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15/130

15 思った以下だった?

 スパスパと次々に切り落とされていくゴーレムの首。

 そこから徐々に魔法の威力が落ちていくだろうと見ていたが、その気配が感じられない。

 数十体ほど戦闘不能の状態にしたにもかかわらず減衰する様子が見られないのだ。


「んー、どういうこと?」


 迫り来るゴーレムの群れを体術で去なし吹っ飛ばしながら首を捻る。


「魔力、込めすぎなのよぉ」


 星界神様からツッコミが入った。


「ええーっ」


 ソニックブーメランの基本消費量の倍にした程度で込めすぎってどういうことなのか。

 そう思ってMPの表示を確認してみた。


[MP:43.29]


「……は?」


 込めすぎどころか1ポイントも減ってない。

 小数点以下だって同じままだ。


「どういうことぉ?」


「回復したに決まってるじゃない」


 またしても星界神様にツッコミを入れられてしまった。


「回復したって……」


 FFOの時とは大違いだ。

 4ポイントのMPを1分とかからず回復するなど考えられないことだからな。

 ポーションを飲んだとかならともかく余計なことは何もしていない。

 ゴーレムとの戦闘中ってことで休息すら取ってない訳だし。


 ヒュン


 不意に風を切る音がした。

 見れば弧を描いて飛んでいたソニックブーメランが俺めがけて飛んで来る。


「おっと」


 慌てて飛び退き自分の魔法に切り裂かれるようなドジは踏まずにすんだ。

 殺傷範囲ギリギリをかすめていったソニックブーメランがゴーレムを切り裂いていく。


「想定以上に切れ味がいいな」


 このままだと2周目以降でヘマをしかねないという訳でキャンセルだ。

 俺が念じると不可視のブーメランは消滅した。


 些か勿体ない気がしないでもないがMPは満タン状態なので、さほど気にはならない。

 そもそもMPがどれだけ減るのかを確認するために魔法を使った訳だしな。

 そういう意味では確認し直す必要があるだろう。

 もうMPは回復しているはずだ。


「ソニックブーメランは……」


 安全面を考えれば無しだよな。

 MPの変化を見逃さないために次々と押し寄せるゴーレムとの攻防を気にせずに済む魔法がベストである。

 攻撃し続ける持続性もあれば、なお良しってところかな。


 となると最適解は──


「ホイールスライサー!」


 属性は風で形状はチャクラムっぽい。

 術者を中心に回転し続ける魔法だ。

 そのためサイズは最小でも自転車の車輪より大きいのだが。

 腰の動きで振り回して遊ぶフープが自動で回っているイメージか。


 消費するMPは4ポイントからだが、サイズを少し大きめにするために倍以上の10ポイントをつぎ込んでみた。

 これなら回復するにしても多少は時間がかかるはずという目論見もあってのことだ。


 そうして風の魔法が俺の腰回りに土星の輪のように展開された。

 最小サイズで発生し水面に生じた波紋のごとく同心円状に広がり始めた不可視の刃。

 瞬く間に数十体のゴーレムを真っ二つにしたが、引っかかりなどは一切なくスルスルと広がっていく。


「デカッ」


 直径どころか半径で軽く10メートルを超えてしまった。

 なおも広がっていくのは想定の範囲外だ。

 他人を巻き込みかねないからFFOでもあんまり使ったことないんだよな。

 俺はソロプレイ専門だったけど問答無用で周囲を巻き込むのは良くないだろう?


 そんなことよりMPの確認である。

 今度は抜かりないよ。

 最初から見ていたから魔法を使った時点で減少したのは確認済みだ。


[MP:43.2899990]


 冗談かと思うほど少ない減りようだった。

 唖然とする間もなく──


[MP:43.29]


 サクッと回復していたし。

 某刑事ドラマの殉職シーンを思わせる「なんじゃ、こりゃあっ!?」という言葉が喉元まで出かかったほど早かった。

 1秒とかかっていなかったもんな。


 唖然とするしかなくて、しばし呆けてしまったほどだ。

 相手がゴブリン相当の中身しかなくて助かった。

 でなきゃホイールスライサーを避けて飛び込んでくる知恵があったかもしれないからな。


 何段にも分けて同時発動させていれば対策できたんだけど、そこまで考える余裕はなかった。

 そのくらい衝撃的だった訳だ。

 ランク3の魔法をランク10の俺が使うとこうなる訳だ。

 MPの減りが少ないのも回復が異様に早いのも頷けるというもの。

 おかげで、さほど間を置かずに我に返ることはできた。


 ホイールスライサーは未だに半径数十メートルを維持したまま突っ込んで来るゴーレムどもを真っ二つにし続けている。

 翡翠って堅いはずなんだけどな。

 この調子だと実際の魔物を相手にする時の加減とか凄く難しそうで頭が痛くなってくる。


「ねえ、ユートくん」


 自動でゴーレムが片付いていく状況にかまけて俺は考え込んでしまっていた。


「ねえっ」


 心境としては頭を抱え込みたいところだ。


「ねえってば!」


「うわっ!?」


 不意に聞こえてきた大声に思わず仰け反ってしまった。


「何ですか? 脅かさないでくださいよぉ」


「何度も呼んでるのに返事をしないユートくんが悪いんでしょ」


 星界神様はブリブリ怒っているが、そんな指摘は初耳である。


「へ?」


 間抜け顔をさらしてしまったのは言うまでもない。


「寝耳に水だったみたいね」


「うっ……」


 不意打ちという意味では否定しようがなかった。

 あまりにも隙だらけで恥ずかしいことこの上ない。


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