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雷鳴士、世界を救う  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第1章 魂の監獄

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第36話 ナイン

【騎士】の頭上に赤く刻まれた『サルタ』という名が浮かび上がった。


 それはレッドプレイヤー――すなわちPKをした者に刻まれる証だった。


「サルタ! お前! 何をしている!」


 シルバが、怒りを露わにして怒鳴る。しかし、サルタは何も答えない。ただ黒く濁った目で怯えるような表情を浮かべ、震える手で斧を再び構える。


 ヤバい――まだヤル気だ!


 サルタの目線は、腰を抜かし震える【光魔導士】のユッカに向けられていた。


 ゆっくり彼女に近づき、斧を振りかぶる……そして今まさに凶刃が振り下ろされようとしている。その瞬間――アリサから剣を奪っていた俺は、なんとかユッカの間に体を滑らせることができた。


「ユッカ、逃げろ! シルバ! こいつは正気を失っている! 取り押さえてくれ!」


 何かがおかしいと思い、サルタを鑑定すると、そこには【状態】混乱の二文字が。


 すぐに、背後からシルバが駆け寄り、サルタの斧を強引に押さえ込んだ。


 二人は数秒もみ合ったが、突如、サルタが叫び声を上げ、その場に崩れ落ちた。


 斧を手放し、頭を抱え、地面に蹲る彼。その姿は、まるで自らの行為を嘆いているかのようだった。


 「なんだ……? 何が起きている……?」


 不意に周囲を見渡すと、場違いとも思えるほどの笑みを浮かべている者がいた。


 ――ノエルだ。


 な、なぜ……? なぜこんな状況で笑っていられる?


 その疑念が頭をよぎった次の瞬間――ノエルの口が微かに動いた。


 薄く笑みを浮かべる彼女の視線は、サルタとは別の【騎士】へと向けられていた。


 ――何かを呟いている……?


 その微細な動きに反応し、俺は身構える。そして、その動きに呼応するように、もう一人の【騎士】が斧を握りしめた。


 まさか――!?


 【騎士】の目は黒く濁り、虚ろな瞳が【水魔導士】を捉えている。その姿に、一瞬で理解が追いついた。


 ――混乱させられている!


 考えるよりも先に体が動いた。凶刃が振り上げられる前に剣を振り下ろし、斧を叩き落とす。


 金属が地面に触れる鈍い音が響く中、再び鑑定を試みると、予想通り【状態】混乱の文字が浮かんでいた。


 シルバが正気に戻ったサルタを押さえつけたまま、すぐに状況を把握する。そして、俺と連携するように、今度はもう一人の【騎士】を抑え込んだ。


「ノエル! 貴様! どういうつもりだ!」


 シルバの怒りのこもった声が響くが、ノエルは薄く笑みを浮かべるだけで何も答えない。代わりに、彼女は手を軽く動かし、何か別の魔法を唱えようとする仕草を見せた。


 が、警戒を強める俺たちの前で、ノエルの動きが急に変わる。


 まるで目の前にある何かをタップするような奇妙な動作をしたのだ。次の瞬間、ノエルは満足したような表情を浮かべ、転移門の方へ駆け出した。


 追うべきだ――だが、足が動かない。


 あまりにも突拍子もない展開に、誰もが理解が追いついていなかった。


 唯一、アヴェンだけが、ノエルの後を追うように、静かにその場を去っていく。その背中には彼女を守るような気配が漂う。


 目的はなんだ? とにかく今できることをと思い、遠くなっていく二人の背中を鑑定する。 


【名 前】ノエル

【ジョブ】闇魔導士(15/20)

【状 態】良好

【L V】26

【H P】124/287

【M P】206/706

【筋 力】132

【敏 捷】132

【魔 力】369(+40)

【器 用】186

【防 御】143(+10)

【魔 防】???(+20)

【適 性】火魔法E(3/12)・黒魔法E(3/12)・闇魔法D(5/10)


 鑑定結果は途中で途切れた。おそらく距離が離れてしまったせいだ。だが、それだけで十分だった。


【闇魔導士】――おそらくはクローズとベータ版で禁止された【闇魔法使い】の二次職。やっぱり俺は見間違えてなどいなかった。【闇魔法使い】は確かにいたのだ。


 背後を追いかけるアヴェンも鑑定すると、さらに驚くべき鑑定結果が。


【名 前】クロト

【ジョブ】剣士

【状 態】良好

【L V】29


 アヴェンが見せた情報も、距離が離れたせいで途中までしか鑑定できなかった。しかし、そこに表示されていた名前は――クロト。


 シルバに喧嘩腰で食い掛かってきたあの男の名が浮かぶ。同時に、キョウヤの話が脳裏をよぎる。一か月100,000Gで偽名が使える、という情報だ。


 わざわざアバターまで変えて、顔も隠して潜り込んだってのか……?


 そこまでしてシルバに絡む理由があるのか――疑問が頭を埋め尽くす。


 項垂れるシルバの肩に手を置き、俺は声をかけた。


 「シルバ……とにかく、一度帰ろう。ここはPK可能エリア。安全な街に戻るべきだ」


 彼も無言で頷き、疲れた体を引きずりながら、アリサの待つ場所へ向かおうと歩を進める。歩きながらポーションを使おうと思ったそのとき、アイテムストレージ欄に「NEW」の文字。


 「なんだ……?」


 思わずタップして確認すると、中には見覚えのないアイテムが一つ――【魔法剣士の証】。


 本来、パーティリーダーであるシルバが手にするはずのものだ。それがなぜ、俺のストレージに入っている?


 答えを見つける間もなく、さらなる通知が目の前に現れる。



 ――ベリグランド迷宮 十層クリアMVP――

 ハーティ名【雷光】

 プレイヤー名【ユウト】



 ……俺がMVP?


 驚きと困惑が混ざる中、続けて表示されたもう一つの通知に目を奪われる。



 ――ベリグランド迷宮 十層クリアMVP――

 ハーティ名【白銀騎士団】

 プレイヤー名【()()()



 その瞬間、ノエルの不敵な笑みが脳裏に蘇る。そして記憶の中の情報が繋がり、理解が訪れる。


 ナイン――それは六層や七層で名を連ねた【漆黒の翼】のリーダーと同じ名。これが偶然ではないことは明白だ。ノエルも偽名だったのか。


 視線を上げると、ボス部屋の壁が崩れ、新たな景色が広がる。しかし、その先に広がる村の風景も、今の俺たちには何の感動も与えなかった――


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