を増やされるより仕事をさせた方が有益であるというのが俺とスィーの共通見解だ。

 ケイトは不服そうにしているけど一応は納得しているからか何も言わない。

 心情的には小一時間はレイを問い詰めたいところなんだろうけど、個々の性格から来るギャップだからなぁ。


「気にするだけ無駄」


「ぐっ」


 スィーに指摘されてケイトが悔しそうに拳を握りしめつつ歯噛みした。

 腹の中では煮えたぎったものが残っているに違いない。

 すぐに表情を消して能面のような顔をした切り替えは見事という他ないけど。


「あれは後でケンカになるな」


 結局、面倒事の火種はできてしまった訳だ。


「いつものこと」


 スィーは止める気がないようだ。


「ほどよくケンカさせておくのが吉」


 ネズミと猫が擬人化した外国アニメのようなことを言ってくれるじゃないか。

 とはいえ、スィーの言うことにも一理ある。

 今は怪我をしても魔法で治せるので治療費は不要だし使った魔力もすぐ回復する。

 ストラトスフィアの中で器物損壊がなければ少々のことは目をつぶろう。


「念のためにレイにはドローンを付けておいてくれるか」


「はい、それは既に実行しています」


 ケイトの言うとおりドローンが予備機を含め近中距離で監視できる位置に付けられていた。

 過保護なくらい多くて笑ってしまいそうになる。

 指摘すれば、こういう場合のレイの行動が信用できないとかなんとか言うだろうけど心配していることはお見通しなのだよ。

 素直じゃないね、まったく。


 ケンカを始めたら思う存分に暴れられるよう創天神様たちに頼んで亜空間に放り込んでもらうのも手か。

 俺たちがいくら龍の素材でできていたとしても自力で亜空間に入り込めないからね。

 そのうちコツを掴んで出入りできるようになりたいとは思う。


「ユート」


 不意を突くような形でスィーに呼びかけられた。


「どうした、何か問題でも発生したのか?」


 スィーはゆったりした動作で頭を振った。

 緊急事態ではなさそうだが、表情は微妙に渋めなので問題なしとは言えなさそうだ。


「これから問題になる恐れがある」


 何だろうと情報を整理しつつ首を捻って考えてみるものの思い当たる節がない。


「エルフたちにVMAのことを説明しておいた方がいい」


「OH!」


 それを忘れていた。


「それ、ヤバいやつやん」


 焦ったせいか、つい関西弁が出てしまった。

 見上げるような巨人が鎧をまとっているように見えるだろうしパニックになるのは必定である。

 VMAに人が乗り込んで操縦するなどリケーネの民たちに想像できるはずもないだろう。

 ましてオートパイロットで運用すると襲われると誤解されかねない。


 とにかく、エルフたちを恐怖のどん底に突き落とさないようにするのが先決だ。

 ケイトもそのことに気付いたようで顔色を変えて焦っている。


「もう大気圏に突入しましたよ」


 到着なんてあっという間じゃないか。

 仕事が早いのも考え物だ。


「ギャー! どないすんねん!?」


 動揺がリミッターを超えているせいで関西弁が継続中だ。


「落ち着け、ユート」


 焦るそぶりすら見せないスィーに側頭部をチョップされてしまった。


「うっ」


 思わず声が漏れ出てしまったがダメージを受けるほどのものではない。

 ただ、暴走状態にあった俺のハートにブレーキを掛けてくれる効果はあったと思う。


「すまぬ」


 まだ喋りがおかしいが、どうにか思考する余裕は戻ってきた。

 ゴーグルを通じて網膜投影される情報を読み取りVMAに指示を出す。

 光学迷彩を使用し上空で待機っと。

 これで、とりあえずは大丈夫なはず。


「ケイト、リーアンたちの所へ行ってVMAのことを説明してきてくれないか」


「えっ?」


 この期に及んで、まだVMAを使うのかと言いたそうな目で見られてしまった。


「どうせMA用の揚陸艇も見せることになるんだ。遅かれ早かれ結果は同じだ」


「はあ」


 ケイトの反応が鈍い、というか渋い。

 どう見ても乗り気ではないのがありありと分かる。


「どう説明すれば良いのですか?」


 それで躊躇っていたのか。

 これは俺の配慮不足であるのは言うまでもない。


「すまんな、失念していた」


「いえ」


「とりあえず俺たちが召喚した味方だとでも言っておけばいいさ」


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