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39 ケイの考えた殲滅方法

 魔法を駆使しながら魔物をガンガン倒して食材調達を進めていく俺たち。

 言うまでもないことかもしれないが湯水のように魔力が消費されていく。


 ただし、目にもとまらぬくらいの勢いでカウントされるのは一千万分の1の位だ。

 一万分の1の位だと比較的緩やかなペースで増減を繰り返す感じ。

 そのあたりはMPの回復ペースに合わせて上手くコントロールしている。


 そこまでしなくても俺が食材調達を終えるまでに数千万ポイント分のMPを消費したとして、実際に削られるMPは数ポイントだ。

 現在の俺の総MPポイントは76.73なので常時回復の分を無視しても1割未満しか減らない。


 今は回復ペースを考慮しているので終了後に休憩する必要もないだろう。

 石橋を叩いて渡るどころの話ではないとは思うが、これも訓練の一環。

 いざという時に備えて色々と試しておくのは悪いことではあるまい。

 いくら体は龍の素材でできていたとしても力業で通じない相手が出てくるかもしれないし。

 油断や慢心は良くないのだよ?


 やり過ぎに注意しつつも舐めプしないよう真面目にやっていたら、さほど時間を掛けず目的の食材を狩りつくしてしまった。

 自生植物が相手だったら乱獲だと非難されることは必至の状態だ。

 え? 大袈裟だって?

 俺たちだけで消費しようと思ったら何年かかるかってくらいの分量なんだぜ。

 幸い、食材は時間が停止状態の亜空間に収納したので腐らせる心配はない。


 とにかく一仕事終えたので、ケイトの待つ山頂へとヒューンと飛んで戻っていく。


「お待ちどおさま」


 俺が帰還の挨拶をするとケイトは面食らった様子を見せた。


「え? あ、はい」


 そのせいか生返事だ。

 思ったより早く戻ってきたということかな?


「たっだいまなのニャ~」


「あー、はいはい」


 狩っていた時のテンションの余韻を残しているレイに対しては素っ気なく応じてるし。


「食肉の確保、完了」


「了解」


 淡々としたスィーに対しては同じような調子で返事をしていた。


「それじゃあ最後の仕上げだな」


 レイは食材確保で満足したのか手出しする気を無くしたようだ。

 ホント気まぐれな元猫である。

 それを見たケイトが小さく溜め息をついた。

 自分がやるしかないと思ったのだろう。


「お任せください」


 元よりケイトに任せるつもりだったから頷いておく。


「魔力を補充するアシストが必要なら言えよ」


 その心配はないと思うのだが念のためってやつだな。


「ご心配なく」


 自信ありげにケイトが笑った。


「待っている間に準備を進めておきましたから」


「ん? 準備だって!?」


 ケイトに言われてハッとさせられた。

 致命的な失態ではないかもしれないが食材調達に夢中になりすぎたな。


「あれを」


 ケイトは気にすることもなく斜面の方を指差しながら言った。

 気を遣って意図的にスルーしたのだろうってことで乗っからせてもらうことにする。

 指差された先を見れば、氷の斜面の上半分がいつの間にか壁面になっていた。


「万里の長城みたいニャ」


 レイはそんな風に言ったが、それは俺たちの側から見ての話だ。

 谷側から見ればもっと高さのある代物になっていた。


「まるでダムね」


 スィーがそう評したように山側には氷の壁によって大量の泥がせき止められていた。

 この泥もケイトが準備したものに違いない。


「土石流で一気に押し流そうって訳か」


 自然災害を人工的に再現するという訳か。

 これほどスタンピードに対して効果的で効率的な攻撃方法もそうはないだろう。


 如何に狂乱した魔物どもであっても巨木や大岩さえも勢いよく押し流してしまう自然の力には抗えるものではない。

 大半は生き埋めになって残敵掃討も大した手間ではなくなるはずだ。


「いえいえ、それだけじゃあ討ち漏らしが出てしまうじゃないですか」


 わざとらしいほどニコニコした笑顔でケイトに否定された。

 土石流をも越える攻撃手段になることを確信している訳か。


「すっごく悪い笑顔ニャ~」


「黒いわね」


 元紀州犬なのに黒いと評されるとはね。

 なんにせよケイトは完全にスタンピードの魔物どもを殲滅してしまうつもりのようだ。


「土石流だと不充分、か」


 それ以上のものとなると……


「火砕流か」


 ケイトは不適にニヤリと笑みを浮かべた。


「そのものではありませんけど参考にはさせてもらいましたよ」


「どういうことニャー?」


 思わずといった調子でレイが聞いていた。


「土石流がもし高温だったらってことさ」


「えげつニャイことを考えるニャ~」


「その土石流の上の部分を超高温に熱された煙が一緒に流れていったら?」


「ドン引きニャー」


「念入り」


 レイが震え上がりスィーはやや目を丸くさせつつも感心していた。


「制御が大変そうだな」


 土石流は斜面を駆け下るだろうからいいとしても煙がこちらに流れてこないようにしな

いといけないもんな。

 熱の管理をミスれば俺たちはともかく決死隊の面々がダメージを受けかねない。


「そこは取りですからね」


 ケイトは不敵に笑った。


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