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19 ユート大地に立つ?

 お供の3人がいることから揚陸艇で地上に降下しましたよ。

 格納スペースが広めなので4人で使うには大きすぎるんだけど拠点にもできるからね。

 まあ、空間魔法を使えば格納スペースも不要なんだけど可変人型兵器じゃ4人で乗り込むことはできないし。


 何より野宿しなくてすむのが大きい。

 いずれはそういうのも経験することになるとしても、今はその時ではない。

 だから人目につかないよう人里から離れた険しい山中に降下した。


 仮に見られていたとしても周囲は岩で囲われており自然の要害が容易には人を近づけさせないだろう。

 自分たちから人のいる所へ向かうなら搭載機で移動すれば問題ない。


「光学迷彩の確認、完了しました」


 ケイトが誇らしげに胸を張って報告してきた。


「はいよ、ご苦労さん」


 俺がねぎらいの言葉を掛けるとケイトはパタパタと灰色の尻尾を振った。

 神様たちにリクエストしてまで獣人の姿にこだわって転生したんだそうだ。

 頭上の犬耳と腰の尻尾には誇りがあるのだろう。


 ちなみに創天神様と星界神様は母艦であるストラトスフィアで留守番だ。

 そういう名目で居座っているだけとも言う。


「アフターサービスってことでアバターを常駐させてもらうことにしましたー」


「ワシらの立場からすると、あまり手出し口出しはできんがのう」


 困ったことがあれば相談に乗るくらいはしてくれるだろう。

 現状で困るようなことは何も発生していないのだけど。


「広域外部センサーの設置完了したニャ~」


 元気よく戻ってきたレイが報告する。


「お疲れ」


「ニャハハ、疲れることなんて何にもしてないニャ」


 笑いながら返事をするレイ。

 そこにレイと同様に外に出ていたスィーが戻ってきた。

 ただし、分担された役割はレイとは違って上空からの偵察だ。


「半径5キロ圏内、問題なし」


 こちらは淡々と報告してくる。


「ご苦労さん」


「ん」


 返事も素っ気なくて無表情のように思えるが、実は機嫌がいいのは分かっている。

 照れ隠しで微妙にそっぽを向くクセはカラスだった頃の彼女と同じままだ。


 何はともあれ下準備は完了したので地上での調査検証へと移行できる。

 とはいえ、そう難しいことをするわけじゃない。

 魔物を見つけて戦闘しながら加減の仕方を覚えるだけのことだ。


 経験値は稼げないだろう。

 体が龍の素材でできているのは俺だけじゃないからね。

 それでも地上でやることには意味がある。

 せっかく生まれ変わって異世界に来たんだからコミュ障まっしぐらな引きこもりは回避したい。

 できれば冒険者とかやってみたいし生産活動も興味がある。


 それに備えてドローンを使った情報収集をしている最中だ。

 この世界の常識なども俺たちが訓練している間に多少は得られるだろう。

 龍の知識はあるけど、常識に関しては偏りがあったりするからね。


 一般人が知らないような難しいことを知っていても最近の出来事とかは分からないし、人の風習なんかにも疎い。

 通貨の価値なんかが分からないのは特に困る。

 龍が溜め込んでいた金銀財宝があるから不自由することはないとは思うけどボッタクリは御免被りたい。

 ましてや取引相手に騙されて陰で馬鹿にされるなんて嫌なものだし下調べはしておかないとね。


「それじゃあ魔物を探して修行といきますか」


「はいっ」


「おー」


「了解」


 俺の言葉に三者三様の返事で応じたケイトたち。

 そのまま特に何か準備をすることもなく揚陸艇の外に出た。


「ユートはさー」


 外に出るなり声をかけてきたのはレイである。


「何だ?」


「武器とか用意しないのニャ?」


 レイに言われて初めて気がついた。


「……忘れてた」


「何だ、そりゃー」


 奇妙なポーズでずっこけるレイ。

 そう言えば、爺ちゃんが好きだった昔のギャグアニメに何かというと今みたいなポーズで踊る小太りな王子がいたな。

 ビデオテープで録画したものを俺やレイは何度も見せられたから嫌でも覚えている。

 あれに影響されるとは思わなかったけど、今は武器をどうするかの方が大事だ。


「レイたちも武器は持ってないだろう?」


 俺がツッコミを入れて切り返すとレイは不敵な笑みを浮かべる。


「甘いのニャよ、ユートくん」


 人差し指を立てて左右に振っているが、何処でそういうネタを仕入れてくるのかと思ったさ。

 そこはかとなく昭和の雰囲気があるから爺ちゃん婆ちゃんでほぼ間違いないんだろうけど。


 そして気がつけば3人とも武器を手にしていた。

 言い出しっぺのレイは鉤爪だ。

 猫っぽいと言えるかもしれない。


 ケイトは幅広のトンファーっぽいものを両手に持っていた。

 重量が増すから打撃力が増すのはもちろん、シールドとしても積極的に用いるようだ。

 それと先端は鋭く尖っているので突き刺すことも想定している。


 スィーは小太刀の二刀流で腰の後ろ手十文字に差している。

 元ネタがありそうだけど気にしたところで強さが変わりはしないのでスルーだ。


 気にするべきは当人が使いこなせるかどうかだ。

 使い始めたばかりだから合わなければ変更することもあるはずだ。


「俺も何か持つべきか」


「そうニャ」


 もっともだと言わんばかりにレイが頷いた。


「素手だと拳が血で汚れたりするニャ」


「なるほど」


 殴った時に加減を間違えれば、きっとそうなってしまうだろう。


「じゃあ俺はこれにしよう」


 そう言いながらその辺に転がっていた大きめの石を拾って地属性の魔法で変形させていく。


「剣の柄だけ作ってどうするニャ?」


 ちょっとゴツいめに加工したので見ようによってはナックルガードのついた剣の柄に見えるかもしれない。


「鉄甲だよ」


 類似する武器だとナックルダスターなんかがある。

 あちらは指をはめ込むリングが連なっている点が異なるんだけど拳の代わりに殴るのは同じだ。


「石だとすぐに壊れるニャ」


「魔法で硬化させたから下手な金属より頑丈だぞ」


「それは凶悪な武器だニャー」


「どうだかな?」


 加減を覚える前だから素手で殴っても凶悪な結果になりそうだけど。


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