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112 神様の依頼?

「このまま放置する訳ではないですよね」


 ケイトが確認するように聞いてきた。


「もちろん。こんな奴を野放しにはしない」


 何処かの元上司と同じでクズ三男は反省などするタイプではない。

 放置すれば新たな犠牲者が延々と増え続けるのは明白だった。


「え~っ、もうちょっと待った方がいいと思うニャー」


 レイがそんなことを言い出した。


「アンタねえ」


 キリキリと眉をつり上げたケイトがレイのことを威嚇するように睨み付ける。


「このままにしておけば被害者を増やすだけってのが分からないのぉ!?」


 ケイトは威嚇するかのように続けた言葉の語尾を強めた。


「もうちょっとだけニャ」


「どういうことよ?」


「そんなの勘なんだから言葉で説明できる訳ないニャ」


「アンタねえ……」


 呆れたようにジト目を向けるケイトだが、レイは何処吹く風でスルーしていた。

 気にならない訳ではないので嫌な予感がすると言っていたリーアンの反応を見る。


「何だ、どうした?」


 無言で視線を向けられたことで怪訝な顔で見返してきた。


「その様子だと嫌な予感がしている訳ではなさそうだな」


「おい……」


 リーアンが脱力する。


「人を何だと思っているんだよ。百発百中って訳じゃないんだぞ」


「そうなのか? 外したことがないとか聞いたはずなんだが」


「予感がした時はな」


 リーアンが疲れたように嘆息した。


「あー、つまり予感がしないこともあり得る訳か」


「当然だろう。俺は神様じゃないんだぞ」


「悪い悪い」


 当てにしようとしていた身からすると恥ずかしいことこの上ない。


「勘弁してくれよ」


 まあ、リーアンはさほど気にしていないようなのが救いと言えるか。

 とにかく、レイの勘をどう扱うかは振り出しに戻ってしまった。

 虫の知らせ的なものだったとすると無視する訳にもいかないのがつらい。

 エルフ組は自分たちで状況に対応できるとは思うが救助者たちはそうはいかないのでね。

 どうしたものかと考えていたその時。


『呼ばれてないけど、ジャジャジャジャーン!』


 頭の中にステラ様の声が響き渡った。


「うわっ!」


 叫び声を上げてからしまったと思う。

 魔法を用いた念話だったため皆には聞こえていない恐れがあったからだ。

 が、皆も俺と同様にビックリしている。


「脅かさないでくださいよ」


『やは~、ゴミンねー』


 とても反省しているとは思えない軽い調子で謝られてもね。

 ただ、それを指摘したところで改められるとも思えないのでスルーが正解だろう。


「それで何か御用ですか?」


『もっちりローンだよ』


「……………」


 もちろんと言いたいのかもしれないがくだらないダジャレに地味にイラッとさせていただきましたよ。


『ええ加減にせんかぁっ!』


 ドガッ!

 今度はイスカ爺ちゃんの声&打撃音。


『あ~れ~』


 おそらくステラ様は何もない亜空間の彼方へとホームランのように飛ばされてしまったんだと思う。


『スマンのう。あれに仕事をさせるとこういうことがあるから油断できんのじゃ』


「いえ、大丈夫です」


 あのノリで俺がとばっちりを受けたのかもしれないとか考えてはいけない。

 大丈夫と答えた返事がウソになりかねないからね。


『とにかく、大事なことを伝えたくてな』


「大事なことですか?」


『あれはもはや人間ではないから遠慮はいらぬ』


「やはり、すり替わっていた訳ですか」


『それはちと違うのう』


「え?」


『あの者は堕したのじゃ』


「堕したって……」


『別の言い方をすれば人間をやめてしまったとなるか』


「うわぁ……」


 行動からして人非人だったけど神様から人でなし認定されてしまうとはね。

 やはり人皮畜生だった元上司と同類だと感じていただけはある訳だ。

 所業としてはバカ三男坊の方がより鬼畜ではあるけれど。


『ワシらが天罰を下してもええんじゃが、今後もこのようなことが続きそうでのう』


「えーっ」


『こっちの世界は混沌とつながりやすいんじゃよ』


「あー、それは……」


 できればウソであってほしい事実を知ってしまった。

 前にも聞いた覚えがあるし神様から告げられた話なのだから、そんなのは望み薄である。


 要するに混沌がらみの事件な訳だ。

 俺が直に関わるのは、これが初めてだな。

 いや、そんなことはないのか。

 スタンピードやダンジョンの発生は混沌がらみだろうし。

 そうなると今度で3回目ってことになるか。


『そういう訳で慣れてもらいたいんじゃ』


 できれば慣れたくはない話である。


「具体的にはどうすれば良いのでしょうか?」


『これから彼奴は本格的に堕すことになるじゃろう』


「はい」


『具体的にいうと見た目からして人間をやめたものになってしまう』


「そうですか」


 にわかには信じ難い話ではあるけれど混沌にはその力があるのだろう。


「その状態の奴と戦って消滅させればいいですか?」


『目標はそうじゃな』


「どういうことでしょう?」


 イスカ爺ちゃんの口ぶりからすると何かしらの条件が付随するものと思われる。


『アレが見た目を変えてしまう前に引っ張ってくるのはNGでのう』


「それはまた、どうしてですか?」


『変身する時に周囲が混沌の影響を受けるのじゃ』


 どうやら奴が人から化け物になる瞬間にネガティブなエネルギーを発するようだ。


『こちらのダンジョンが枯れかけているのに活性化させてしまいかねんのじゃよ』


「うわぁお」


 思った以上に影響が大きい。


「それって向こうの街をダンジョン化させてしまうのでは?」


『向こうは混沌のエネルギーを奴が吸収しておるだけだから大丈夫じゃ。こっちは熾火が残っておるからのう』


「そういうことですか」


 向こうは危険物はあるが爆発はしない。

 一方でこちらは点火するものがあるという。

 引火しやすい状態の時に引き寄せればドカンといってしまう訳だ。


『じゃからタイミングを間違えぬように注意してもらいたいんじゃ』


「了解しました」


読んでくれてありがとう。

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