17 ゼロじゃない
「あの程度のゴーレムが相手で経験値なんて入ってくるんですか?」
驚きを禁じ得ない。
「もちろんじゃ」
創天神様はさも当然と言わんばかりの様子で鷹揚に頷く。
「ステータスを開くと分かるわよ」
星界神様がそんな風にフォローしてきたので言うとおりにしてみた。
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Name:ユート・ギモリー
Rank:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
TLv.:9.000412904
HP:69.02|69.02 MP:76.73|76.73
STR:13/2 MAG:15/9
VIT:10/1 INT:13/9
AGI:13/2 DEX:11/1
* ability(figure/SLv.)
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「総合レベル9ぅ~~~~~~~~っ!?」
それだけではなくてステータスレベルも一部を除き上がっていた。
おまけに総合レベルの方は小数点以下の細かな数値までついている。
おそらくは、これが俺の得た経験値なんだろう。
その桁数からすると固定された値を単純に加算している訳ではなさそうだしどういう計算をしているかはわからない。
わかることは経験値が整数部分に桁上がりした時にレベルアップするのだろうということくらいか。
この推測が正しければ次のレベルアップは当面なさそうだ。
それよりもランク10なのに総合レベル9まで上がったことの方が衝撃的だった。
レベル2に上げられるのかと懸念していたくらいだし青天の霹靂だったと言っても良い。
「相手はゴブリン相当でしたよね?」
思わず神様たちに問いかけてしまったさ。
獲得経験値が0ということも無いとは言えないと思っていたからね。
ところが星界神様がケラケラと笑い出した。
「格下だったのは事実だけど万を超える数の相手を一度の戦闘で全滅させたじゃない」
「いや、まあ……、そうですけど」
歯切れの悪い返事になったのは、いくら積み重ねても0は0じゃないかと思っていたからだ。
腑に落ちるはずもない。
「同格相手なら800体ほどで同等の経験値を獲得できたのよ」
「はあ」
「2ランク下だと経験値の上では、こんなに差が出ちゃうのよ」
よくよく考えるとゴーレムの行動パターンはゴブリン並みではあったがランクは8だった。
「なら本物のゴブリンが相手だったら……」
「そうねえ、レベル2にもなれなかったわ」
たとえ雑魚の代名詞と言われるようなゴブリンであっても経験値は得られるらしい。
そのことが逆に興味を引いてしまったので、思い切ってどういう条件で経験値が得られるのか詳細を聞いてみた。
「ああ、それはね──」
星界神様はあっさりと教えてくれたので俺は拍子抜けした。
それによると、そこそこ面倒な計算が必要になるようだ。
敵の数や全滅させるまでに要した時間も加味されるらしい。
もちろんランク差もね。
こちらは計算で係数を導き出して基本の経験値に掛けるそうだ。
ひとつランクが違うだけで倍ほども違ってくるという話があったけど、これが根拠になっているみたい。
最終的に得られる経験値は敵や味方の頭数やレベルなんかも計算式に盛り込まれるという話だった。
確かに今回の条件でレベル9になる。
ちなみに現状からレベルアップするには3千体近くのジェイドゴーレムを倒す必要があることも判明。
「納得した?」
「ええ、経験値の話は」
「あら? 何がご不満なのかしら」
「不満という訳じゃないんですけどリアリティに欠けるというか……」
「そのへんはお詫び代わりのボーナスステージじゃよ」
「お気遣いいただきありがとうございます」
「お詫びなんじゃから礼など無用じゃよ」
「そうそう、あまりにレベルが低いと他人に侮られることになるじゃない」
冒険者稼業なんかをする場合、中堅どころの冒険者がルーキーを侮ってちょっかいを出すとかテンプレだよな。
「子供ならいざ知らず成人した──」
星界神様の語り出しを聞いて、ここが異世界なんだと身に染みる思いがした。
16才として転生したけど大人として見られるのかと。
一方で現代日本人の感覚が残っていたことに軽い驚きがあった。
ゴーレムとの戦闘で萩守勇斗だった頃の意識が薄れている自覚があったのでね。
人の形をしたものを破壊し尽くしたにもかかわらず忌避感とかなかったし。
生身の魔物と戦えば忌避感がどの程度のものか判明するだろう。
そう考えると経験値はゼロに近いのだとしても戦ってみる価値はあると思う。
「──大人が舐められると面倒事に発展しかねないわ」
その話も身に染みている。
「そうですね」
元上司がそんな感じだったから。
あの男に被った迷惑は面倒事どころの話じゃなかったけど。
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