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雷鳴士、世界を救う  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第2章 オイルリグ

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第58話 カオリ

 十二層を突破してからというもの、俺たちの迷宮攻略速度は飛躍的に向上した。


 連携を意識することで、ヘイトの管理が格段に洗練され、魔物の攻撃はほぼシルバへと集中するようになった。

 ダメージを受けるのもシルバだけ。

 その結果、回復は《ヒール》のみで十分となり、MP管理もこれまでとは比べ物にならないほど楽になった。


 とはいえ、もともとベリグランド湖周辺の魔物でレベリングを重ねていたため、ダメージを受けても微量ではあったのだが。

 例外はカオリ――バーサーカーモードで突っ込んでしまった時くらいだ。


 そして――


 あっくんが造船を始めて二十日後。

 ゲーム内時間で二一〇日目。


 俺たちはすでに、十五層にまで辿り着いていた。




 迷宮探索を終え、カタミ村の冒険者ギルド前で待機していると、背後から声がかかる。

 この感覚――久しぶりだ。


「大躍進だな。もう十五層とは。追いつかれる日は近いな」


 もちろん、背後からこんなことを言ってくるのは、この男しかいない。


「まぁな。でもキョウヤたちはもう十八層だろ?」


「おかげさまでな。十八層は湿地フィールドに加えて暗闇だ。もしかしたら、末尾に八と九が付く階層は、すべて暗闇なのかもしれない。ユッカこそいるものの、俺たちのパーティで《ライト》を使える者が少ないから、この階層でだいぶ時間を取られてる」


 なるほどな。


《ライト》を使えるプレイヤーが少ないのであれば、複数のパーティでまとまって進むのがセオリーだろう。

 だが、それをやれば経験値がばらける。

 いくらベリグランド湖でレベルを上げたとはいえ、キョウヤのパーティにはがっつり戦闘職ではないメンバーもいる。

 少人数でキャリーするには、相当の負担がかかるだろうな。


「まぁ、お前たちならそのうち突破するだろ」


 そう言うと、キョウヤは苦笑しながら肩をすくめた。


「で? お前たちはどうしてここに?」


「ああ、カオリ……夢咲香織のジョブチェンジを待っているんだ」


「へぇ……確か【拳使い】だったよな? 待てよ? 適性のない者が【拳士】になるにはレベル21上げないといけないはずだから……」


「ベリグランド湖で狩りをしていないから、まだそのレベルには届いていないよ」


 具体的に言えば良いのだが、他人のステータスを軽々しく喋るわけにはいかない。


 キョウヤと迷宮の話やあっくんの進捗を話していると、冒険者ギルドから華やかな香りが漂ってきた。


 最初に現れたのは、純白の法衣に金糸の刺繍が施された高貴な装いとブーツを身に纏ったアリサ。


 そして、カオリはというと……直視するのが躊躇われる格好だった。


 白と赤を基調にした、深いV字型のネックラインが特徴的なトップス。

 胸元は大胆に開いていて、白く華奢な肩が露出している。

 視線を引き寄せずにはいられない。

 ファンたちがこの場にいれば、息を呑み、歓声すら忘れて見惚れることだろう。


 スカートは短めで、わずかに腰布が巻かれているものの――カオリの激しい戦闘スタイルを考えると、それがどれほど役に立つのかは疑問だ。


「そ、そんなに露出が多くて大丈夫なのか?」


 思わず心配になり、問いかける。

 だが、カオリはまるで待っていましたとばかりに、にっこりと笑い、俺の反応を楽しむようにくねくねと身体を揺らす。


「ユウ君、目がギンギンになってるぅ♡ どこ見てるの?」


 アイドルモードというより、完全に俺を揶揄う口調。

 胸元とスカートの裾をわざとらしく手で押さえながら、さらに挑発的な仕草を見せる。

 

「ユウト? カオリを変な目で見たら怒るからね?」


 なぜかアリサが俺を軽く睨んでくる。

 ……いや、別にそんなつもりはないんだが。


 横を見ると、キョウヤも言葉を失い、ただただカオリを凝視していた。

 その顔にはほんのり赤みが差している。

 やがて、バツが悪そうに視線を逸らし、照れ隠しのように何も言わず、その場を立ち去っていった。


 ……やっぱり、この衣装は破壊力が高すぎる。


 その様子を見ていたカオリが通常の口調に戻る。


「ま、このくらいしないと、ファンが逃げちゃうかもしれないじゃない? 近くにびっくりするくらいの美女がいるわけだし」


 びっくりするくらいの美女というのは、アリサのことだろう。

 現に、セントラルシティでカオリのファンだった男が、アリサに熱視線を向けているのを俺も目撃している。


「それに、こういうの着られるのってこの世界だけで、今だけだしね。戦闘と一緒で楽しまなきゃ損でしょ」


 こいつ、マジで『魂の監獄』を楽しもうとしている。

 

「で? そんな恰好になったということはお目当てのジョブには就けた――ということでいいんだよな?」


 いつもの調子でシルバがカオリに問う。

 これが大人――妻帯者の余裕ってやつか。


「もちろん。ユウ君。《鑑定》してみて」


 カオリに促され《鑑定》する。



【名 前】カオリン

【ジョブ】拳癒士(0/15)

【状 態】良好

【L V】35(+7)

【H P】365/365

【M P】548/548

【筋 力】194 (28up)(+100)

【敏 捷】172 (28up)(+40)

【魔 力】273 (14up)

【器 用】194 (28up)

【防 御】194 (28up)(+25)

【魔 防】280 (28up)(+15)

【適 性】体術F(0/15)・神聖魔法C(0/15)

【重 量】180/194

【装 備】浄怒のメリケン

【装 備】拳士の法衣

【アクティブスキル】

・《正拳突き》

・《ヒール》・《キュア》・《エリアヒール》・《ハイヒール》

【パッシブスキル】

・《成金》



 まぁ、レベルが上がらなければステータスの成長率も分からないが……。

 カオリは新たなアクティブスキルやパッシブスキルを覚えていないようだ。現状では【魔法剣士】のように、単純にステータスの上昇率が高いだけのジョブに思える。


「いいんじゃないか? 体術と神聖魔法、両方の適性もあることだし」


「でしょ? ユウ君なら絶対に気に入ってくれると思ったんだぁ♡」


 俺の言葉を、自分への称賛とでも受け取ったのか、カオリは嬉しそうに様々なポーズを取り始める。


「分かったから。ほら、早く行くぞ。皆が注目し始めた。ここで目立つと、落ち着ける場所が減るぞ?」


 迷宮から戻ってきた攻略組の冒険者たちの視線が、次第にカオリへと集まっているのが分かる。


 アリサが呆れたようにため息をつきながら、カオリの腕を引く。

 俺たちは姿を隠すように、静かに宵闇へと紛れ込んだ。

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