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「あのゴーレムが粉々にならないのはスペックが高いからよ」


「は?」


 星界神様の言っていることが意味不明だ。

 創天神様がゴブリンのデータを入れていると言ったのがウソだったとでも言うつもりだろうか。


「ソフトはゴブリンだけどね。ハードの方が高性能なのよ」


 星界神様が苦笑した。

 ゴーレムのボディが頑丈にできていたと言いたいのかもしれない。


「ちょっと違うけど、最新のパソコンで大昔のソフトをエミュレーションソフト上で動かしているようなものね」


 要はボディに見合った性能を発揮しないってことなんだろう。

 故に俺の速攻に反応できず頑丈さを証明するだけで終わってしまったと。


 まあ、頑丈だったという実感はないけどな。

 派手にぶっ飛んだのに打ち込みを入れた肘に痛みはないんだから無理もない。

 念のために軽く動かしてみたが鋭い痛みが走ることはもちろん、鈍く痛むようなこともなかった。

 そんな俺の様子を見て星界神様が不機嫌そうに唇を尖らせる。


「あーっ、信じてないわねえ」


 それに返事をするのを躊躇っていると……


「フォッフォッフォッ」


 創天神様が愉快そうに笑った。


「ステラの言うことは本当じゃよ」


「はあ」


「あのゴーレムを鑑定してみるがええ」


 創天神様に言われるがまま俺は鑑定してみることにした。

 一瞬、鑑定ってどうすればいいのかと思ったけれど特に意識するまでもなく自然にできたさ。

 俺の中にゲームのアバターのデータが入っているからだろう。

 ゲームで経験したことはスキルを要するものであろうとなかろうと関係なくすべて実行可能らしい。

 現在の総合レベルは1だったりするけど関係ないみたいだ。

 チートにも程があるとは思ったものの今はそんなことよりゴーレムの鑑定結果だ。


[×][ジェイドゴーレム Typeゴブリン]


 真っ先に飛び込んできた情報は×印のアイコンと吹き出しに書かれたゴーレムの正式名称だ。

 これは生き物で言えば死んでいることを意味し、ゴーレムのような無生物だと完全停止の状態だ。


 その証拠に──


[HP:0%][MP:0%]


 ゴーレムはHPだけでなくMPも0%の表示だ。

 ここまで確認した限りでは特に問題はない。

 ×アイコンが表示されるのも当然と言えた。

 こうなってくると簡易表示で得られる情報は残り少ない。


 詳細なテキストをまで見なければならないかと思ったところで肝心な情報を失念していたことに気付いた。

 ランクだ。

 こればっかりはプレイしていたVRMMOにはない概念だったからな。

 そんな訳でゴーレムのランクも確認してみたんだが……


[Rank:8]


「ランク8ぃ?」

 俺の踏み込みに反応できなくてゴブリンそのものって感じだったのにランク8?

 総合レベルの見間違いかと思ったさ。

 星印の表示じゃなかったし。


 まあ、見間違いなどではなくて単独で表示させる場合は簡略化して数値で表示される仕様のようだ。

 HPやMPにしたって自分の以外は%で表示されるようだし。


 いやいや、今はそんなことを気にしている場合ではないな。

 ゴーレムのランクが想像以上に高いのがどういうことなのかを考えるべきだろう。

 俺は例外中の例外ってことで除外するとして、普通の人間だとランクは3か4だったはず。


 それよりもずっと格上などということがあり得るのか?

 あるのだろう。

 にわかには信じ難い話だが鑑定結果はウソをつかない。

 星界神様が言っていた「最新のパソコンで」っていう話も、ここに来てパズルのピースをはめるように理解できた。


 納得はしたくないけどね。

 だって、随分と勿体ないことをしている訳じゃないですか。

 呆れて開いた口がふさがらないというものですよ?


 あー、訳が分からなくなってきたぞ。

 そんな感じで困惑した様子を見せる俺に星界神様が──


「それくらいしないと、きたねえ花火だをリアルで再現してたのよぉ」


 なんて追い打ちをかけてきた。

 言われてみれば、そういう話もあったな。

 リアルで再現するなんて嫌すぎるけど。


「いや、相手はゴーレムじゃないですか」


 血なんか流れていないんだから血飛沫をまき散らすようなことはない。


「だからリアルのゴブリンだと、そうなっていたって話よ」


「それにしたってランク8はおかしくないですか」


「そう? あれってジェイドゴーレムなのよ」


 どうも話がかみ合わない。

 普通のゴーレムじゃないのは分かったが、それにしたってランク高すぎじゃね?

 ちょっとやそっとじゃダメージの入らない金属素材じゃあるまいし……


 そもそもジェイドって何ぞや?

 生前の萩守勇斗の知識の中には、その情報はなかった。

 ゲームの中では出てこなかったしな。

 ただ、今の俺の体を構成する素材となった龍の方にはデータがあったようで疑問を抱いた瞬間に現物のイメージが頭の中に浮かんできた。


「翡翠?」


「そうよ。人間の間では緑の色が濃いほど価値がある宝石みたいね」


「そして硬いのが特長じゃな」


 宝石の中ではダントツの硬さを誇る。

 モース硬度だけならダイヤモンドに軍配が上がるものの靭性はサファイアやルビーと並び最高位に位置する。

 ようやくランク8であることに納得がいった。


 だけど創天神様はもったいないことを平然とやっちゃうよな。

 小型とはいえ宝石のボディを持つゴーレムを召喚してしまうんだから。

 簡単に壊れないようにしたければ金属素材でも良かっただろうに。


「硬いだけでお高い宝石を使うんですか?」


「違うわよ」


 わかってないと言いたげに星界神様が小さく頭を振る。


「翡翠って魔力を込めると簡単には壊れなくなるのよ」


「そういうことですか」


 これもゲームや地球の常識とは異なる点だな。

 宝石はパワーストーンの一種だなどと言われていても、そういう効果はなかった訳だし。


 いや、効果はあるのかもしれない。

 地球で魔法が使えるならば。

 とはいえ星界神様の話が事実であるなら疑問がひとつ浮上してくる。


「それにしては一撃で全壊したようですが」


「2ランク上のユートくんが本気を出したからでしょうに」


 そう言いながら星界神様がジト目を向けてきた。


「なるほど」


 ようやくランクの差というものを実感できた気がした。


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