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雷鳴士、世界を救う  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第2章 オイルリグ

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第61話 信頼

 ベリグランド湖に船を接岸させると、そこにはカオリが立っていた。

 彼女のファンたちは一定の距離を保ちつつ、静かに見守っている。


「待ってて……くれたのか?」


 俺の問いかけに、カオリは一瞬驚いたような表情を浮かべ、それから少し照れくさそうに頬をかく。


「ま、まぁ……ユウ君が死んだら、ストレス発散できなくなるし?」


 不意に視線を逸らしながら、カオリはそう答える。

 その仕草は、彼女が本当は何を思っているのかを隠そうとしているようにも見えた。


「話があるんだ。ちょっと時間をくれないか?」


「そうね。私も話したいことがあって……」


 日はまだ高く昇っている。


 そのため、キョウヤとユッカはいったんパーティを抜け、迷宮に戻ることになった。

 俺たちが本格的にオイルリグ探索を進める前に、万が一に備えてヒーラーを確保するためだ。


 残った俺たちはセントラルシティへ向かい、落ち着いて話せる食事処の個室に入る。

 そこで最初に口を開いたのは、カオリだった。


「また契約延長……できないかな? 私もオイルリグで……」


 彼女の言葉を予期していた俺は、迷いなく答える。


「……《《契約延長は》》しない」


「そっか……やっぱり足手まといよね……断られる気はしていたんだ」


 無理に笑おうとしているのが分かった。

 だが、その声はかすかに震えている。


「悪いな。これはもう決めていたことだ。でも――」


 俺はカオリの瞳をしっかりと見据え、言葉を紡ぐ。


「契約延長ではなく、正式に【雷光】に来ないか?」


「えっ――?」


 カオリの瞳が大きく揺れた。


「大きな戦力がいたり、いなかったりでは、俺たちとしても困るんだ」


 戸惑いの色を浮かべる彼女に、俺はさらに続ける。


「【雷光】に入るとなると、アイドル活動は今ほどはできなくなる。それに、命の危険も段違いだ。なにしろ俺たちは、一刻も早くクリアすることを目指している」


 アリサも静かに言葉を重ねる。


「あと、【雷光】に入ったら、私と二人っきりの時間を作ってもらうのも条件ね。話したいことが、いろいろあるから」


 シルバもまた、静かに口を開いた。


「それと、もし俺たちが最初にクリアした場合の報酬は、ユウトとアリサの二人に完全委任する。それを忘れるな。俺はすべてを放棄している。ただ――とにかく早くクリアしたい。それだけだ」


 カオリの表情は揺れていた。

 もう一つ言うべきことがあったので、俺は付け加える。


「オイルリグ内では、キョウヤとユッカも共に行動する。もし【雷光】に入れば、二人にはカオリの戦闘時の姿を見られることになる。それでもいいか? 正直、これは俺たちにとってかなり都合のいい話だ」


 オイルリグでの探索を経て、もう一人のヒーラーが必要だと確信した。

 カオリ以外に適任はいない――それはアリサも同じ考えだった。

 【雷光】のメンバー内で相談した結果、俺たちの意見は一致し、シルバも以前から勧誘を進めていたこともあり、即座に賛成を得られた。


「一つ聞いてもいい?」


 カオリが真剣な表情で尋ねる。


「どうして私を誘ってくれたの? 私より優秀なヒーラーなんて、いくらでもいるでしょ?」


「たしかに、今のカオリより優秀なヒーラーはたくさんいる。キョウヤのパーティのヒーラーだって、練度は相当高いはずだ……」


 俺は一度言葉を切り、彼女の目を見据える。


「それでも最初にカオリを誘った理由――それは、信頼が置けるからだ」


「信頼……?」


 カオリが首をかしげる。


「ああ。戦闘の腕じゃない。人となりの話だ」


 俺は静かに続ける。


「シルバは【白銀騎士団】時代に手酷い裏切りを受けた。俺とアリサ――いや、特に俺はもともとかなり警戒心が強い。強いだけでは、仲間には誘わない」


 そして、決定的な理由を告げる。


「カオリと組んでみて思った。お前だったら、俺は背中を見せることができる。それだけだ」


 カオリの唇が、わずかに震えた。

 やがて、彼女はふっと笑う。


「ふふふ……背中を『預ける』じゃなくて、『見せる』なのね」


「正直なことを言ったまでだ。信頼していることには変わりない」


 そう告げると、カオリはしばらく俺の顔を見つめた後――


「……ユウ君って、本当にズルいよね」


 カオリはそう呟きながら、小さく笑った。

 どういう意味だ……?

 と、思っていると、彼女は大きく息を吐き、まっすぐ俺を見つめる。


「ありがとう。参加させてもらうわ」


 その言葉に、シルバが小さく拳を握り、控えめながらもガッツポーズを取る。


「えっ!? 本当にいいのか!? アイドル活動に制限がかかるかもしれないんだぞ?」


 まさか即答されるとは思っていなかった。

 俺の驚きに、カオリはクスリと笑う。


「ええ、大丈夫よ。それに、前線に行けば私のことを知らない人もたくさんいるでしょ? その人たちを新しいファンにできるかもしれないし」


 そう言った後、カオリはアリサに視線を向ける。


「まぁ、私のファンよりもアリサのファンの方が増えるかもしれないけど?」


 「な、なんで私!?」


 突然の指摘に、アリサが目を丸くする。

 どうやら、自分がどれだけ注目を集めているか、まったく自覚がないらしい。


「じゃあ、明日からでいい? 今日はレイクタウンに戻って、しっかりファンサしてくるから」


「了解。でも、あまり俺たちにファンたちのヘイトが集まらないようにな」


 アイドル・夢咲香織を奪ったと思われたら、面倒なことになりそうだからな。


 カオリは「了解♡」といつものアイドルスマイルを浮かべ、軽やかに転移門へと向かっていった。

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