第26話:レティ16歳「異様な凱旋パレードを夫婦はみた」
エドワードとダニエルは縄でぐるぐるに簀巻きにされ、おおきな材木に張り付けにされ掲げられた。なんというわかりやすい人質という名の盾だろうか。先頭は人質を掲げたモフモフ戦士、続いて捕えられたカルバントの兵士達。そしてその後ろにまたモフモフ戦士の群れ。その集団は堂々とカルバント領地内にある城下の道を闊歩している。
人々は驚愕し恐怖した。亜人種をみて悪態をつく声がちらほら聞こえるものの、大半は見たこともない数の亜人種に恐れをなした。集団に近づくものはいない。張り付けられている王子達を心配する余裕すらない。しかし、その異様な集団の中に、我らが国の秘宝ともいえる姫様をみた。
レティツィア姫だ。年頃になりますます美しく成長なされた姫様。なかなかその姿を拝むことはない城下の人たちは、久方ぶりに見る姫様の姿にその目を限界まで見開いた。
姫様は虎に抱えられていた。大きな虎の亜人種だ。それなのに姫様は平然となされていた。まるでその腕に抱えられているのが当然かのように、まるでその亜人種を従えているかのように。そして、姫様を抱えている亜人種も姫様をそれはそれは大切そうに、宝物のように抱えていた。まさに美女と野獣。絵になる。
可笑しい組み合わせのはずなのに、なぜか2人の様子は堂々としていてお互いがそこにいるのが自然のように見えた。
その集団は城下を通り、王宮へ続く一本道を突き進んでいった。
とある飲食店を営む夫婦は互いの手を取り合い目の間で起こった出来事に茫然といていた。
「いまのはいったい何たっだだろうかね、ねぇ、あんた」
「ああ、おいらの目がおかしくなけりゃ、第1王子のエドワード様が吊るされとったぞ。そんで、でっかい虎の亜人種に抱かれてたのは姫様だったんでねぇか。いったいどういうことだ。あんなに大勢の亜人種なんて生まれて初めてみただ。戦争か? 征服か? いったいこの国はどうなるんだ……」
人々はただただ不安な面持ちで集団がむかった王宮の方角を見つめるしかできなかった。
人質にされ無様に吊るされた王子達。
亜人種の腕の中の姫様。
見たこともない数の亜人種。
はたしてこの国の運命や如何に。
(異様な凱旋パレードを夫婦はみた)




