121 後始末の方が手強いかもしれない
ウナギ魚人の討伐は呆気なく終わりを迎えた。
肉片のひとつも残すことなく消え去ったので復活することもないだろう。
念のためにイスカ爺ちゃんに確認を取ったら──
『ご苦労さん。心配せんでもええよ』
というねぎらいとお墨付きの言葉をもらった。
そんな訳で経験値が入ってきたんですが、お陰でレベルアップできましたよ。
ウナギ魚人がランク7の高レベルだったのと眷属がウジャウジャいたのが大きい。
しかも、リーアンやメイドロイドたちにも経験値が分配されたのは嬉しいね。
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Name:ユート・ギモリー
Rank:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
TLv.:10.450810583
HP:75.53|75.53 MP:82.69|82.69
STR:13/10 MAG:15/15
VIT:10/8 INT:13/12
AGI:13/11 DEX:11/8
* ability(figure/SLv.)
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ステータスはこんな感じ。
ただ、ウナギ魚人はダンジョン内に発生した魔物じゃなかったからドロップアイテムは得られなかった。
眷属を次から次へと生み出す様は生けるダンジョンと言えるほどだったけど。
もし奴が喋ることができたなら「俺がダンジョンだ!」とか言ったのだろうか。
何もない場所をダンジョン化できる存在ではないと、イスカ爺ちゃんも言ってたし結果は御覧の通り。
そんなことより翌朝までという限られた時間で後始末をしないといけない。
被害者たちの元へと向かった訳だが……
「遅いニャ。待ちくたびれたニャ」
頬を膨らませてプンスカ怒るレイ。
何事もなかったので暇を持て余したと言いたいのだろう。
「何処がよっ! 何時間も待たせた訳じゃないでしょう」
ガーッと噛みつくように吠えるケイト。
こんな所でもいつものパターンに持ち込んでくれるとはね。
止めるのも面倒なのでスルー決定。
向かい合っていがみ合う2人の脇をスタスタと歩き去る。
「ちょっと待つニャーッ!」
とか言ってたけど聞こえなーい。
ケイトが足止めしてくれたから特に邪魔されることなく目的の建物に入れましたよ。
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多くの亡骸はまとめて荼毘に付すことになった。
雑な扱いに思えるが神様のお墨付きである。
いくら龍の素材でできた体を持つ俺たちでも魂を成仏させられる方法までは知らないので問い合わせたのだ。
念話を使えば確実に問い合わせができる状態というのは、すごく助かる。
『一個所に集めて火葬するとええ』
「個別に土葬してはダメなんですか?」
『亡骸に亡者が取り憑いてアンデッド化しかねんからのう』
「なるほど」
『この子たちの魂は抜けてしまっているから個別に火葬する必要はないわよ』
ステラ様から説明が補足された。
という訳でお墨付きをもらった訳だ。
『ちゃーんと成仏させるから心配無用よ~』
最高位の神様とそれに次ぐ女神様のお墨付きなら心配ないだろう。
ステラ様はウッカリ体質なので油断できないんだけど。
まあ、イスカ爺ちゃんの目が光っているはずだから「忘れてました~」なんてことにはなるまい。
「ありがとうございます」
というやり取りの後、建物の外へ亡骸を運び出して火属性の魔法で灰になるまで燃やし黙祷を捧げた。
その後は生きている被害者たちのケアだ。
S気質な変態クズ三男坊にいいようにされた女性たちと半殺しにされた奴隷たち。
いずれも大きな怪我や火傷を負っていた。
狩りの獲物扱いされていた奴隷の方が状態が酷かったのは言うまでもない。
ただ、女性たちの方が精神的な負荷は大きいようだ。
聞けば低品質なポーションで中途半端に傷を癒やしながらずっと酷い扱いを受けていたそうだ。
怪我は古傷も含めて魔法で治療したが心のケアは途方もない時間がかかりそうだ。
龍の知識によれば記憶は消せないものの封印することはできるんだけどね。
問題はその封印が解けてしまうこともあるということ。
しかも無理やりせき止めていたものが決壊するようなものなので反動が大きいみたい。
刺激を与えず地道にやるしかなさそうだ。
外部との接触を避けて共同生活を送ってもらうくらいしか思いつけないのが情けない。
ただ、ここなら環境を整備すれば療養場所として使えるのが幸いだ。
そのつもりでここに引き寄せはしたものの、全員から家に帰りたいと言われることだってあり得るのだ。
その場合は廃墟と化した街を再整備しても意味はない。
とにかく話は被害者たちを目覚めさせてからだ。
そんな訳で避難させている部屋の前まで来た。
「ユート、終わったか」
部屋の入り口をガードしていたリーアンが声を掛けてきた。
他の面子は部屋の中で待機しているようだ。
「ウナギ魚人はな」
「まだ何かあるのか?」
リーアンが目を丸くさせた。
「このまま放置していく訳にはいかないだろう」
「ああ、そういうことか。連れて帰らないんだな」
「家に帰りたいと言われるかもしれない相手だからね」
言ってから失言に気付く。
リーアンたちが故郷に帰れなくなった身だということを完全に失念していた。
「それもそうか」
特に気にした様子もなく返事をしてくれたので実はホッとしたのは内緒だ。
「元の生活に戻れなくなるのは困るもんな」
「そんな訳でクズ三男坊の被害者たちに話を聞いて方針を決める」
「ここに新しい生活の場を築くか送り届けるかってところか」
「その二択になるだろうな」
「いずれにしても忙しくなりそうだ」
「ぼちぼちやるさ」
俺たちはグロリアたちの馬車に合わせて移動することになるんだし。
「何だ、翌朝までに終わらせるんじゃないのか?」
「そんな目まぐるしくなるような真似はしないって」
何処のブラック企業だよと内心でツッコミを入れたくらいだ。
「今夜は話を聞いて野営準備して帰るよ」
「我々がいなくなったら、ここの防衛はどうするんだ」
「メイドロイドを派遣するつもり」
読んでくれてありがとう。




