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108 つながりを断て

「それにしても、こんな場所を短時間でよく見つけたな」


 リーアンは大いに感心している様子で言ってきた。


「何か勘違いしているみたいだな」


 何の説明もしていなかったから無理からぬことか。


「え?」


「今回の件で急遽、探し出した訳じゃないぞ」


「は? どういうことだ」


「タイミング的にはスタンピードのあった翌朝だ」


 俺の言葉にリーアンは大きく目を見開いた。


「あの件と関わりのある場所なのか!?」


「発生源のひとつだからな」


 俺の返事を聞いて呆然としてしまうリーアン。


「なんということだ……」


 そう呟きを漏らすのが精一杯みたいだな。

 ただ、話の流れから想像はできたらしく驚愕するほどではなかったが。

 呟いた後は言葉を失ったまま固まってしまったからショックはショックなんだろうけど。


「おい、それは大丈夫なんだろうな」


 代わりにグーガーが表情を渋くさせて聞いてくる。


「心配はいらないさ。残りかすも出ない状態だからね」


 今はまだと言うべきだとは思うが。

 だとしてもダンジョンが機能を取り戻すのはずっと先の話なので被害者たちを一時的に保護するだけなら何の支障もない。

 それにこの場所を選んだのは、もうひとつ目的があるのだ。

 むしろ、そちらがメインだと言った方がいいだろう。


「スタンピードの影響がないなら構わんが」


 グーガーの表情から険しさが抜けていく。

 スタンピードはかなりのトラウマになっているようだな。


「でも、どうしてこの場所なんですか?」


 今度はリーファンが聞いてきた。


「そうだな」


 リグロフも同じように疑問に感じているようだ。


「被害者を保護するなら、ここである必然性はないはずだ」


 要するにストラトスフィアが最適だと言いたいのだろう。


「2人とも、彼女らは監視されているも同然であることを忘れていないか」


 俺が否定する前にリーアンが2人に対して指摘していた。


「魔法的なつながりは長距離を移動すれば無くなるでしょう?」


 リーファンとて指摘されたことを考慮しなかった訳ではないか。


「それは相手を甘く見すぎだと思うぞ」


 リーアンも負けてはいない。


「つながりを残す恐れが絶対にないと言いきれるのか?」


「それは……」


 問われたリーファンが言葉に詰まり軍配はリーアンに上がった。


「まあ、そこを危惧しているのは事実だな」


 俺がそう言うとリーアンが怪訝な表情を見せた。


「なんだ? 他にも理由があるのか?」


「あるよ」


 そう返事をしてから、某ドラマのワンシーンを思い出してしまった。

 別に意識して言ったつもりはないんだが。


「むしろ、そっちの方がメインだからな」


「何っ!?」


 俺が付け足した言葉に驚きの声を発するリーアン。

 他のエルフ組も驚きの眼差しを向けてくる。


「できることなら敵をここに引きずり出せればと思ってな」


「「「「……………」」」」


 エルフ組の面々は言葉を失ってしまったかのように沈黙した。


「それは面白そうだニャ」


 レイならそう言うと思ったよ。


「原因を元から絶てば安心」


「ここなら思う存分暴れても被害は無視できますからね」


 スィーもケイトも賛成のようだな。

 ケイトの方がより過激なことを考えているようだけど。


「これだから脳筋はバカなんだニャ~」


 レイがヘラヘラと笑いながらケイトを挑発する。


「何ですってぇ!?」


「思いっきり暴れたらニャーたちは平気でも囚われていた人たちは耐えられないニャよ」


「うっ」


 指摘されたことに反論できないケイトが短く呻いた。


「だから、この場所」


 スィーが代わりに反論する。


「どういうことニャ?」


「被害者は魔法で構造を強化した建物にかくまえばいい」


 ここは廃墟だから建物はいくらでもある。

 一から用意しなくていいのは楽だ。


「結界で囲えば更に万全」


「そう来るかニャ」


「守ることを考えていないアンタだって脳筋じゃない」


 ここぞとばかりにケイトが反撃するが、どっちもどっちだ。


「これから呼び寄せるんだから、いがみ合っている暇はないぞ」


「へーい」


「申し訳ありません」



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 手始めにクレーターの中心あたりでゴーレムを何体か召喚した。

 特別なものではなく石でできた標準的なものだ。

 いや、あえて脆い砂岩にしているので特別ではあるかな。


「あれは一体どういう意図で召喚したんだ?」


 リーアンが問うてきた。

 他のエルフ組も同様らしく、俺の方を見てくる。


「ダミーというか身代わりみたいなものだな」


「身代わり……」


 少し考え込む様子を見せたリーアンだったが、すぐにハッとした表情を浮かべた。


「そうか! 亜空間を通過する際に視覚の同調は切れたも同然になるのを利用するんだな」


「正解だ」


「本当に切れるのか?」


 グーガーが不安そうにしながら、こそっとリグロフに聞いている。

 まあ、そんなに声を絞っている訳ではないので周りの皆にも丸聞こえなんだが。


「さてな」


 リグロフは頭を振った。


「そう都合良く視覚だけが切れるのかなんて俺にも分からん」


「俺は切れるとは言ってないぞ」


 2人に向かってそう言ったリーアンは苦笑している。


「「は? 意味が分からん」」


「切れたも同然だと言ったんだ」


「何処が違う?」


 リグロフが眉間にしわを寄せて疑問を口にする。


「待て待て」


 グーガーがそう言いながら制止するようにリグロフに向けて手を出した。

 怪訝な面持ちでグーガーの方を見るリグロフ。


「シャドウゲートで移動した時のことを思い出してみろ」


「む?」


「一瞬だが、目の前が真っ暗になっただろう」


「……そういうことか」


 どうやら俺の狙いに気づいたようでリグロフが真顔に戻る。


「見えなくなってからゴーレムにつなげ直す」


 呟くように言って俺の方を見た。


「その通り」


「それ、やたらと難しくないか?」


 またしても不安そうな顔をして聞いてくるグーガー。

 エルフにしてはガタイがいい方なのに心配性な男である。

 お前はオカンかよってツッコミを入れたくなったさ。

 あ、オカンっていうのは関西弁で母親のことだ。


「そうか?」


 俺は3人娘の方を見た。


「いいえ、そうは思いません」


 何でもないという風に頭を振るケイト。


「楽勝ニャ」


「問題ない」


 レイやスィーも即答した。


「マジか……」


 呆然とするグーガーとリグロフ。

 2人とも、まだまだ修行が足りないな。


読んでくれてありがとう。

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