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44 俺たちは神様じゃない

「俺たちは神様じゃない」


 うちには本物の高位神がいるけどね、という言葉は飲み込んでおいた。

 言えばややこしいことになるのは明白だからだ。

 俺たちのことを亜神だの天使だのとリーアンたちが言い出す恐れもあるし。


 仮に人だと認識してくれたのだとしても神の使者なんて誤解されそうだ。

 そういう事態は極力回避したい。

 したいのだが、角刈りくんはおろかリーアンも俺の言葉を信じているようには見えない。

 再土下座組も微動だにしないところを見ると同じ考えなんだろう。


 だとすれば頼れる相手は最初から土下座していなかった残り1人である。

 ただ、出会って間もない相手が何を考え、どう思っているのかなど読みようがない訳で。


「リーファン、だったよな」


 俺は不安を抱えながら呼びかけてみた。


「ええ、はい」


「君は俺たちが神様だと思っているのか?」


 この問いかけは半ばかけだったのだが……


「いいえ」


 リーファンは落ち着いた様子でしっかりと否定してくれた。

 内心でホッと胸をなで下ろす。

 背後の空気が少し緩んだ感じになったので3人も俺と同じ心境だったのだろう。


 だが、目の前の状況が解決した訳ではない。

 リーファンたちの里の行く末が気がかりで声を掛けたのに、その話は始まってもいないのだ。

 それどころか土下座のせいでスタート地点にすら辿り着いていない有様である。


 ただ、土下座していた面々が驚いて上体を起こしリーファンをガン見している。

 リーアンも角刈りくんも大きく目を見開いて土下座組と同じようにリーファンを見ていた。


「それは……精霊が?」


 リーアンが探るような感じで問いかけた。

 周囲の面々は固唾をのんで見守っていている。


「ええ」


 リーファンは仲間たちを少しでも落ち着かせたいのか、ゆったりした所作で頷いてみせた。


「この人たちは人だって言ってる」


 その言葉にどよめきが起きた。

 それだけ決死隊の面々にとっては衝撃的な言葉だったということか。

 俺たちにとっても衝撃的だったけどな。

 思わず4人で額を突き合わせるようにしてシュバッと円陣を組んでしまったさ。


「精霊だって」


「スピリチュアルですね」


「さすが異世界ニャ~」


「精霊と会話が成立しているということは巫女のような存在?」


 ケイトやレイの漠然とした感想に対してスィーは冷静に分析し疑問を口にしていた。


「単に特殊な能力を持っているだけという可能性もあるな」


「ギフトってやつニャ?」


「聞いてみないと分からないでしょう」


「じゃあ、確かめてみるニャ~」


「あっ、ちょっと!」


 ケイトが止めようとしたがスルリと躱してリーファンの方を見たレイが何やら唸り出した。


「何やってるんだ?」


「精霊を見ようとしているニャ。姿が見えないと会話できないニャ」


「聞くってそっちかよ」


 この調子では見えてはいないようだ。

 だが、行動を起こす上でのヒントにはなった。

 試しに俺は両目に魔力を流し込んでみた。


「あ、見えた」


 リーファンの周りを半透明の小人が飛び回っている。


「なんでニャー、どうするニャー」


 すがりつくように懇願してくるレイ。


「目に魔力を流し込んでみろ」


「ニャハー、見えたニャー」


 すぐにはしゃぎ始めたものの会話には至らなかった。

 当初の目的を失念し精霊が見えたというだけで満足してしまったようだな。


「確かにいますね」


「興味深い」


 ケイトとスィーも続いたが、この両名も会話をしようとは思わなかったらしい。

 まあ、その時間もなかったとは思う。

 向こうは向こうで身内の話し合いをしていたけど、それもサクッと終わったみたいだからね。


 おかげで先程までの土下座はなんだったのかと思うくらい話が進み始めた。

 軽い自己紹介と礼を言われてって感じだ。

 そのついでに聞いてみたけど、俺たちの魔法を見て彼らは神様だと思い込んでしまったらしい。


 次から人前で魔法を使う時は気をつけるとしよう。

 今後の予定なんて綺麗さっぱりな白紙状態なんだけどね。

 何にもする気がないって訳じゃなくて、やりたいことが色々ありすぎて選べていないのが現状だ。


 冒険者なんてリスト上位に来るだろうな。

 VRのRPGでしか経験がないからリアルだとどう違うのかというのには興味がある。

 狩りを含めたサバイバル関連は簡略化されていたからな。

 そういうこともあってファンタジー系RPGのFFOだけじゃなくサバイバルに特化したシミュレーター系のSMOなんかにも手を出していたのだ。


 まあ、他にもあれやこれやと興味本位でプレイしていたけどね。

 各ゲームの組み合わせで考えると、そこまで大きなギャップを感じたりはしないのかもしれない。

 現にSF系のCWOやレース系のWROをやりこんでいたお陰で乗り物関連の操縦に関しては何の問題もなく対応できている。

 それでも冒険者は予想外のことが起きる予感を拭いきれなくてワクワクするんだよな。


 あと、魔道具とかも作ったりとかしたいし。

 物作りは爺ちゃんの影響でプラモデルからちょっとした家具まで趣味で色々と作っていたんだよな。

 半身不随になってからゲームの中でしか細かな作業ができなくなっていたからウズウズしている。

 おまけに魔法のある世界に来たんだから魔道具を作ってみたくなったのだよ。

 社会に混乱を起こさない程度の簡単なものを売りに出してみるのも面白そうだ。


 そういう意味では商売にも興味はある。

 さすがに専業でやっていくほどの熱意はないけれど。

 そんなことを頭の片隅で考えながら俺はリーアンたちと話を続けていた。


「じゃあ、今から里に帰るんだな」


「ああ。里の者は明るくなってから避難を開始するはずだ」


「その方が安全か」


「急げば皆が出発する前に合流することができるだろう」


 準備や後始末を考えれば日が昇ってから移動を開始するというのは妥当な判断か。

 子供や老人もいるだろうし着の身着のままで逃げたりはしないだろう。

 里の住居を焼却したのは魔物に利用されないよう後始末をするためのはず。

 リーアンの発言からすると何かしらの合図も兼ねているんだと思う。


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