その1
(´・ω・`)怒られそうな内容なので登場人物、会社名を少し変えています。
(´・ω・`)…。(検索除け)
「どうですか!!わが社の新製品!」
ここは衣ヶ原飛行場。
昭和18年の春終わり、まだ創業したばかりの東会飛行機株式会社の格納庫の中で。
わが社の試作品は光っていた。
新城陸軍少佐殿に誇らしく示す。
夕方の低い高度で格納庫入口から差し込む太陽光。
鈍く光る未塗装ジュラルミン外装。
前日、あれ程に口煩く支持して工員が磨いた機体。
ジュラルミンの継ぎ目からの油の滲みが線となって滴っている。
「これは…。オートジャイロですか?もう既に茅場が観測機を作っていますが…。」
「いえいえ、回転翼飛行機!ヘリコプターです。」
一目見ればフロントに付いた星型エンジンには推進プロペラが無い。
「ヘリコプター…。」
ブームの後ろには確かにテイルロータが付いている…。
当惑気味の陸軍軍需省の士官殿。
「はい、陸のトラックに対し、空の小運送をヘリコプターでやりたい。」(はい、原文そのまま。)
そうだ!回転翼機はGAトラックなんだ!!
一等でも二等でもない!
馬車だ!!
「これを…。どうしようと?」
「実はですねサムルソンの220馬力のエンジンでは精々二人載せて浮くのがやっとなんです。ですのでお借りしている評価用の98式450馬力エンジン。アレを載せたい。無論、ハ-十三甲の量産が成った暁にはお返しします。」
官給品の発動機を勝手に使用することはできない。
「ああ、それは…。」
言葉を濁す軍需省の方から来た陸軍少佐殿
口ぶりから多種多様なエンジンの生産をわが社に期待されている。
私はエンジン部品屋では無く完成品を…。
わが社は、いや、私はいつかは航空機を作りたい。
昭和11年にはフランス製の軽飛行機も購入して刈谷に航空機研究拠点を作り着々と準備してきた。
特にヘリコプター!
試作機で人を乗せて浮く事に成功させた。
判ったのは発動機の効率だ。
機体を軽くするのは限界だ。
発動機を大きな物にするしかない。
「まあ…。良いんじゃないでしょうか?」
まだ、モノになるかも解らないような製品だ。
玉虫色の返事だが許可は許可だ。
「よし!MM君、早速エンジン換装に取り掛かってくれ。」
主査のMM君の返事はよい。
「はい!」
不安になるくらいだ…。
『社長!ヘリコプターが完成しました!いつでも飛ばせます。』
拳母工場の社長室で受けた電話。
MM君の元気な声だ。
「うむ!初飛行は私も見たい。すぐに向かう。」
自社の自動車で急いで向かった東会飛行機の格納庫。
衣ヶ原飛行場の隅で暖機運転中の完成した機体は驚きの姿だった。
「MM君。完成したのではないのか?」
機体の近くで見守るMM君を見つけて走りよる。
回転翼の吹き下ろす風で声がかき消される。
「ハイ社長、これが完成品です。」
大声で答えるMM君。
示した先のヘリコプター。
鈍い色のパイプで一直線に組まれたトラス構造…。
フロントのタイヤの間に剝き出しの星形エンジンに尾輪を支えるマスト。
星型エンジンの上の操縦席も丸見えだ…。
トランスミッションもむき出し無塗装で背骨からぶら下がった紅いドラム缶の色が目に映える。
「これは…。」
まるで綺麗に食べきった尾頭付き鯛の骨の様な姿。
「社長、機体重量が問題なので全ての要らない物を取り外しました。」
「いや…。キャビン位は残そう。」
「いやーキャビンを…というか床は贅沢です、荷物は吊り下げるので問題ありません。」
「乗員は何処に座るんだ?」
「操縦員以外は吊り下げ式の椅子があります。」
シャーシからぶら下がった椅子にシートベルトの簡易装置を見せる。
「危ないだろう。」
足も付かない。
「飛んでる時点で危ないです。まあ、大丈夫でしょう回転翼機は墜落しません。」(します。)
「こんなの飛行機と呼べるのか…。」
「飛ばないと呼べませんね。目標の吊り下げ加重800kg以上を目指すと今のエンジンではこれが限界です。」
エンジン音が高くなる。
パイロットが旗を振っている。
つなぎ姿の社員が叫ぶ。
「油温、軸共に問題ありません!」
「よし!飛べ!」
機体ので旗を振る社員。
連続した音が変わり機体が浮き上がり。
軽々と空を舞った。
「飛んだ…。」
「どうです。社長!やりましたよ!!うちの会社のヘリコプターです!!」
飛行場を何度も旋回するヘリコプターの羽の音。
停止、上昇&下降、テールコントロール。
徐々に高度を下げるヘリコプターは飛行場の砂を巻き上げゆっくりとバウンドして着地した。
走り寄る社員。
軍服を着た者もいる。
「やったぞ!」「どうだ!」
エンジンの音が変わりメインローターの回転が下がる。
「あー、ラダーコントロールが難しいですね…。癖がある。まっすぐ飛ぶのが難しい。」
「フットバーの調整幅を何とかしよう。」
「安定翼が欲しいですね。あと、着地の衝撃が大きいです。」
「サスペンション付けると重量が…。」
パイロットと社員が話し合っている。
着陸した不格好なヘリコプターを眺めてつぶやく。
「そうだな…。飛ばないと飛行機と呼べないな。」
とりあえず飛んだならよい。
必要な物は後から付ければ…。
(´・ω・`)…。(トラス構造のむき身のS-55見たいなスカイ・クレーン仕様のヘリコプターです。)荷室に床はない。




