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116 混沌の申し子とは

「リーアン、聞こえるか?」


 ゴーグルに内蔵された通信機を使って呼びかける。


『ああ、どうした?』


「囚われていた人たちのガードを頼む」


 待避させた建物はクレーターとは別の結界で防御しているけど完全ではない。

 完全に覆ってしまうと俺たちが建物に入ろうとした時に解除しないといけなくなるからね。

 そんな訳で入り組んだ形の壁面にしてある。

 爆風被害とかは受けない一方で隙間にも入り込める触手とは相性が悪い感じだ。


 悪意とか敵意に反応するような結界も開発すべきか。

 龍の知識にはそういう魔法の術式がないんだよね。

 鱗は頑丈で体も強靱だし魔法や様々な状態異常に対しての抵抗性も極めて高い。

 守るものは財宝くらいだけど、それらは空間魔法で収納していたようだし。

 技ありの防御魔法がないのも頷けるというものだ。


『そんなにヤバい相手なのか?』


「念のためだよ。結界を解かないと奴とは戦えないからな」


 その結果、リーアンたちを怪我させたんじゃ悔いが残る。

 故に適当な理由を付けて退いてもらおうって訳だ。


『分かった』


 深く追求してくることなく了承してくれたのは有り難い。

 そして、リーアンたちが動き始めたのを見てケイトたち3人娘がそわそわし始める。

 仕事が割り振られなかったからね。


「レイはリーアンたちが護衛ポジションについたら建物の前に」


「護衛の護衛ニャね、了ぉ~」


 テンション低めな返事と共にフラフラと建物の方へと向かう。

 駆け去ったリーアンたちとの温度差に不安を感じなくもないが、仕事はしてくれるだろう。


「ケイトとスィーはすまないが待機で頼む」


「お任せくださいっ」


「了解」


 何故かケイトは待機なのに気合いが入っている。

 通信機越しに荒い鼻息まで聞こえてくるくらいだ。

 スィーは淡々としていて、いつも通りのマイペースなんだけどな。


「ギュワアアアァァァァァンッ!」


 ウナギ魚人が無視するなとでも言うかのように再び吠えた。

 生憎とその咆哮は獣のそれに等しいため奴の意図するところを理解することはできない。

 ただ、触手アタックがより苛烈になってきている。

 結界に当たるごとにバシバシと立てていた音がズドンズドンッという腹に響くものへと変わってきた。


「さて、今度こそ始めるか」


 結界を解除。

 連打で結界を打ち続けていた触手が振り下ろされてくる。


「ほいっと」


 軽い掛け声と共に回避した触手は地面に打ち下ろされ轟音と共に瓦礫を弾き周囲へまき散らす。

 奴に集中したかったので瓦礫は無視したがバチバチと結構な勢いで体に当たった。

 それが痛くもかゆくもなくて龍の素材でできた体のすごさに改めて驚かされる。


 もしかするとムチのようにしなりながら迫り来る触手も痛くないかもしれない。

 ただ、ノックバックくらいはするだろうし当たり方によっては吹っ飛ばされそうだから普通に躱すけど。

 風を切り裂くような音を立てながら極太の触手がかすめていく。

 当たってないはずなのにビリッときた。


「うおっと!?」


 触手が帯電しているから当たらなくてもダメージを与えられるってことか。

 痛みはないものの軽く痺れてしまった。


「面倒な」


 痺れることで一瞬だが動きを止められてしまう。

 連打されると攻撃しにくくなるじゃないか。


「さすがは混沌の申し子ってことか?」


 試しに装備している鉄甲で殴りかかってみたが……


 バチッ!


 帯電した体に弾かれた。

 距離を測ることも兼ねた軽いパンチだったとはいえ易々と弾かれるとは想定外だ。


「攻防一体か」


 人間だった時の詰めの甘さは何処に行ったのかと言いたくなるほど隙がない。

 おまけに触手が割れだしたぞ。


「ちょっ、おいっ!」


 触手が5本ずつ左右で計10本になった。

 それをほぼ同時にかつバラバラに振り回してくる。


「忙しいなぁっ、もうっ」


 躱し弾いて当てさせなかったが、今のは完全に攻撃する余裕がなかったぞ。

 とにかく回避と防御に専念し続けるのは得策とは言い難い。

 俺は再び襲いかかってきた触手の十連撃をしのぎきってから飛び退いた。

 距離を取って仕切り直しだ。


「ユート様、気をつけてくださいっ」


 背後からケイトが注意を促してきた。


「そいつランク7でレベル84ですよ!」


「ランク7だとぉ!?」


 混沌の申し子であることにばかり目を奪われてステータスを見ていなかった。

 おまけにランクが上がるとレベル上げも楽ではないというのにレベルが高いのはどういうことだ?

 クズ三男坊がそれだけの経験値を得ていたとは考えられない。

 これは単に変身したというより何者かに飲み込まれたか?

 今までは取り憑く程度で従の立場だったものが変身を機に主となった。

 つまり、それこそがいくら探しても黒幕が見つからなかった答え。


「そういうことかよ」


 思わず声に出てしまっていた。


「えっ、何ですか?」


「どういうこと?」


 ケイトとスィーが俺の納得の言葉に反応する。


「コイツが黒幕なんだよ」


「意味が分かりません」


「具体的に」


「黒幕は三男の中にずっと潜んでいたんだ」


「なっ!?」


「精神だけの存在が体を乗っ取った?」


「そんな感じだろうな」


読んでくれてありがとう。

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