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閑話:クリス視点

 姫様が連れ去られて、残された者たちで亜人種の住処を推測し姫様奪還のためエドワード王子率いる騎士団が現地に向かったまでは良かったが、その後連絡が取れなくなってしまった。 


(ああ姫様、お会いしてご無事を確かめたい! 今からでも救出部隊に加われれば!)


 連絡がないまま時間だけが過ぎ、状況を確かめるため第2部隊を派遣すべきかどうが議論が出始めていた時だった。


「ご報告申し上げます! 只今、城下付近にて亜人種の部隊を確認。その数は未確認ですが、我々の部隊の兵士は捕縛され、恐れ多くもエドワード王子とダニエル皇子を張り付けにしこの城に向かって行進していると情報が入りました。」


 その言葉をきいた者たちは驚愕した。


「なんだって!」


「亜人種の集団がここに向かっているのか!?」


「王子達は無事なのか?!」


(姫様奪還は失敗したということか……なら、姫様は!)


「姫様は、姫様は一緒ではないのか!?」


 最悪の事態を想定し頭の中が真っ白になりそうなクリスであった、しかしそれでも確かめられずにはいられない。


「そ、それが確かな情報かわかりませんが、大きな虎の亜人種が姫様らしき人物を抱えていたとの目撃情報がありました。亜人種の群れに囲まれていたため、その人物の顔をしっかり確かめることはできなかったそうですが……」



「ティーグレが!?」


(間違いない、奴だ! 姫様を攫ったあの時の亜人種!!)



 姫様は生きている。そしてこの城に向かってきている。そのことを頭で理解した時、すでに体は姫様に向かって走り出していた。



 全身全速力で駆け抜ける。怪我した体が悲鳴をあげているのにも構わずただ、姫様に向かって走り続けた。



「ひぃーめぇーさーまぁぁぁあああああ!」



 どうしようもない渦巻く感情を叫びで吐き出しながら走り続けた。

 



 そうして、この目がようやく集団を捕えた。ここまでくるのにどうやってきたのか記憶がないほど我武者羅に動かした体はすでにボロボロであった。しかし、その視界に彼女を写した。


 待ち望んでいたその人はティーグレの腕のなか抱えられていた。生きて、動いて、呼吸している姫様のその姿を再び目にすることができただけで鉛のようだった体が重力を感じないくらい軽くなった。



「クリスっ!?」


 久方ぶりに聞いた鈴がなるような声。


「姫様!」


 視界にはもう姫様した映っていなかった。


 姫様のもとへ近づこうとすると、よくわからない物体が邪魔をしてきたため、それらをかわす。


「お…はあの…の…」


 姫様を抱えている物体が何か言葉を発したようだが雑音にしか聞こえない。


「あああああ姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様」


 ようやく、ようやくまた会えた! その歓喜は言葉では表すことなどできるはずがなかった。



「こ、怖いよクリス」


 歓喜にあふれた思考に姫様の声が届いた。


「はっ、姫様、こいつらにいったいどんな怖い思いをさせられたのですか! おのれ亜人種!」


(亜人種に抱きかかえられ怯えておられる姫様。お可哀想に! 今すぐお助けします!!)



「セガール、おろして」


「嫌だ」


 

 亜人種の腕の中、必至に抵抗する姫様をお救いするため、一瞬の隙をつき、この手に姫様を取り戻した。



「ああああ姫様、よくぞご無事で! どこにも怪我はっ!!? こ、この傷はどうされたのですか?! 傷がついてるではありませんか! 俺の綺麗で美しくてたとえるものさえ霞んでしまうほどの姫様の肌に傷をつくるなんていったいどこのどいつですか! 許せない、ユルサネェブッコロス。あああ獣の群れにいたからドレスだってこんなに汚れてしまって! あなたには汚れなど似合わない、埃ひとつ近づけてはいけないのに! あああああでも今俺の腕のなかに姫が様いるんですよね…姫様もう絶対おそばを離れません。例えこの腕を引きちぎられようともう二度と離れませんから」


 力の限りこの腕に姫様の生を確認する。姫様の呼吸を、鼓動を、ぬくもりを、匂いを、筋肉の躍動を。すべてが愛おしくて感情の高ぶりを制御できなくなっていた。



「クリスも無事でよかった、もう手を放っ!」



 愛おしいぬくもりが突然腕の中から消えてしまった。姫様はこんな俺のことを心配してくださって、声をかけてくださったのに、俺にもう手を放さないでとおっしゃろうとしていたのに、俺はまた奪われるのか!


 

「貴様俺のレティに何をする、いいかげんにしないと今度こそ息の根を止めるぞ」


 ああ、そうだ。こいつを消さない限り、何度だってこいつは俺から姫様を奪っていくんだ。





 相手が亜人種で最強のティーグレだからどうしたというんだ!


 一回負けた相手だからどうしたというんだ!


 俺はもう姫様から離れない!








(愛のバトル執事戦士いざ参る!)

( ´・ω・`)クリスェ

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