14 無茶振りじゃね?
ランクの差というのは思った以上に大きいようだ。
1ランクで2倍という単純計算はしない方が良さそうである。
本物の魔物を相手にする時は相当に気をつけないと、リアルきたねえ花火を披露することになりそうだ。
「あらら、御機嫌ななめね」
俺が渋い表情で黙り込んでしまったせいか星界神様が俺を見て苦笑する。
「考え事をしていただけですよ」
「ランクが低い相手と戦う時の力加減についてかしら?」
「ええ、まあ」
「そんなの考えるだけ無駄よ、無駄」
人が真剣に悩んでいるというのに脊髄反射的なスピードで否定してくれましたよ。
「そりゃないでしょう」
「考えている暇があったら数をこなして体で覚えなさいってことよ」
そう言って星界神様が召喚魔法を使った。
今度は召喚魔方陣がポコポコと現れて目の前の白い床を埋めていく。
「もしもしぃ?」
数をこなすべしという星界神様の主張そのものは頷けるものだ。
が、見渡す限り召喚魔方陣というのは如何なものか。
ザッと見ただけでも万に達していそうなんですが?
「大丈夫だって」
にこやかに笑いながらそんなことを言われてもね。
戦う俺の身にもなってほしいんですが?
抗議するだけ無駄だろうしジェイドゴーレムがうじゃうじゃと湧き出てきたのでそれどころではなくなってきた。
「ワシらのことは気にせず存分に暴れるとええ」
「創天神様まで……」
「特殊な霊体になって見学させてもらうから物理も魔法もドンとこいってね」
星界神様の言葉に2人を見れば、いつの間にか半透明になっている。
さすがは神様だ。
そう言えば神様って数える時は柱なんだっけ?
面倒だから人でいいや。
この2人、やたら人間くさいし。
「ズルい」
「ズルくないわよぉ」
星界神様が唇を尖らせる。
ほらね、こういうところが人間くさいんだよな。
「ボーナスステージだと思って頑張りなさい」
「意味がわかんないんですけどぉっ!」
語尾のタイミングでズドンと一発。
手近な召喚陣から現れたジェイドゴーレムに体当たりのような肘打ちを入れた。
ゴーレムの体が浮いて吹っ飛び召喚された他のゴーレムを巻き込んでガシャガシャと派手な音を立てながら放射状に倒れていく。
「あらぁ、派手ねえ」
「まるでボウリングじゃな」
創天神様の言う通り確かにボウリングを彷彿とさせるような光景だった。
ただし、倒れたゴーレムの数は普通のボウリングとは比べものにはならないが。
一部は全壊状態になってるし。
中には腕や足が千切れ飛んでいるゴーレムもいた。
「え~、ドミノの方が近くないかしら」
「ドミノはあんな風に派手に飛んだりせんじゃろ」
何を言い合ってるんだか。
「ボウリングのピンはあんなに沢山ないですよーだ」
おまけに直接ピンを倒したんじゃ大ファールもいいところである。
「家庭用ゲーム機で見たことがあるぞ」
「はいはい、それくらいにしてくださいね。こっちはそれどころじゃないんだから」
初っ端から派手にやったとはいえ所詮は数百体を横倒しにしたのみ。
贔屓目に見積もっても数%が関の山である。
それよりもはるかに少ない数を仕留めたり損傷させたにすぎないのだ。
余裕を噛ましてなどいられない。
「これ全部、壊さないといけないのか-」
思わずゲンナリして溜め息が漏れ出してしまったさ。
にもかかわらず──
「魔法を使うと楽かもねー」
星界神様はアドバイスしているつもりなんだろうけど地味にイラッとした。
「あのですねっ、こっちはレベル1でMPも少ないんですっ!」
残存するゴーレムすべてを魔法で始末できるとは到底思えない。
「大丈夫だってばぁ」
何でもないことのように軽い調子で言ってケタケタと笑う星界神様。
「──────────っ!!」
あまりの無神経ぶりに眉間にシワが寄っても仕方がないだろう。
それどころか、こめかみに青筋が浮かび上がるのが自覚できるほどだった。
「MPが少ないから全滅させられないと思っているんだったら勘違いもいいところよぉ」
「はあっ!?」
「試しにMPを表示させながらFFOで使い慣れた初級の魔法を使ってみるといいわ」
釈然としないものを感じながらも話が進まないだろうと魔法を使ってみることにする。
こんなやりとりをしている間もゴーレムたちは四方八方から俺に襲いかかってきていたので掌底や肘打ちで吹っ飛ばした。
とにかくMPの表示をさせよう。
[MP:43.29]
これが現時点での俺のMPだ。
初級の魔法とのリクエストだったが無駄打ちするつもりはない。
ゴーレムを仕留めるにしても単発で1体のみなんて効率が悪すぎる。
という訳で多少の燃費の悪さに目をつぶり、MPをつぎ込めば持続性を上げられる魔法を選んだ。
FFOの時は単体を攻撃するなら2ポイントで充分だったはずの魔法だ。
ならば倍くらい長持ちしてくれれば十体は戦闘不能にしてくれるだろうってことで、感覚的に4ポイント分の魔力を込めてみた。
上手く制御すれば数十は倒せるかもしれない。
「ソニックブーメラン!」
風魔法で構成された見えないブーメランを射出した。
別に呪文とかを唱える必要がある訳じゃなかったのだが気分の問題で叫んでみた。
創天神様たちに見られているので恥ずかしさはあるんだけど、ノリと勢いが欲しかったのだ。
とにかく射出した魔法が少しでも多くの敵を巻き込みつつ可能な限り長く維持できるように細かく制御して軌道を微調整する。
イメージとしては、なるたけ紙を水につけずに獲物をゲットする金魚すくいに近いかもしれない。
ソニックブーメランは間近に迫っていたゴーレムをかすめるようにして弧を描くように飛んで行く。
一瞬遅れてゴーレムの首が斜めに切り落とされた。
カマイタチってやつだな。
ソニックというよりはウィンドと呼称すべきなんだろうが、それについてはFFOの魔法を考えたデザイナーに言って欲しい。
たぶん某格闘ゲームの軍人の技に感化されたんじゃないかなとは思うんだけどね。
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